その壱 |
その弐
そして、
TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤップ編のヤラセ、勘違い&捏造の映像は、いよいよクライマックスを迎えるのであった(笑)。
パンノキの実がインポーズされている砂浜の画がでてきたとき、なにやら嫌な予感がしたのだが...

やはり、悪い予感は的中した。砂浜の海岸から掘り出されたのは、
どこかで作ってあらかじめ埋めておいた、パンノキの実の発酵食品、マール。
マールというのは、ヤップ州離島(ヤップ島ではない)のパンノキの実の保存食品で、パンノキの実を収穫したあと、バナナの葉やパンノキの葉を敷きつめた土中に埋めて作るが、
こんな砂浜には絶対に埋めない。 こんな場所に埋めたら、すぐ潮が侵入してくるし、台風でも来たらひとたまりもないし、第一砂まみれになって食べられたもんじゃないではないか!

マールをつくる場所は、標高の低い平坦なサンゴ礁島でも、やや内陸のちょっと高めの土地が選ばれる。現代のヤップ島に住んでいる離島の住人は、土中に埋めないで、クーラーボックスを活用している。わたしもそれで作ったことがあるけれど、量の加減も簡単にできるし、発酵したのを取り出すにも手間がかからないので、たいへん便利な方法だ。

ところが、この砂まみれの哀れなマールを見よ!何の権利があって、
他国の他人の食文化を、こんなにも冒涜できるのか!!!
このシーンを見るたび、わたしの頭は怒りでブチ切れ、悔し涙が心を濡らす。
この行為は、パンノキの精に対する宣戦布告であり、離島の人々の食文化に対するレイプである!!!


石橋奈美:これは一ヶ月砂の中で発酵させたパンノミです。鋭い香りが、鼻をつく香りがしてきました。発酵させたパンノミは、赤道直下でも3ヶ月は日持ちするという、ヤップならではの保存食、焼いた新鮮なパンノミに、発酵させたものをあわせれば、さらに美味しくなるといいます。バナナの葉っぱで包みます。それを炭の上に置きました。そして蒸し焼きにすること1時間、掘り起こしてみると、蒸気がたくさんついてます。出来上がったのは、マールと呼ばれる伝統食、サツマイモのような色をしています。ぬか味噌のような香りと、ちょっとチーズのような香りがします。けっこう酸味が強くて、食感はサトイモのような感じです。味は美味しいですね、これ。
もう、言ってることも、やってることも、
めちゃくちゃだ:
1)土地が広く、パンノキの実だけに頼らなくても他の食料が豊富なヤップ島では、パンノキの実の発酵保存食品は発達しなかった。マールはヤップ州離島の食べ物である。その説明が抜けている。
2)発酵したマールを洗いもせず、こんなに黒焦げにした新鮮なパンノキの実を混ぜるなどという料理法は、ヤップ人も、ヤップ州の離島人も、誰も見たことも聞いたことも、とうぜん試したこともないという。この場面を見て、マールを知らないヤップ人はキョトンとし、離島人は怒りと悲しみに引きつった顔でカラカラと笑っていた。
3)蒸し焼きにすると言いながら、
炭の上に直に置くとは、なにごとぞや?アンタら、蒸し焼き料理のイロハも知らないのだろうね!?

案の定、赤い矢印の先を見よ!これは
市販のBBQ用の炭だ。
この炭をおこして、その上に直にパンノキの実を乗せりゃあ(たとえそれが炎の消えた炭であっても)、焦げてしまうのはあたりまえダネ。でも、それでは蒸し焼きにはならないし、パンノキの実の中まで火は通らないよ。だいたい、ヤップじゃ誰も、
市販のBBQ用の炭で料理なんかしない(怒)。
ホンモノの土蒸し料理(ウム/アースオーブン)とマールの作り方は、この記事にも載せている:
〇ヤップデイ続き-女の仕事①
http://suyap.exblog.jp/5196595
〇2008年のヤップデイ-食べ物編
http://suyap.exblog.jp/6874909

←これが、似非マールの出来上がりだそうだ。黒いぽつぽつは、新鮮なパンノキの実の焦げた皮か?まずそう...
いくらヤラセ爆発とはいえ
「世界ふしぎ発見!」ヤップ編がここで見せようとしていたのは、ヤップ人がカヌー航海に持っていった保存食品だったはずだが...。こんなパンノキの実の料理法では、保存食品どころか、ちゃんと口に入る食べ物にもなりはしないだろう。

どうして身近なローカルのアドバイスを受けなかったのかと不思議で仕方がないのだが...
石橋奈美:これは昔から、こういう風に食べられているものなんですか?
EP:そう、遠くの島に行くときには、欠かせないね。
石橋奈美:みなさん、そうやって食べ方を受け継いでいるんですね。
このヤップ人の
EPさんを、彼のお父さんや伯父さんの代から知っているが、どうして彼がこのような協力の仕方をしたのかと、いろいろ想像を巡らせている。一番あり得るのは、日本人らがすでに何もかも決めてしまっていたので、口を出さなかったというケース。たぶん、取材グループが何をやりたいのか、撮りたいのか、彼にはわからなかったのだろう。単純に、日本のテレビに協力することがヤップの宣伝になると信じて。
そして、噴飯ものの「似非」文化の紹介はまだまだ続いていくのであった...

石橋奈美:ヤップ島では、赤ちゃんが産まれるとすぐに、あるものが与えられます。そして、それは一生、その子のものになるのです。では、赤ん坊が生まれるとすぐに与えられるものとは、いったい何でしょうか?
ひとつ前のシーンでは、ヤップ州離島の伝統保存食品マールの、しかもデタラメな偽物を、ヤップ島の保存食品として紹介していたけれど、今度は、ヤップ島におけるプロパティ相続のことを言いたいらしい。この部分はヤップ島だけのことで、ヤップ州離島では通用しない。
すなわち、ヤップ島では、ヤップ人の親から産まれた子供にはヤップの名前が与えられるが、その名前には、タロイモ田、畑、屋敷、山、魚をとる海のエリア(漁業権)など、自給自足を保証する諸々の不動産と権利(+義務)が付随する。そして素行が悪いと、その名前を剥奪されるという事態さえ起こりえる。

まあ、そういう伝統が、今までヤップを急激な開発から守ってきたのだけれど(これからはわからないけれど)、この番組がここで答として認めたのは、なんと「土地」だけだった!左(左上)の回答の中には、〇や△をつけても良さそうなものがあるにもかかわらず...。まあ、この番組を作った連中がハッキリ理解していないのだから、問いを作るにも、答を作るにも、頓珍漢なのは仕方ないのだろうが、視聴者の懸賞品がかかってるんだから、もっと責任持ってもらわんとなあ(爆)。
ことほど左様に、この番組は、
根拠のない幼稚な断定(見てきたような嘘を言い、ヤップ州離島のことと、ヤップ島のことをまぜこぜにして、現地の人々や文化を軽視・愚弄し、日本の視聴者に間違った情報を与えるような、極めてレベルの低い番組であるわけなのだ(怒)。

それを象徴するのが、このような場面だね→
赤ん坊を抱いたオバちゃんは、日本人の撮影スタッフに言われるがまま、とりあえず身近にあった踊り用の「晴れ着」をつけての登場となったのだろう。いっぽう赤ん坊のほうは、紙オムツをして洋装、手には引っかき防止の手袋までしてもらっている。このギャップについて、撮影した側はなんとも思わなかったのかね?
同じような状況を日本の例でたとえると、農村にアメリカのテレビ・チームが取材に入り、日本人の「伝統的な暮らし」を見せると称して、オバちゃんに振袖を着せ、紙オムツをした洋服の赤ん坊を抱かせているの図。わたしだったら、こんなに失礼な出演協力は絶対に拒否するけれどね。ところで、石橋奈美はこのオバちゃんのことを、
「2ヶ月前に赤ちゃんが産まれた」と言っているけれど、もちろん、この子はオバちゃんの産んだ子ではないし、オバちゃんの名前もビミョーに違うんだよね~(笑)。

さて、この噴飯番組も、そろそろ大詰めに入ってきた。場面は、このブログでもよく紹介している
TNS(トラディッショナル・ナビゲーション・ソサエティ)のカヌー建造現場に移る。
石橋奈美:これ1個の大きな木をくりぬいているんですか?
TF:マホガニーの木を3つ組み合わせて造っているんだ。

ヤップの伝統カヌーは、3つどころか、実際にはたくさんのパーツを組み合わせてあるのだけれど、それにしても、マホガニーという翻訳では、日本人にはどんな木なのかわからないではないか。ちゃんと
テリハボクという標準和名もある木なのに。
それはともかく、トンデモな解説はまだまだ続く:
石橋奈美:遠洋航海にも耐えられるこのヤップカヌーこそが、3000年以上前太平洋を渡った人々が乗っていたものと同じものだと考えられています。サラガンさんの元には、今ではハワイなどからカヌーの製法を教わりに来ると言います。こうして、ヤップだけに受け継がれてきた伝統が、世界の常識を変えたんです。
ひぇ~ほ~っ、このような大嘘やデタラメには、まったくコトバを失うばかりでゴザイマスダ(激怒)。

それにもかかわらず、トンデモ解説はまだまだまだ続く:
ナレーション:アジアからはるかイースター島まで、数千年をかけ旅したといわれている太平洋の人々。だが、ひとつだけ謎があった。実は、西から東への移動は、海流も風も逆向きで、3000年以上も昔にどうやって航海したかわからなかったのだ。
嘘も休み休み言いたまえ!今も昔も、島づたいに天気や風を読みながら帆を上げるのは、帆掛け舟の常識デス。
ここで唐突に、仰々しく、ハワイのホクレア号のことが述べられるのだが、こういう、関係ないシトのノーテンキな御託とハワイ(+アメリカ)崇拝が、いかに
ミクロネシア人の気持ちを逆なでするか、気づいてないとは、ご愁傷様:
ナレーション:しかし、その謎をめぐる議論は、近年一艘の船によって、ついに終止符が打たれた。1976年から昨年まで行われた実験航海に使われたのは、およそ2000年前に造られた大型カヌーを再現したもの。これで、実際に人々が太平洋を自らの意思で航海したことを証明しようとしたのだ。だが、当初このプロジェクトには大きな問題があった。ほとんどの太平洋の島々では、当時の航海技術がすでに失われてしまっていたのだ。そんな中、注目されたのが、伝統的な航海術を受け継ぐヤップの人々だった。彼らの技術によって、航海は見事に成功、謎とされてきた人類の冒険が真実だったことが証明されたのである。
ホクレアの航海を手伝ったのは、
ヤップの人々じゃないっつーの!(怒)

この番組がそれほどまでに持ち上げるホクレアの航海なるものが、実際にはどんなもんだか、↓これら↓の記事をとくと読んでみられよ:
〇アリンガノ・マイスとホクレアがヤップに到着
http://suyap.exblog.jp/5295771/
〇アリンガノ・マイスとホクレアがパラオにむけて出発
http://suyap.exblog.jp/5321433/
〇ヤップのホクレア号
http://suyap.exblog.jp/5422748
〇アリンガノ・マイスが新しい就職先に向けて出航

そして突然に出てきたこのシーンは、おそらくホクレアの船上風景だと思うけど...
石橋奈美:こちらのセサリオさんこそ、そのときのナビゲーターに選ばれた方のひとり
馬鹿も休み休み言いなさい!2007年のホクレア航海は、セサリオ氏のお父さんであり、1970年代からホクレア航海を指導したサタワル島のマウ・ピアイルグさんに、お礼としてアリンガノ・マイス号を送り届けるというのが、もともとの主要なミッションだったのだよ。今はパラオにいるセサリオ氏にも、この番組のDVDと翻訳をすでに渡してあるからねっ(怒)。

ノーテンキで頓珍漢の暴発はまだ続き...:
石橋奈美:実はナビゲーションの技術は、島の人間以外に教えることは昔から禁じられています。しかし、今回、特別に門外不出の航海法を少しだけ教えていただきました。
またまた、
なんでも「わたしたちだけ特別」を強調して視聴者を騙すってわけデスカ?
だいたい、ミクロネシアの伝統ナビゲーションの基本知識は、すでに色々な研究者によってあらかた文献になっているはず。しかし、「知識」だけでは大海原に出ては行けないわけで、その
文献に出来ないソフトの部分、これを秘伝といえば言えるかもしれないが、カヌーに触ったり、航海の大まかな知識を聞いたぐらいで、秘伝の伝授とは何事か(爆笑)。

また、セサリオ氏の口から出た言葉として日本語の吹き替えがしゃべっている
「(航海)技術が受け継がれるのは、もともと一子相伝で」というのも、
真っ赤な大嘘だ。セサリオ氏がそんなことを口にするはずは、絶対にないし、まして、母系社会であるヤップ州の離島では、父系社会に由来する「一子相伝」という概念すら存在しない。

この番組収録から間もなく、セサリオ氏はヤップを離れてパラオに行くことを決断した。彼がそういう決断に至った理由はたくさんあるのだろうけれど、この
「世界ふしぎ発見!」の収録によって、それに協力した地元の人々の間に、いささかの波風も立たなかったとは言いきれない状況があったということだけ、ここに記しておく。
前の記事を読む
TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その壱
http://suyap.exblog.jp/8969516/
TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その弐
http://suyap.exblog.jp/8969631/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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