わが家の風呂場にはシャワーもないしお湯も出ないし、もちろんバスタブもない。かわりに水を張ったバケツを何個も置いて、いつなんどき水道が止まっても、とりあえずちょこっとでも水浴びできるようにしている。風呂好きの日本人には考えられない生活かもしれないけれど、年中「夏」のヤップでは慣れればどうってことのないもの、大半のヤップ人がこうして暮らしているのに、電気温水器を入れたり立派なバスタブ置いたりするのって、なんか違うんじゃないって気がするし...
まあそれで、わたしの家のは風呂場ならぬ水浴び場なのだけど、今夜の水浴び中、水を張った予備のバケツの中で小さな音がした。何事かと振り向いて覗きこむと...
何やら黒っぽいものが、いつのまにか澱んだバケツの水の中で浮いたり沈んだりしているではないか!
どうしたんだろうと顔を近づけてみると.....
きゃ~~~
真っ裸の身体になぜか思わずタオルを取るわたし...
なんだかチュー公に見られてるようで、恥ずかしかったんだもん(笑)
古い木造+トタン屋根のわが家は、シロアリ、ゴキちゃん、チュー公との共生生活でもある。部屋の仕切りの板壁の隙間で、最近やけにチュー公がガサゴソうるさいなと思っていたのに、そういや昨日からその音がパタッと止んでいたっけ。
キミはいつからこのバケツでアップアップしてたんかい?
写真では色が出なかったけれど、汲み置きのバケツの水は薄汚く澱んでいた。このドジなチュー公がいつバケツに落ちたのかしらないが、水の汚れ具合からして、けっこう長いことこうしていたのじゃないかな?
たまたまこのバケツの水位が低くなってて、チュー公はバケツの縁までよじ登ることもでず、かといって水深も20センチくらいはあるので、こうして呼吸のために浮いては沈み浮いては沈みを延々と繰り返していたのだろう。ちゃんと服を着てからカメラを持ってきて、あらためてチュー公を眺めてみた。
サイズからすると、このチュー公は元祖ヤップ・ネズミである。最近は船荷に混じってドデカイ新参ネズミも入ってきていて、ヤップのネコがネズミを恐れて逃げ回るというようなウソのようなホントの話が起きているのだが、幸い、わが家はまだ元祖だけがお住まいのようだ。それにしても、チュー公の顔をこんなに長いこと眺めるのって、初めてだよなあ...
わたしはチュー公のことはあまり得意じゃない。どっちかっていうと苦手だ。だけど、彼らのお目目に見つめられると弱いのだ。ある夜、ちびちび酒を飲みながら読書してて、いつのまにかスーッと寝入ってたとき、なにかの気配に半覚醒状態で薄目を開けたとき視野に入ったものが、テーブルの上のつまみに近寄ろうとしたチュー公だった。そのチュー公とわたしの両目がバッチリ合って、チュー:シマッタ!、わたし:あんた誰?(寝ぼけ)、という瞬間があり、
こら~~~~と追い払ったあとも、チューの可愛い目がしばらく脳裏に焼きついていた。
今回もそれを思い出してしまい、こいつをこれからどうしようかといろいろ迷った末に、家から遠く離れた大家さんちのバナナ林の中に、バケツの水ごと捨てにいくことにした。
もう2度とわたしんちに帰ってこないでよっ!と心で叫びながら、バサーッとバケツを返したあと、それを念入りに洗ったことは言うまでもない。
ちなみに、チュー公はヤップの伝説には必ず登場する大事な人物(?)だ。文化人類学者さんの研究によると、太平洋の島に住む民は、かつてネズミを食していたという。千石正一先生もネズミ食うべしと書いておられる:
~「子」を食べる~ネズミ食うべし:白人とドブネズミ
http://diamond.jp/series/sengoku/10003/?page=4
そうか、わたしがヤップのチュウ公を憎からず思うのは、外来の侵入者に対して力のない先住民の悲哀をかもしだしているからなんだね。やっぱり今夜は逃がしてあげて良かった。ヤップのチュウ公よ、外来のドブネズミなんかに負けず、頑張って生き抜いておくれ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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