4月の末からヤップの空港にも豚インフルエンザ対策と称して白装束軍団が登場したが、到着した乗客の耳に体温計をズボッとさして検温するだけなので、
これがいったい何の役に立つんだ?と、ローカルの間でもかなりのブーイングが出ている。マジメなヤップ州立病院が始めたこの作業は、今では全州の空港に広がったらしく、これではかえってミクロネシア連邦のイメージダウンになると、どこかの州の誰かが大統領に直訴したらしいとか、そんな噂も聞こえている今日このごろ。WHOは5月7日の段階で、こんなメッセージを出していたのにねえ>>マス添ゾエさん(笑):
Does WHO recommend screenings at country entry and exit points to detect if ill people are travelling?
No. We do not believe entry and exit screenings would work to reduce the spread of this disease. However country-level measures to respond to a public health risk are the decision of national authorities, under the International Health Regulations 2005.
(太字はsuyap)(http://www.who.int/csr/disease/swineflu/frequently_asked_questions/travel/en/index.html)
ヤップの空港のスクリーニングがこれからどう変わるかまだわからないけれど、日本のメディアには、こんなニュースが流れている:
【ジュネーブ10日共同】世界保健機関(WHO)は9日、新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を、現行の「5」から、世界的大流行(パンデミック)の宣言を意味する「6」へ週内に引き上げる方向で最終調整に入った。複数のWHO当局者が明らかにした。関係職員はチャン事務局長が週内に大流行を宣言することを前提に、準備態勢を整えるよう上層部の指示を受けた。
(2009年6月10日 09時52分エキサイトニュース)
でもねえ、
世界保健機関(WHO)や、
米国疾病センター(CDC)のサイト、それに日本以外のニュースを検索しても、これに相当することは、どこにも見つからないんだけど…
6月5日に開かれた
国際保健対策緊急委員会(International Health Regulations Emergency Committee)の3回目のミーティング後に、チャン事務局長から出されたWHOのオフィシャル・メッセージは以下のとおり:
In discussion with the committee, the Director-General noted that the world remains in pandemic influenza Phase 5 and reaffirmed that WHO will continue to monitor the situation closely in all countries reporting cases of new influenza A(H1N1).
Based on the advice of the committee, the Director-General determined that it was appropriate to continue the existing temporary recommendations, namely:
* That all countries intensify surveillance for unusual outbreaks of influenza-like illness and severe pneumonia.
* Not to close borders and not to restrict international travel. It is considered prudent for people who are ill to delay international travel and for people developing symptoms following travel to seek medical attention.
* That the production of seasonal influenza vaccine should continue at this time, subject to re-evaluation as the situation evolves.
(下線 by suyap)(http://www.who.int/csr/disease/swineflu/3rd_meeting_ihr/en/index.html)
ポイントを要約すると、WHOでは、
まだ警戒水準(フェイス)「5」を保つこと、
国際間の通行を制限しないこと、
季節性インフルエンザのワクチンの製造を続けること、を推奨しているわけだ。WHOは日本向けだけに警戒水準を引き上げるんデジカ?(笑)、
最新の世界の患者数データ(06:00 GMT, 8 June 2009 )によると、感染者は73ヶ国にわたって25,288人で、そのうち死者は139人とのこと。致死率は0.55%、日本の患者数は410人とやや多いものの死亡者はゼロだ。全体の致死率を引き上げているのはメキシコの死亡率で、これはまた別の理由も加味して考慮されるべきものである。
Influenza A(H1N1) - update 45
http://www.who.int/csr/don/2009_06_08/en/index.html
それなのに、昨日はこんなニュースも見た…
厚生労働省は9日、新型インフルエンザのワクチンについて、年内に最大約2500万人分を確保できるとの試算を明らかにした。製造ラインを新型に振り向けるため、季節性インフルエンザのワクチンは、08年の約8割にあたる約4000万人分確保した段階で製造を打ち切ることになるという。
新型インフルエンザ与党プロジェクトチーム座長の川崎二郎元厚労相は同省の報告を受け、国内で感染者が多い中高生ら10代と、医療関係者、妊婦や基礎疾患のある患者にワクチンを優先接種すべきだとの考えを示した。 同省によると、季節性のワクチンは例年約5000万人分製造し、大半がシーズン中に消費される。次のシーズンは新型流行の恐れがあるため、既に始まっている季節性のワクチン製造を、どの時点で新型に切り替えるかが焦点になっている。
試算によると、新型のワクチンを最優先にし、製造が可能になる7月中旬に切り替えた場合、12月末までに約2500万人分製造できる。季節性は約4000万人分となる。
実際の新型と季節性の製造割合は、世界保健機関(WHO)の見解や専門家らの意見を基に決定するという。【清水健二、内橋寿明】(2009年6月9日 20時17分 毎日JP)
あのう…「新型」のワクチンの
製造が可能になる7月中旬って、どこから出た話デジカ?(笑) WHOではワクチンが出来るまで5~6ヶ月かかるといってるし、7月じゃまだ4ヶ月目でしょ?それとも、それとも、もしかして、この発表は
clinical trialsを可能にするためのものデジカ?(下線赤字部分) それとも、それとも、それと~も!!!「新型」はう~んと前から発見されてて流行ってて、ワクチンもすでに出来ていたとかデジカ???
How quickly will influenza A (H1N1) vaccines be available?
The first doses of influenza A (H1N1) vaccine could be available within five to six months after identification of the new virus. Prior to this date, small quantities of experimental vaccine will be made available to immunize volunteers in clinical trials to select the best vaccine formulations. Regulatory approval for the vaccines will be conducted by national authorities in parallel with the manufacturing process. National regulatory authorities have put into place expedited processes that do not compromise on the quality and safety of the vaccine. Delays in production could result from poor growth of the virus strain used to make the vaccine.(下線 by suyap)(http://www.who.int/csr/disease/swineflu/frequently_asked_questions/vaccine_preparedness/en/index.html)
(追記)
6月12日WHOはやはりフェーズ6宣言をしたようです:
〇
World now at the start of 2009 influenza pandemic
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2009/h1n1_pandemic_phase6_20090611/en/index.html
〇
What is phase 6?
http://www.who.int/csr/disease/swineflu/frequently_asked_questions/levels_pandemic_alert/en/index.html
きょうのブログは、訳をつけない原文を引用してばっかりで、ホントにすみません。でもねえ、インフルエンザばかりじゃないけれど、日本のニュースを外から見てると、ホントに頭がこんぐらがっちゃう。
用語にしても、最初は
豚で、それから
新型だの
季節性だの言われ始めて、なにがなにやらワケワカメ。ちなみにWHOや米国疾病センター(CDC)では、いま話題のインフルエンザを
novel (new) H1N1 flu とか、
new influenza A(H1N1) とか、
swine fluとか呼んでいて、季節性の
seasonal fluといちおう区別しているみたい。
WHOや
CDCが100%信用できるというわけじゃないけれど、少なくとも用語の使い方はクリアです。
A(H1N1)が本当に「新」=Newなのかという問題は別にして。
またWHOは、この新型ではヨーロッパとアジアの豚インフル2種、鳥インフルからの1種、それに人間インフルの1種と、4つの異なるDNAの複合が見られ、こんなことは今までになかったことだともいってて…
This recently discovered influenza A(H1N1) virus has two genes from flu viruses that normally circulate in pigs in Europe and Asia and avian genes and human genes. Scientists call this a “quadruple reassortant” virus.
This is a unique combination that has never been seen before.(http://www.wpro.who.int/health_topics/h1n1/)
なにやら、このウイルス発生が人為的であったと言いたいような?…
上記のような諸々の発表されたデータや、嘘か真かわからぬメディア発表や、WHOやCDCの動きなどを眺めたりしながら、
原田和明さんの「豚インフルエンザ報道を検証する」を読んでいくと、なるほど、なるほど、うなずけるところが大きい。長くなるけど、こんな視点をもってインフルエンザ騒動を眺めることも大事だと思うので、リンクを読みに行くのがめんどうな方々のために、かなりの部分をコピペさせてもらいます>>原田さん:
○
豚インフルエンザ報道を検証する:第4回 騒動にならなかったパンデミック
http://archive.mag2.com/0000083496/20090608050000000.html
厚生労働省は「新型インフルエンザ」の判定作業を地方に押し付けて、「通常の季節性」かもしれなA/H1N1 型インフルエンザも すべて「新型」だとする水増し発表を続けました。そうして作り出したパニックを利用して、補正予算で抗インフルエンザ薬タミフルを大量に追加購入しようとしています。
ところが、今年の初め、WHOは「2008年末には世界中のA/H1N1 型インフルエンザウイルスのほぼ全てがタミフルに対して耐性化している(タミフルが効かない)」との調査結果を公表しています。タミフルの世界最大の消費国・日本でも昨年は同型ウイルスのうち、タミフル耐性株はわずか2%だったものが、今年1月の調査では98%がタミフル耐性という劇的な変化がおきていることが公表されました。このようにタミフルにとって日本という最大の顧客を失いかけていた直後に、突然、豚インフルエンザ騒動がもちあがったのです。しかも、昨年の「タミフル耐性株は2%」という国立感染症研究所の報告にも偽装の疑いがあります。
4月30日の衆院 厚生労働委員会で、厚生労働省は、大型補正予算が組まれるこの時期に巻き起こった豚インフルエンザ騒動の機会を逃さず、タミフルを大量に追加購入する計画を明らかにしています。上田博三(厚生労働省健康局長)「まず、タミフルでございますが、二十年度補正予算で増量を図りまして、現在、国、都道府県、流通分を含めまして三千三百八十万人分が確保されております。さらに、二十年度補正で、残りの分といたしまして八百三十万人分が既に製造済みでございまして、これが契約が済み次第、日本に入荷をしてくる予定になっております。
また、リレンザでございますが、国において二百六十八万人分を備蓄済みでございますが、このほかに、都道府県において今後百三十三万人分を備蓄する予定でございまして、これについても引き続きその必要性について検討していきたいと考えているところでございます。」
同席していた厚生労働大臣・舛添要一も豚インフルエンザ対策でのタミフルに対する期待を次のように語っています。「もし入ってきたときにこれを最小限にとどめる、そのことが大変必要なので、そのためには、一刻も早く感染者を発見し、そして早期に治療をすれば、タミフルは効きますから治ります。」
今回騒動になった豚インフルエンザ ウイルスはA/H1N1型で、世界保健機構(WHO)はタミフルが有効だと紹介しており、舛添の発言もこれを根拠にしていると思われます。ところが、当の製薬メーカー・ロシュ社(スイス)は同社のホームページで「WHOが有効だと言っている」と紹介しているだけで、有効性についての科学的根拠はどこにも記されていません。それどころか、ウイルスの世界はタミフル耐性(タミフルが効かない)株が急速に広まっていたのです。
2008年12月、米疾病センター(CDC)は、10月1日以降で12州から報告のあった50株のうち49株がタミフル耐性(耐性率98%)だったことから、今冬、アメリカで流行しているA/H1N1型インフルエンザはタミフル耐性株が主流であるとし、医師 向けに 緊急情報を 発しました。(2008.12.22 日経メディカル)タミフル耐性株の世界的蔓延の経過は次の通りです。2007年11月 ノルウェーで発見
2008年 3月 世界全体で耐性株の出現頻度16%(ノルウェー:67%、EU:20%超)
2008年10月 同39%(オーストラリア80%、EU50%超、アフリカ全体で88%)
2008年11月 米CDCが米国内の出現頻度68.8%と発表
2008年12月 日本は07年10月~08年3月の国内の出現頻度2%と発表
2008年12月 米CDC、米国内の出現頻度98%と発表
2009年 1月 日本での耐性株の出現頻度(2008年10-12月)97%と発表
2007年の秋にノルウェーで発見された「タミフル耐性(タミフルが効かない)」のA/H1N1型インフルエンザウイルスは、またたく間に世界中に拡がり、2008年3月の調査世界保健機構(WHO)の調査で、2008年末には世界中の同型インフルエンザウイルスのほぼ全てが耐性化していることが判明しました。なお、タミフル耐性株は A/H1N1 型のみで、A/H3N2 型および B型では感受性(タミフルが効く)であることがわかっています。(IASR(病原微生物検出情報)Vol. 29 p.334-339: 2008年12月号 「インフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株(H275Y*)の国内発生状況[第2報]」)
この急速な拡大は、豚インフルエンザが大騒ぎになっているように、このタミフル耐性インフルエンザウイルスも人から人への感染力が強いことを示しています。ヒトにうつるインフルエンザウイルスには、A/H1N1型(※ソ連型)、A/H3N2型(※香港型)、B型の3つのインフルエンザウイルスがあり、それぞれに、タミフルやリレンザに対する耐性株が確認されたことはあります。しかし、これまではいずれもこれらの薬剤に暴露されたことによる「選択圧」(※薬の使いすぎ)で顕在化したもので、その場合、通常の株より感染力が弱く、臨床上は大きな問題になることはありませんでした。(2008.12.24 日経メディカル)
このタミフル耐性インフルエンザウイルスは感染力が強いことから、突然変異により耐性化したものと考えられています。南アフリカやセネガルで 耐性株が100%となっているように、これまでほとんどタミフルやリレンザを使用していない国で、問題のタミフル耐性ウイルスが出現したことからも、タミフル耐性化は突然変異によるものであることを物語っています。(2008.12.24 日経メディカル)
そして、インフルエンザウイルスは、元々非常に不安定なウイルスで、ヒトからヒトに感染が広がる過程で様々な突然変異が起こります。今回の耐性株は、自然発生的に起こった突然変異が、たまたまタミフルが作用する部分に入ってしまったと考えられます。それが今年になって、全世界に蔓延してしまったことが明らかになりました。
それにしても、ヨーロッパでも耐性株が50%を超えた時期に、タミフルの70%以上を消費している日本でだけ、タミフルが有効であり続けているという昨年12月の調査結果は「奇跡的」です。しかし、アメリカが耐性株98%と発表すると、日本も今年1月になって手のひらを返したように追従している点は胡散臭さも感じます。
ところで、今回の豚インフルエンザウイルスも同じA/H1N1型です。今回の騒動の直前に、同じ型の、タミフルが効かないインフルエンザウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が起きていたのです。タミフルが効かないウイルスのパンデミックの方が日本にとってよほど大問題だったはずですが、このときは「騒動」にはなりませんでした。その一方で、タミフルが効くとWHOが言っている豚インフルエンザは「弱毒性」だというのに大騒ぎするのは、いかにもメーカー側にだけ好都合で不自然です。
そこで、まず、国立感染症研究所が「日本国内のタミフル耐性株の出現頻度2%」と発表したオリジナルデータを検証してみます。日経メディカル(2008.12.25)にタミフル耐性株が 分離された都道府県と その出現頻度が 紹介されています。(※出現数/調査数)
~~~~~データ部分略~~~~~
○豚インフルエンザ報道を検証する:第4回 騒動にならなかったパンデミック
に飛んで見てください。
~~~~~~~~~~~~~~~~
なぜ、鳥取県だけにタミフル耐性株が広がっているのか? これは日経メディカルの編集部にとっても疑問だったらしく、2008.12.25号で特集が組まれています。インタビューに答えているのは、国立感染症研究所インフルエンザウイルス室室長 小田切孝人氏です。(以下引用)―― タミフル耐性株は、日本国内でも広がっているのでしょうか?
小田切:頻度にすると 2.6%で、諸外国と比べると圧倒的に低いという結果でした。日本は世界市場の約7割と、世界中で最もタミフルを消費している国ですから、世界的に日本の耐性化の状況は注目されていたわけですが、これだけしか耐性がないのかと、非常に驚かれました。
―― なぜ、鳥取県に多いのでしょうか?
小田切:鳥取県でだけタミフル耐性株が多く見つかった理由は、今のところ、よく分かっていません。少なくとも、サンプリングの対象となった病院は分散していましたから、サンプリングのバイアスではないようです。恐らく鳥取県では実際に、タミフル耐性株がある程度の割合で広がっているものと考えられます。(引用終わり)
小田切は「日本での出現頻度があまりに低かったので、世界も驚いた。ただし、鳥取だけが多い理由もわからない。」と言っています。そこで、さらにその元のデータを 検証してみると、驚くべき 偽装工作が見つかりました。元のデータはIASR(病原微生物検出情報)Vol. 29 p. 334-339: 2008年12月号 「インフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株(H275Y*)の国内発生状況[第2報]」にあり、そこには3つの数字が並んでいました。
~~~~~データ部分略~~~~~
○豚インフルエンザ報道を検証する:第4回 騒動にならなかったパンデミック
に飛んで見てください。
~~~~~~~~~~~~~~~~
など大変更が必要です。すると、全体で 45/282=16.0% となり、「世界全体で耐性株の出現頻度16%」と見事に一致します。
この場合でも、鳥取県は88%と高率ですが、横浜市も60%、岐阜県50%、栃木県38%、神戸市33%などで、鳥取県だけが突出というわけではありません。
国立感染症研究所は、日本政府がタミフルを買い続ける 口実のためか どうかはわかりませんが、昨年12月の報告書では、このような計算上の操作をして、日本ではタミフル耐性株が少ない、タミフルは有効であり続けているとの結論を強引に導き出していたと考えられます。
そして、ほとんどが耐性株となってしまい、計算上の操作では取り繕えなくなると、通常の季節性のインフルエンザも遺伝子比較解析を行なわなければ、新型であることを否定できないという論法で、「新型」を水増し発表してパニックを誘発したのです。ウイルスが常に変異を繰り返しているという性質を口実にすれば、「新型」というのもあながちウソと決め付けることはできませんが、意図的な情報操作の疑いは濃厚です。
以上で、
豚インフルエンザ報道を検証する:第4回 騒動にならなかったパンデミックの引用でした。
本日も長い引用を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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