ヤップ島のいたるところに植えてあるビンロウヤシ(写真右)。今では大人も年若い者も、ときに子供まで!口を真っ赤にしてビンロウの実(ビンロウジ)を噛んでいるが、大昔のヤップには、もともとビンロウ噛みの習慣はなかったという。
それは、
ブー(ビンロウヤシの木あるいはその実)や
ガブイ(一緒に噛むキンマの葉)という名が、ヤップ語とパラオ語で共通していることや、ビンロウにまつわるいろいろな伝説からも想像できる。おそらくビンロウヤシやその実を噛む習慣は、パラオへ石貨を切り出しに行った者たちによってヤップにもたらされたのだろう。それがヤップの気候風土にマッチして、いまではミクロネシアで一番の品質と生産量を誇るまでになった。
ビンロウジの収穫は通年できるが、6月から8月にかけて実の産量は激減する。右の袋には30コから40コのビンロウジとキンマの葉が入ってて、現在の価格は6ドル。実が豊富な時期には1袋2ドル50セントくらいだから、すでに4倍の値になっているわけだが、これから8月にかけて、もっと値上がりしていくだろう。
実はビンロウジの値段を吊り上げている要因は、季節的な収穫減だけではなく、大量のビンロウジが輸出にまわされるためでもある。ヤップ島の外貨稼ぎ物産のダントツ1位は、なんとビンロウジなのだ。
輸出先は100%ミクロネシア圏内だが、なかでもローカル人口の約半分をミクロネシア出自のカロリン人が占めるサイパン島向けが一番多い。サイパンでは1個25セントもするビンロウジが飛ぶように売れているという。
ビンロウジもキンマの葉もナマモノだから、これら島外に輸出するには、迅速で安定した輸送手段を確保する必要がある。収穫してから遅くとも3日以内に顧客の口に届かないと売り物にならないので、月1~2回しか来ない貨物船は使えない。
残された唯一の手段は、週3便の定期航空便による航空貨物なのだが、各フライトの乗客数や積荷の状況次第で、ヤップからの貨物はしょっちゅう積み残されている。貨物どころかニンゲンでさえ... オーバーブックを承知の上でパラオでどんどん乗せてしまい、ヤップからの乗客を積み残すなんて事も平気でやってくれます>>コンチネンタル航空(怒)。
右上の写真は、キンマの葉の上にビンロウジと、ワッチ(サンゴを焼いてつくった消石灰のビンロウジ三点セット)
先月のある便では1トン以上のビンロウジが積み残されたというので、島中が大騒ぎになった。3日後の飛行機を待ってては、それらは全く売り物にならないので、島の小売に大量に出回ったのだが...
ヤップ島には現在10人くらいのビンロウジ輸出業者がいて(数年前の記憶では5人だったと思うけど、いつの間にか倍に増えてる!)、フライトのある日の夕方までに収穫した実を各業者のところへ持ち込めば、それぞれの値段で買い上げてくれる。各業者の輸出先にはそれぞれ受け先(輸入業者)がいて、彼らはたいていヤップ島出身者、つまり親戚(身内)でやっている感じ。
そんなサイパン在住「受け先」のひとり、R村出身のAさんが、最近の度重なる航空貨物の積み残しによるロスを経験して、まったく新しい輸送手段を考案した。つまりコンチネンタル航空が絶対に「積み残せない」方法を!!!(笑)
(左上の写真は、半分に割ったビンロウジに消石灰を振りかけたもの)
Aさんは、各フライトごとに4人の
運び屋を募集している。運び屋をやりたい日程を希望すると、ヤップ~グアム~サイパンの往路ビジネスクラス、復路エコノミークラスのチケットがAさん側によって手配される。出発当日パスポートを持って空港のカウンターに行くと、ビジネスクラスの最大重量32キロギリギリまでビンロウジを詰めた箱が3個と、ビンロウジ5.5キロ入りの手荷物用バックパックが届けられている。
あとは3コの荷物をチェックインして(ビジネスクラスは1コ最大32キロ、最高3コまでの荷物がチェックインできる)、5.5キロのビンロウジが入ったバックパックを肩に飛行機に乗ってサイパンまで行けば良い。さすがに帰りはエコノミーだけど、希望すればサイパンでAさんの家に泊めてもらえるし、グアムで用事を済ますこともできる。お運びの日当は出ないけれど、マイレージは稼げるし、グアムやサイパンの親戚に会ったり、用事をしたりもできるので、毎フライト希望者が後を絶たないという。
気がついたら、わたしのまわりにも、すでに5人もお運び経験者がいた。そのうちひとりは何回も行っているらしい!わたしもやってみようかしら(笑)
それにしても、
そんなんでほんとうに商売になるんかいなと、他人事ながら心配になってコストを計算してみたら...:
Aさんは、1フライトごと4人分約400キロのビンロウジをサイパンに輸入し、4人分の片道ビジネスの航空運賃を払っても、数百ドルの利益が出る!これが週3回、月12回ともなれば、その利益は馬鹿にならない... 1フライトに400キロを運ばせる(1回量)というのもミソかもね^^
(右上写真は、お口に放り込む直前のビンロウジセット)
しかしながら、ビンロウジ・ビジネスがどんどんヒートアップしていくことによって、村々にはビンロウジ泥棒が横行するも、それを排除する村人の結束や自治力は失われつつあり、しかもビンロウジを売った金で飲んだくれる連中が増加し、おまけに島のビンロウジ価格まで高騰する...なんて、頭の痛いことだらけになっちゃった今日この頃のヤップの村事情...なのであります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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