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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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ヤップ気象台の悩み

ちょっと用事があってヤップの気象台へ行った。ここはNOAA(米国海洋大気圏局、National Oceanic and Atmospheric Administration))に所属するれっきとした米連邦機関。

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もともと旧空港跡地の近くにあった古い施設から、3億円の金をかけて建設された現在の施設へ数年前に移ったばかりだ。2001年の9.11以来、ヤップのような辺鄙な島でも、米政府機関の施設には厳重なセキュリティ体制が敷かれるようになった。この気象台も例外ではなく、まわりはグルリと高い鉄柵で囲まれ、入場者の顔をリモート・モニターで確かめてからゲートを開けてくれる。

でも中で働いているのはヤップ人ばかりだから、みんな和気あいあい、訪れてもちっとも恐れかしこまることはない。出入りするのが誰だかわかってると、ときどきゲートをあけるのをわざと遅くしたり、帰るときもなかなか開けてくれなかったりと、ゲートの開閉で気心のしれたゲストをからかうのが気晴らしになってるフシもあり(笑)。

ヤップ気象台の悩み_a0043520_1603836.jpgいつ行っても暇そうな彼らでも、けっして遊んでいるわけではない。実はここではとっても大事な気象観測をしているのだ。毎朝9時の気象観測機器・ラジオゾンデを挙げる作業はなかなか見もので、本来マジメなヤップ人気質はこんなところでも大活躍する。日本の気象関係者の多くも、ヤップから発信されるデータのお世話になっているはず、なんたって、このあたりは台風の生まれるところだからね。

ヤップ気象台の悩み_a0043520_16272098.jpgところがその大事な仕事をするバルーン・マンのひとりと話をしていると、なんだか浮かない顔で隣の建設地のほうに向けて顎をしゃくりながら、あれが出来ちゃうと、北東の風が強いときなどラジオ・ゾンデが建物に引っかかっちゃうよだって。

左上写真では気象台の建物は見えないけれど、真ん中の道を登った右手にある。その道の南東側に、やはり米国の機関であるFAA(連邦航空局、Federal Aviation Administration)が、航空機事故に備えたレスキューと消防車のための施設を建設中である(写真左側の建物)。

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ラジオ・ゾンデをつけた気球はゆるゆる揚がるから、このままこの位置にビルが完成してしまうと、北東の強風が吹いているときなど、十分な高さに達する前にビルに激突してしまうだろう-というのが、ヤップ気象台側の悩みなのだ。ヤップのまわりで恒常的に吹いているのは北東の貿易風。とくに11月すぎたあたりから4月いっぱいまでは強く吹く。島の東側で熱低の発生があると、もっと激しく吹く。バルーン・マンはラジオ・ゾンデをつけた気球がどういうコースをたどって上昇するかを経験的によく知っているから、彼の憂いは深い。

かといって立派なヘリウムガス・タンクのある気象台施設を移動することは今さら無理だろうし、ラジオ・ゾンデを使った気象観測を抜きにしてヤップ気象台の存在意義は成り立たないし...どうしてFAAの施設を作り始める前に気づかなかったのよお?とわたし。ドント・アースク・ミー、奴ら(FAA)からは、なんの事前相談もなかったぜとバルーン・マン。

NOAAは米国商務省の機関、FAAは米国運輸省の機関、いわゆる省庁の違いってやつは、国が違ってもいろいろ大変なことを引き起こすようですねえ。いまや問題はヤップの現場を離れて、双方の上級機関同士で対策を検討中ということだが、貿易風の強まる今年の11月以降、強風につき気象観測データなしという報告が頻繁にヤップから上がらないことを祈る(笑)。



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by suyap | 2009-04-17 16:40 | ヤップな日々
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