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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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カヌーは再び海面に

カヌーは再び海面に_a0043520_557236.jpg今朝の10時すぎ、きのう台船に乗って帰ってきたカヌー関係者から電話がかかってきた。これから1時間ばかりしたらカヌーが海に降りるから、ボートを頼むよ。

ああ、そうだった。きのう、金曜か土曜だったらうちのボートも空いてるから、カヌー基地まで引っ張ってあげますよ-とオファーしてたんだよね。早速スタッフのチョメパカルに22フィートのボートを準備してもらって、台船の場所に駆けつけた、のだけれど…

カヌーは再び海面に_a0043520_5585164.jpg行ってみると、台船の上にはまだ建設資材がどっさり積んであり、クレーンはカヌーの乗ってる場所までたどりついてない。カヌーの面々は朝8時半からスタンバイしているのだそうだけど、作業は至ってのんびりペースで進んでる。そのうちお昼どきになり、クレーンも首を下ろして作業員は全員ランチに行っちゃうし(笑)。

わたしはカヌーを吊り下ろすところを見てみたいと思ってたので、ボートの上でビンロウジュを噛んだり昼寝をしたりして待ってるチョメたちに弁当や水を供給しながら、チョコチョコ様子を見に行っていた。ふだんはこんなとこ滅多に来ないので気がつかなかったけれど、埋立て数年なのに、もうマングローブが根づいてる場所もあったりして、今後ここがどうなるかわからないけど、自然観察ポイントのひとつにしても良いかもね…なんて思ったりしながら。

カヌーは再び海面に_a0043520_5595295.jpgそんな長~い待ち時間のあいだ、この台船を運航しているパラオのスランゲル&サンズ会社の社長のイトコというパラオ人のおじさんに出会った。学校の先生を退職してのんびりしていたところ、イトコの社長から急に、カヌーと一緒にヤップに行って、諸事万端うまくいくように目を配ってくれ-と頼まれヤップまで同行したという。このおじさんと、ナビゲーターのアリさん、サラガンさん、Fさんの年配者4人は、台船ではなくタグボートのほうに乗ってきたそうだ。

わたし:このカヌーの人たちはラッキーでしたね。たまたま台船が出港間際で。
おじさん:実はね、台船は3回も出港を遅らせていたんだよ。そしたらまた出航直前になってカヌーを乗せてくっていうじゃないか。いや~ほんとうに、神の思し召しだろうよ。
わたし:どのくらい遅れたんですか?
おじさん:ほんとうは3週間も前に出る予定だっただよ。
(注:カヌーの最初の出航予定も、実際の出航日より3週間前だった)

カヌーは再び海面に_a0043520_605331.jpg待って待って待って…やっと午後3時すぎ、クレーンがカヌーのあるところまでたどり着いた。ボトムヘビーになった台船のバランスを取るために、砂利を満載したトラックが手前のほうに乗せられた。パラオ人のおじさんとの話はまだ続く:

わたし:道中、海は荒れてたでしょう?
おじさん:すごい波だったよ。タグボートは小山のような波と波の間にすっぽり入っちまうし、台船はずーっと真上から波をかぶって水浸しだ。クルーはカヌーの中に入ってしのいでた。
わたし:綱が切れて台船がタグボートから離れるんじゃないかって心配はなかったですか?
おじさん:そういう事態に備えて、カヌーは砂利のてっぺんに、ああいうくくり方で乗せられたんだそうだ。いざとなったら綱を切って、カヌーはクルーとともに海に逃げ出せるようにね。帆も荷物も全部カヌーの中さ。
わたし:なるほど。台船は簡単に沈む可能性がありますけど、木でできたカヌーは沈みませんものね。

カヌーは再び海面に_a0043520_615144.jpg台船の上では、いよいよシメヨン・ホクレア号が釣り上げられていた。宙に吊られたカヌーなんて、なかなか見られる光景ではない。写真を撮っていると、うしろからサラガンさんの声がした。

サラガンさん:スーはそんなにカヌーが好きか?
わたし:はい、とっても。でも、今回の航海はちょっと時期が早すぎませんでしたか?
サラガンさん:ああ、ちいとな。でもパラオの新しい大統領から招待されてたんでなあ。ほんとうは就任式(1月15日)に間に合うように行く予定だったんだが。
わたし:行きの航海は追い風に乗ってスムーズだったんでしょう?

カヌーは再び海面に_a0043520_624924.jpgサラガンさん:ああ、強い風を受けてスイスイ走ったよ。途中で雨にも降られたし、うねりがあんまり大きいんでカヌーがすっぽりはまってしまい、こりゃダメかなと思ったときもあったけど、カヌーは難なく乗り越えたさ。
わたし:カヌーが破損したと聞きましたが、見たところ大きなダメージはないようですね。

カヌーは再び海面に_a0043520_634556.jpgサラガンさん:ああ、たいしたことはないよ。帆を支える竹が折れただけだ。
わたし:パラオに着いたとき、運良くスランゲルの台船がいてよかったですね。
サラガンさん:そういうことだ。助かったよ。パラオで竹を調達しようとしてたんだが、スランゲルが台船で運んでやるといってきたんだ。この時期に航海して帰るとなると、1ヶ月はかかるだろう。

カヌーは再び海面に_a0043520_644589.jpgわたし:この時期に、うねりや風にもろアゲンストでカヌーを出すのは、帆を返すときとか危なくないんですか?
サラガンさん:クルーはみんな慣れているから危なくはないが、時間がかかる。1ヶ月は長いよなあ。

カヌーは再び海面に_a0043520_654717.jpgいつのまにかシメヨン・ホクレア号はうちのボートに曳航されてマリーナに戻り、次はマソー・メラム号が吊るされていた。

わたし:マソー・メラムの走りはどうでしたか?
サラガンさん:速かったよ。とくに大きな波の中では、ヤップのカヌーのほうが安定しててスピードが出るんだ。

カヌーは再び海面に_a0043520_665938.jpgうちの22フィートのボートと並んだそれぞれの艇を見ても、マソー・メラム号シメヨン・ホクレア号より艇長もかなり長い。喫水も少し深いかな?ただ艇幅はスリムにできている。物や人を大量に運ぶことを目的としてきたヤップ州離島のカヌーと違って、ヤップ島のカヌーは、安定したスピードを狙って特殊な進化をしてきたのだろう。かつてはそのスピードの出るカヌーで、パラオから切り出した石貨を筏に組んで挽いてきた。

カヌーは再び海面に_a0043520_5534214.jpg午後も遅くなって、ようやく2艇のカヌーは11日ぶりにマリーナ桟橋の前に戻ってきた(その間の距離と出来事を考えれば、速いといえば速い)。

左上はシメヨン・ホクレア号、行くときに積んでいった使い古したタライの火鉢が、しっかり結わえつけられて積んであった。どんな大波のなかでも、彼らはしっかり「生活」してますねえ!

カヌーは再び海面に_a0043520_556474.jpg→こっちは、マソー・メラム号。アウトリガーもバランスよく浮いていて、とても大波の中をパラオまで航海してきたばかりとは思えない。

マキ村のカヌー小屋まで挽いていくべくスタンバイしていたうちのボートだけど、既に4時半をまわっていたので、曳航作業は明日まで延期されることになった。今夜はマリーナでゆっくり長旅の疲れをほくしてください>>カヌーさんたち。


(追記)
下の写真は、翌朝22フィートのボートに曳航される2艇。前がシメヨン・ホクレア号で後ろがマソー・メラム号。こうしてみると、艇長やシェイプの微妙な違いがよくわかる。

カヌーは再び海面に_a0043520_10194157.jpg

2艇の名誉のために断っておくけど、カヌー小屋まで曳航で帰ることになったのは、帆走不可能なほどのダメージを受けたからではない。帆を揚げて走るとなると、手間も人でもかかるからね。長旅ご苦労さんの意味で、うちが曳航作業をカンパしたわけです。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2009-02-06 23:42 | ヤップの伝統文化
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