今朝の10時すぎ、きのう台船に乗って帰ってきたカヌー関係者から電話がかかってきた。
これから1時間ばかりしたらカヌーが海に降りるから、ボートを頼むよ。
ああ、そうだった。きのう、
金曜か土曜だったらうちのボートも空いてるから、カヌー基地まで引っ張ってあげますよ-とオファーしてたんだよね。早速スタッフの
チョメと
パカルに22フィートのボートを準備してもらって、台船の場所に駆けつけた、のだけれど…
行ってみると、台船の上にはまだ建設資材がどっさり積んであり、クレーンはカヌーの乗ってる場所までたどりついてない。カヌーの面々は朝8時半からスタンバイしているのだそうだけど、作業は至ってのんびりペースで進んでる。そのうちお昼どきになり、クレーンも首を下ろして作業員は全員ランチに行っちゃうし(笑)。
わたしはカヌーを吊り下ろすところを見てみたいと思ってたので、ボートの上でビンロウジュを噛んだり昼寝をしたりして待ってる
チョメたちに弁当や水を供給しながら、チョコチョコ様子を見に行っていた。ふだんはこんなとこ滅多に来ないので気がつかなかったけれど、埋立て数年なのに、もうマングローブが根づいてる場所もあったりして、今後ここがどうなるかわからないけど、自然観察ポイントのひとつにしても良いかもね…なんて思ったりしながら。
そんな長~い待ち時間のあいだ、この台船を運航しているパラオのスランゲル&サンズ会社の社長のイトコというパラオ人のおじさんに出会った。学校の先生を退職してのんびりしていたところ、イトコの社長から急に、カヌーと一緒にヤップに行って、諸事万端うまくいくように目を配ってくれ-と頼まれヤップまで同行したという。このおじさんと、ナビゲーターのアリさん、サラガンさん、Fさんの年配者4人は、台船ではなくタグボートのほうに乗ってきたそうだ。
わたし:このカヌーの人たちはラッキーでしたね。たまたま台船が出港間際で。
おじさん:実はね、台船は3回も出港を遅らせていたんだよ。そしたらまた出航直前になってカヌーを乗せてくっていうじゃないか。いや~ほんとうに、神の思し召しだろうよ。
わたし:どのくらい遅れたんですか?
おじさん:ほんとうは3週間も前に出る予定だっただよ。
(注:カヌーの最初の出航予定も、実際の出航日より3週間前だった)
待って待って待って…やっと午後3時すぎ、クレーンがカヌーのあるところまでたどり着いた。ボトムヘビーになった台船のバランスを取るために、砂利を満載したトラックが手前のほうに乗せられた。パラオ人のおじさんとの話はまだ続く:
わたし:道中、海は荒れてたでしょう?
おじさん:すごい波だったよ。タグボートは小山のような波と波の間にすっぽり入っちまうし、台船はずーっと真上から波をかぶって水浸しだ。クルーはカヌーの中に入ってしのいでた。
わたし:綱が切れて台船がタグボートから離れるんじゃないかって心配はなかったですか?
おじさん:そういう事態に備えて、カヌーは砂利のてっぺんに、ああいうくくり方で乗せられたんだそうだ。いざとなったら綱を切って、カヌーはクルーとともに海に逃げ出せるようにね。帆も荷物も全部カヌーの中さ。
わたし:なるほど。台船は簡単に沈む可能性がありますけど、木でできたカヌーは沈みませんものね。
台船の上では、いよいよ
シメヨン・ホクレア号が釣り上げられていた。宙に吊られたカヌーなんて、なかなか見られる光景ではない。写真を撮っていると、うしろからサラガンさんの声がした。
サラガンさん:スーはそんなにカヌーが好きか?
わたし:はい、とっても。でも、今回の航海はちょっと時期が早すぎませんでしたか?
サラガンさん:ああ、ちいとな。でもパラオの新しい大統領から招待されてたんでなあ。ほんとうは就任式(1月15日)に間に合うように行く予定だったんだが。
わたし:行きの航海は追い風に乗ってスムーズだったんでしょう?
サラガンさん:ああ、強い風を受けてスイスイ走ったよ。途中で雨にも降られたし、うねりがあんまり大きいんでカヌーがすっぽりはまってしまい、こりゃダメかなと思ったときもあったけど、カヌーは難なく乗り越えたさ。
わたし:カヌーが破損したと聞きましたが、見たところ大きなダメージはないようですね。
サラガンさん:ああ、たいしたことはないよ。帆を支える竹が折れただけだ。
わたし:パラオに着いたとき、運良くスランゲルの台船がいてよかったですね。
サラガンさん:そういうことだ。助かったよ。パラオで竹を調達しようとしてたんだが、スランゲルが台船で運んでやるといってきたんだ。この時期に航海して帰るとなると、1ヶ月はかかるだろう。
わたし:この時期に、うねりや風にもろアゲンストでカヌーを出すのは、帆を返すときとか危なくないんですか?
サラガンさん:クルーはみんな慣れているから危なくはないが、時間がかかる。1ヶ月は長いよなあ。
いつのまにか
シメヨン・ホクレア号はうちのボートに曳航されてマリーナに戻り、次は
マソー・メラム号が吊るされていた。
わたし:マソー・メラムの走りはどうでしたか?
サラガンさん:速かったよ。とくに大きな波の中では、ヤップのカヌーのほうが安定しててスピードが出るんだ。
うちの22フィートのボートと並んだそれぞれの艇を見ても、
マソー・メラム号は
シメヨン・ホクレア号より艇長もかなり長い。喫水も少し深いかな?ただ艇幅はスリムにできている。物や人を大量に運ぶことを目的としてきたヤップ州離島のカヌーと違って、ヤップ島のカヌーは、安定したスピードを狙って特殊な進化をしてきたのだろう。かつてはそのスピードの出るカヌーで、パラオから切り出した石貨を筏に組んで挽いてきた。
午後も遅くなって、ようやく2艇のカヌーは11日ぶりにマリーナ桟橋の前に戻ってきた(その間の距離と出来事を考えれば、速いといえば速い)。
左上は
シメヨン・ホクレア号、行くときに積んでいった使い古したタライの火鉢が、しっかり結わえつけられて積んであった。どんな大波のなかでも、彼らはしっかり「生活」してますねえ!
→こっちは、
マソー・メラム号。アウトリガーもバランスよく浮いていて、とても大波の中をパラオまで航海してきたばかりとは思えない。
マキ村のカヌー小屋まで挽いていくべくスタンバイしていたうちのボートだけど、既に4時半をまわっていたので、曳航作業は明日まで延期されることになった。今夜はマリーナでゆっくり長旅の疲れをほくしてください>>カヌーさんたち。
(追記)
下の写真は、翌朝22フィートのボートに曳航される2艇。前が
シメヨン・ホクレア号で後ろが
マソー・メラム号。こうしてみると、艇長やシェイプの微妙な違いがよくわかる。
2艇の名誉のために断っておくけど、カヌー小屋まで曳航で帰ることになったのは、帆走不可能なほどのダメージを受けたからではない。帆を揚げて走るとなると、手間も人でもかかるからね。長旅ご苦労さんの意味で、うちが曳航作業をカンパしたわけです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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