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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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新造カヌーの進水式-その1

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カヌーの建造風景や、でっかいカヌーも完成間近で紹介したでっかいカヌーの進水式が、8月23日、マキ村にあるトラディッショナル・ナビゲーション・ソサエティ(TNS)のカヌー建造所で行われた。

このカヌーの名前は、MATHOW MARAM(マソー・メラム)、Vが深くやや細身の、ヤップ人の大工によって造られたヤップ島風カヌーなのに、なぜかヤップ州離島風の命名になっている。MATHOWは大洋とそれを渡る「道」のような意味、MARAMとは離島の言葉で「月」を意味する。直訳すれば、「月への道」みたいな意味になる。

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予定では9時から始まることになっていたので、9時ちょっと過ぎに「貢物」のビールを2ダース抱えて行ってみると、まだ閑散としており、お陰で、新造艇を十分間近に見ることができた。こうしてみると、やはりデカイ。海と反対側の薮の中に半分足をつっこむようにして撮った写真では、フレームの中に全体を納めることができなかった。

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カヌー近くの一角では、ヤップ人男性の正装をしたカヌー大工棟梁や長老たちが集まっている。ひととおり完成したカヌーを見て満足したあとは、次々と貢物を持って到着する各村の代表団の到来を、ボーっと眺めて時間を過ごしていた。今日は長い1日になりそうだ(笑)。

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と、やおら大きな掛け声が聞こえてきた。なんと、あのでかいカヌーのまわりに男たちが群がって、押し始めたではないか。ひと押しするたびに、カヌーがズズッと動いて向きを変える。カヌーの下には、ローラーがわりの竹が敷いてある。

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正装の長老たちが眺めるなか、洋装の州知事(右端の青いシャツのおじさん)まで押す男の群れに加わった。





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カヌーは120度向きを変え、いよいよ海へ向かうスロープに差しかかった。ココヤシの切り株と海辺の大木の間を、うまく通り抜けられるだろうか?棟梁と長老のひとりも様子を見にやってきた(写真左)。いよいよ左手の大木の側を通るとき、アウトリガーの反対側に張り出している「座敷」部分が、ひょいっと持ち上げられた。な~んだ、この部分は取り外し可能になっているのか...(写真右)。

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やっと水際に到着したカヌーに、取り外した「座敷」を取りつける若者たち(写真左)。これから始まる進水式のセレモニーに備えて、カヌー大工の棟梁が、舳先にルブー(lubuw、若いココヤシの葉を結んだもので、お清めの意味を持つ)をつけている(写真右)。

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セレモニーの開始を待つ間も、続々と貢物が到着(笑)。わたしのところには、前もって招待状とともに、Beverage contribution is welcomed and much appreciated(飲み物の差し入れは大歓迎、感謝しますよ)で結ばれたカヌー棟梁からの挨拶状がきていたので、スタッフのチョメリビアンに、「飲み物って何がいいだろうか?」と尋ねると、ヤシの実は村からたくさん供出されるので、ソフト・ドリンクなんか持っていくな。この場合のBeverageとは、ビールのことだ、トーゼンだろっ!という答だったわけ。

そして、それは正解だった。ヤシの実とビールの箱は、この後もどんどん到着して積み上げられていった。

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いよいよ、セレモニーの開始。棟梁が卒業式の校長先生よろしく、このカヌーの建造を手伝いながら修業した若者ひとりひとりの首に、清めのルブーをかけている。

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そのあと、棟梁が若いココヤシの葉でカヌーを払い(これも清めの意味)、それに続く棟梁次席が、若いココヤシの実のジュースを振りかけていく。

このあたり、かなり現代的にショー化してるのかな、という気もする。だいたい新造カヌーの進水式に、伝統的な式次第があったかどうかも不明だ。昔カヌーが頻繁に建造されていた頃は、新しいカヌーが完成しても、ごく内輪で祝うだけだったかもしれない。おそらくケースバイケースで、当事者の意向でどんな祝いもアリなのだろう。

戦後のヤップでは、だいたいこんな儀式にはカソリックの神父が呼ばれて、「清めと祝福」を与えて聖水をまくことが多かったのだが、今回は教会関係は誰も来ていなかった。ヤップ本来の伝統に戻ろうという意識が、こんなところにも出ているのかもしれない。しかし、そんな復古意識が強まってくるのは、実際の伝統が廃れてきた証拠でもあるんだよね。もしかして、若いココヤシのジュースを振りかけるスタイルは、聖水のかわりに思いついたのかも?

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清めが終わると、いよいよマストや、帆が積み込まれる。

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それにしてもでかいマストだなあ... 伝統カヌーといっても、何から何まで伝統的なマテリアルを使っているわけではなく、ロープはすべてモダンな良質のナイロン・ロープ、帆は米軍のパラシュート素材だ。このカヌーは、4年前の超大型台風がヤップを直撃したときに流されてしまったカヌーの復興という目的で、米国FEMAから金が出て建造されたので、その資金が豊富なことは、こういう艤装品からもうかがえる。

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さあ舵も乗ったし、いよいよ進水だ!男たちで最後のひと押し、前夜までの雨で赤土の流れ出た、茶色い海の中にカヌーは入っていった。

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まずは、ルブーをかけてもらったヤップ人大工たちで、カヌーの試帆走だ。帆を上げられる風のあるところまで、このでかいカヌーを、棹(サオ)と櫂(カイ)だけで進めて行く。

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by suyap | 2008-08-23 22:09 | ヤップの伝統文化
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