ブログトップ | ログイン

ミクロネシアの小さな島・ヤップより

suyap.exblog.jp

戦争の落し物

戦争の落し物_a0043520_2140367.jpgヤップには今でも太平洋戦争の残骸がたくさん残っているけど、左の写真もそのひとつ。海の中に設置してあった機雷(正式には機械水雷というらしい)のアンカーだったという。

実はダイバーが潜る水域にも、こういうのがたくさん転がっている。まわりにサンゴがついているけど、なんだか人工構造物っぽいなーと思っていたら、あるとき、それらを設置したという元日本海軍の兵隊さんたちに出会う機会があり、それらが機雷のアンカーであることが判明した。ヤップの主だった水路、米軍上陸用舟艇が乗り越えられそうなリーフの外に、100個以上も設置したそうだ。機雷については、こちらに図解が出ている:
http://ww1.m78.com/topix-2/minetorpedo.html
じゃあ、このアンカーでつながれて、中層をプカプカ浮いていた爆弾部分はどうなったのかというと、敗戦後、翌年2月まで居残って、米軍と武器や爆弾の処理を手伝っていた元兵隊さんたちに聞くと、だいたい処理はしたけど、わかんなくなったのもあったそうだ。つい先日も、コロニアにつづくウォネダイ・チャネルで機雷が見つかって、米軍の爆発物処理隊が来て爆破していった。海底で砂に埋もれてサンゴがついて、今ではまったく機雷には見えなくなってしまったものもあるだろうと思う。

ところで、海上自衛隊の機雷掃海技術は世界でもトップクラスだという。なんでそうなっちゃったかというと、太平洋戦争後、日本のまわりには、日本軍が設置した係維機雷(ヤップのと同じアンカーで繋いであるもの)が約5万5千個、米軍の感応機雷(戦闘機から投下されたもの)が約1万1千個もあって、そのすべての処理を元海軍の人たちでやったのだそうだ。国際条約では、機雷の処理は設置した国があたるとされているにもかかわらず、米軍の投下した機雷の処理まで日本が負わされた。その結果、7年間で79人もの犠牲者を出しながら。機雷の処理はそれほど危険を伴うものらしい。
機雷掃海(航路啓開)部隊
機雷との戦い-海上自衛隊と掃海任務(1)
ヤップでは、機雷だけでなく、戦争中に米軍が投下した爆弾の不発弾が、いまでもときどき爆発する。それらは地中に埋もれてどこにあるかわからないので、焼畑で作付けするヤムイモの季節になると、うっかり不発弾の近くで火を焚いて突然爆発-ということが起きやすい。うちのG嬢のおじさんも経験者だ。幸い、畑に火をつけたあと、ちょっと用事ができて近くの家に戻っていたので、けが人は出なかったらしい。





このように、戦争中の落し物は、のちのちまでず~っと被害をおよぼす。現在では劣化ウラン弾なんてとんでもないものが日本の米軍基地にもこっそり置かれているけど、クラスター爆弾にいたっては自衛隊もたっぷり持っていて、米国製だけじゃなく日本でも製造しているんだって!
クラスター爆弾とは
去年の今ごろ、わたしはこのブログでかぼちゃとクラスター爆弾という記事を書いて、「攻撃された時に、クラスター爆弾によって後の被害が出るのも自国民ですから(クラスター爆弾は我が国の防衛に必要だ)」なんてことを平気で言う、当時の久間防衛大臣や田母神空幕長、ならびにクラスター爆弾禁止を訴えるオスロ宣言に不支持を表明する日本政府を批判したけど、それから1年、日本政府は立場を一転して、ダブリンで開かれた「オスロ・プロセス」(クラスター爆弾の製造や保有を禁止する条約)会議で、賛成にまわったということだ。

福島みずほのどきどき日記:クラスター爆弾禁止条約合意
 クラスター爆弾ノ禁止条約作りを進めてきたオスロプロセスのダブリン会議は、事実上の即時全面禁止となる案を条約案として合意。
 この条約によれば、日本が持っている大量のクラスター爆弾は、廃棄をしなければならなくなる。ちなみに、自衛隊が持っているクラスター爆弾の75%は、日本製である。
 この条約は、最新型で高価なクラスター爆弾は、禁止していない
 日本政府が、愚かにも最新型で高価なクラスター爆弾をこれから買ったりしないように、きちんと交渉をしていく。
(下線はsuyapによる)
まったく、福島サンの言われるとおり、愚かにも最新型で高価なクラスター爆弾をこれから買ったりしないように見張っておかなければならない。だいたい今回の会議は、「(最新型が)民間人の被害を出さないのなら、禁止対象にしなくてよい」と、「最新型を例外とする」ことを落としどころにして、採択されたものらしい。
flagburner's blog(仮):クラスター爆弾保有にこだわる理由
上記ブログによると、去年の久間発言はどうも米や防衛族の主張が色濃く反映ということで、わたしもそう思っているが、それが福田サンになったからといって、はまよつサンにクラスター爆弾の子弾を見せられたからといって、日本政府の今までのスタンスが、たった1週間で反転するとは思えないのだが...

またクラスター爆弾の最大の生産・輸出国である米国は、この会議には参加していない。そこで思うに:
民間人の被害を出さない最新型の開発になんらかの目処が立ったので、現在自衛隊がたっぷり持っている禁止対象のクラスター爆弾を廃棄させ、新たに新型を買わせることで合意
したか、あるいは、
国内企業に開発のための予算をつけたうえで新型を生産・買い上げの密約
を結んだか、なんちゃって妄想してしまうのである。今の日本政府が、米国や日本国内の軍需利権に、そんなに強く打って出れるとは考えられないからね。そういう目でハマヨツさんの得意げなレポートを読むと、そこで述べられている福田サンのコトバが、ようやく意味あり気に浮かび上がってくるのだ。
これに対して、福田首相は、安全保障上の観点などから「現実には難しい問題がある」としながらも、さまざまな国際社会の動きがあることを踏まえ、「軟着陸させるので任せていただきたい。時間をいただきたい」と、従来より踏み込んだ対応が必要との認識を示した。
もしかして、公明党とのこの5月23日の会見すら、演出かもしれないなあ。米国、国内軍需産業とも既にネゴが出来た上で、ここは公明党に花を持たせてやって(それで自民党最右派もなだめて)...なんちゃんてネ。わたしの妄想はどんどん膨らむ...(笑)。

やっぱり、福島みずほサンのおっしゃるとおり、日本政府が、愚かにも最新型で高価なクラスター爆弾をこれから買ったりしないように、きちんと交渉をして見張っていかなければならないね。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
よろしかったら人気ブログランキング地域情報 & にほんブログ村海外生活ブログにクリックを!



◆◇ヤップの情報はこちらでもどうぞ◇◆
http://www.naturesway.fm/index2.html
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
by suyap | 2008-05-31 21:18 | ヤップと戦争
<< [ダイビング]シーファン・パラダイス オニヒトデの嗜好について >>