2008年のヤップデイ－ちょっと心配編 : ミクロネシアの小さな島・ヤップより

2008年のヤップデイ－ちょっと心配編

ことしのヤップデイは去年と同じくガキル地区のマキ村に作られた特設（伝統的なものではないけれど伝統建築で建てられた集会場がある）広場で開催された。ここは日本時代にヤップ人子弟のための学校＝公学校（コガッコウと読む）があった場所だが（参照：http://suyap.exblog.jp/5189280/）、今では大きなマンゴーやテリハボク、その他の潅木や珍しい植物も育ち、ちょっとした熱帯植物観察園にでもなりそうな素敵な場所になっている。

そこで去年、今年とヤップデイが開催されたわけだけれど、去年は食べ物や土産物を売る出店セクションは道の反対側の草地に設営されていたから、木々の茂る学校跡地に車が入ってくることはほとんどなかった。それでも大勢の人間に根元を踏みつけられた木々たちは、たいへんしんどかっただろうと思う。

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それが今年はどういう経緯からか、出店セクションも公学校跡地に設営されていた。それらの出店に物品を搬入する車や、なぜだか関係ない車までたくさん入り込み、潅木は倒され大木の根はタイヤに傷められ、そこら中の木々の悲鳴が聞こえるてくるようだった。

わたしも日常ひんぱんに車を運転しているが、車に乗っているとその暴力性に気がつけない。まして今のヤップは4年前の台風以来、アメリカ（FEMA）の援助でばら撒かれた金によって車の量が4倍になっており、やっと手に入れた車によって起きる環境破壊まで気がまわらない人が多いのだ。会場への車の乗り入れ制限や環境への配慮をお願いするコメントを、来年の準備が始まったらヤップデイ委員会に出そうと思っている。

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もうひとつ気になったのは、踊りを見るマナーだ。まず外国人はヤップの踊りを見る礼儀を知らないから、踊りが始まっても平気で前を横切ったり、踊り手に超接近して激写を試みたり、ほんとうにひどかった。それに対して控えめなヤップ人のＭＣが何も言わないと、今度はヤップの若い連中や図々しいオバサンが赤信号みんなで渡れば恐くない状態になってしまって、踊りの最中でも平気で最前列の見物人の前にのこのこ出てきてどかっと座ったり、飽きた子供がスタスタ立ち去っても誰も叱れなかったりする。

さすがに１日目の行状にどこかから苦情が出たらしく、2日目後半になってやっとＭＣも注意するようになったが、観光客はともかく、ヤップの若い子たちにどれだけその意味が伝わっただろうか？来年からは、踊りを見るマナーやルールをプログラムにちゃんと書いておけば良いと思う。ひと昔前のヤップ人だったら、小さいときから家庭や共同体のルールとして身についていたことも、最近の若い子には通じなくなっている。あきらめずに気づいた者が言い続けるしかないのだけど、文章や言葉でアナウンスするということも大切だ。これもヤップデイ委員会に提案してみよう。

最後に外国人の撮影マナーについて。通常ならメディアの取材には面倒くさい手続きがあるが、明らかにプロ・カメラマンと思える連中も、ヤップデイには一般観光客に混じって入ってくる。そして彼らなりの画作りのために特定の踊り手に接近したり、踊りの最中にちょこまか動き回ることは、踊り手にはかなりのストレスになっている。またヤップの放送局がライブで踊りを放映したり記録したりするのにも目障りだ（もちろんわたしのビデオ撮影にもね）。踊りから一定の距離に丸太などのマーカーを置いて、これ以上接近禁止にすれば良いのではないか。

ヤップデイはあくまでヤップ人のための催しであってほしいし、それを維持し続けることが、深いところで外国人の共感を呼べるのだと思う。「観光」を意識するあまり日本の祭りがどんどん変質したように、ヤップデイにも既にその兆しが見えているが、ヤップはヤップのペースで、外におもねることなく、いつまでもわが道を行ってもらいたいものである。

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