亡国のイージスは盲目のイージス

遅く帰ってきた今夜は、あまり時間をかけず気軽に海の話でもと思って、きょう撮ったおいしそうな（爆）ホシカイワリ（Carangoides fulvoguttatus）の写真を用意したのだけど、TBくださったとらちゃんや眠り猫さんの記事とそのリンク先を読むうち、同じ海で働くものとして、腹の底から怒りが湧いてきてどうしようもなくなった。

寒い冬の夜明け前の海に放り出された清徳丸のお2人を思うと心が震える。
痛々しく浮かぶ割れた船体を見ると、清徳丸がよく手入れをされた船であったことがわかる。きっと船長親子にとっては自慢の愛艇、海で共に辛苦をわかちあうパートナーだったに違いない。

亡国＆盲目のイージス艦あたご乗組員が緑色の灯火を視認したと言わされたりとニュースで宣伝されているようだが、それが本当だとしても、海上衝突予防法上はあたご側に否があるのは明らかだ。





東京新聞2008年2月20日朝刊

石破防衛相は「午前四時五分ごろ、あたごが航行中、漁船が右前方から航路前方を横切った。それと同時刻、あたごの見張り員が右方向に緑色の灯火を確認した。四時六分ごろ、灯火が漁船だと確認したので、全力の後進をかけた。漁船はあたごの前方百メートルで大きく右にかじを切っている。この一分後に衝突した」と説明。レーダーでの探知状況については「水上レーダーに漁船が映っていたか、映っていても乗員がこれを認識していたか不明だ」と述べた。

これも支離滅裂な話だ。直前に行会い船回避の手段で右に舵を切って衝突を免れた金平丸と、同じ漁場に向かっていた清徳丸が、あたごとまったく違う出会いをするわけがない。

あたご乗組員が清徳丸の緑色の灯火を見たというのが嘘でなければ、考えられるのは：

１） 両船は、ほぼ反対方向から行き会う形で出会った（行会い船）。
2） そのとき清徳丸の位置は、あたごに向かってやや左よりだった。
3） あたご乗組員が清徳丸を発見したのは、超接近してからだった（遠くから発見していれば、赤色灯も見えるはず）

ということになり、海上衝突予防法上では、両船とも右に舵を切って、左舷側を通過するようにしなければならない。ところが右に舵を切った清徳丸に対して、あたごは全力の後進をかけた。行き足のついた船は急には止まれない。両船の距離にもよるが、あたごも右舵を切っていれば、結果は違ったものになっただろう。そして何よりも、あたごがもっと早く（赤と緑の火の見える距離から）清徳丸を発見していれば、事故は回避できたはずである。

防衛省＆あたご側が盛んに緑色の灯火を見たというのは、横切り船のケースで有利になるようにという魂胆なのかもしれない。海上衝突予防法では、２隻の船が進路を交差して横切る場合、相手を右舷側に見る船（夜間は相手の船の赤色の灯火が見える）が右に進路を転じて衝突を避け、一方の船は進路、速力を保ったまま航行することとしている。したがって、あたご乗組員が緑色の灯火を見たと言えば、清徳丸のほうに回避義務があり、あたごは針路・速力を保持していたからOKということにしたいのかも。

しかし、これは両船の針路から見ても無理がある。清徳丸は勝浦から三宅島近海を目指して南西～南南西に向かっていたわけだし、あたごはハワイからご帰還中。どういうプロットを描いても、あたごから清徳丸の緑色の灯火が見える図は想定できないのですけど...（爆）

もし両船が横切り船として出会ったなら、あたごは清徳丸の赤灯を見ていたはずで、一方清徳丸は、針路・速力を保持して逃げ切ろうとしても迫り来るあたごに、天に祈るような気持ちで右舵いっぱい...悲惨な話だ。

以上、この事故の原因は、ちょっと船に乗ってる人なら、ざっけんなよーというほど簡単明瞭な、夜間監視義務不履行につきる、ピリオド！

レーダーがどーのこーのとかの問題では、あ り ま せ ん！


盲目のイージス（つづき）



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