ウォレアイ環礁（メレヨン）で62年前に起きたこと－その壱 : ミクロネシアの小さな島・ヤップより

ウォレアイ環礁（メレヨン）で62年前に起きたこと－その壱

太平洋戦争末期、ヤップ州のウォレアイ（オレアイ）環礁※で、およそ5500人もの日本軍将兵と朝鮮人を含む軍属が戦病死（ほとんどは餓死）したことは、昨年8月の拙稿：
太平洋戦争は避けることができた＠ウォレアイ（メレヨン）
http://suyap.exblog.jp/4134847/
（これ以降をより理解していただくために↑ぜひ読んでおいていただければと思います）
に書いた。その後、今年2月に再びウォレアイへ行くことがあった。遅くなったが、これから5回くらいのシリーズで、いまだに多くの遺骨が眠る島々のことを紹介したい。わたしが下手な文章を連ねるより、写真や数字の記録がより良く多くを語ってくれるだろう。まず今回は、日本がどんなところで戦争をしていたのか知ってもらうために、環礁を空から見た写真を掲載しておこう。

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左上の写真は、環礁の北側上空から南西方向に見下ろしたもので、手前の大きな島がウォッタガイ（オッタガイ）※、それに続いて小さな島エリンガリク、ファルレガラオ、ファルラプラプ、ファルレマリテ、ピアルと連なり、遠くにフラリス島が見える。1944年4月に日本の陸軍が上陸して以来、約500人いた島民は全員、家や畑を捨ててフラリス島に強制疎開させられた。手前に大きく見えるウォッタガイ島には、陸軍歩兵第333大隊の将兵約500人と海軍警備隊が駐屯した。

※ウォレアイ環礁、ウォッガタイ島の表記は、現在のアルファベット表記ではそれぞれWoleai, Wottagaiと書くが、現地の発音ではWoはウォとオの中間くらいになる。従って、カタカナ表記としては、日本統治時代に使われたオレアイ、オッタガイでも間違いではないが、以後このブログでは、ウォレアイ、ウォッタガイと表記していくことにする。

右上の写真は、環礁の北側からタガイラップ島を見下ろしたところ。この島には陸軍歩兵第335大隊の一部と独立混成第50旅団砲兵隊、船舶工兵、固定無線通信分隊など400人近くが駐屯した（海軍の詳細は不明）。

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ウォレアイ環礁で一番大きなフララップ島（写真左）には、日本軍のつくった滑走路がそのまま残っており、老朽化が進んでいるが軽飛行機の離発着にいまだに使用されている。写真ではその先にマレヨン、タガイラップ、スリアップの島影が見える。

フララップ島には独立混成第50旅団司令部と海軍司令部が置かれ、1100人以上の陸軍将兵と、海軍警備隊ならびに工作隊（詳細人数不明）、滑走路建設のための労働人員（軍属とされたが多くは朝鮮からの労働者）がいた。マレヨン島には陸軍歩兵第335大隊と独立混成第50旅団砲兵隊の各１コ中隊、旅団診療所が置かれた（海軍の詳細は不明）。スリアップ島には陸軍では独立歩兵第331大隊554人と第50旅団工兵隊の一部（100人前後？）が駐屯した（海軍の詳細は不明）。
ウォレアイ環礁の暗号名メレヨンはこのマレヨン島の名前からきたのではないかと言われているが、いずれにしも現地を知らない参謀たちの机上のアイディアからきたネーミングであったことにかわりはない。

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写真右は、フララップ島から南へと延びる（環礁東端に位置する）パリアウ島とラウル島で、いずれも多くの死者を出した。両島ともある程度の大きさがあり戦前は人々が住み着いていたが、戦いが終わって強制疎開先のフラリス島から戻っても、2度と住む人はいなかった。地元ではラウル島は「お化けの島」とも言われている。

ウォレアイ環礁に上陸した陸海軍将兵6426人のうち、戦死者は３０７人、93％にもなる残りの４４９３人が飢えからくる衰弱や伝染病その他で死に、生還したのは1626人だった。これに加えて朝鮮半島からの徴用者や日本人の軍属（民間人）、ならびに戦災などで軍籍不詳となった人々などを入れると、実際の死者は5200人から5500人はいただろうと推測されている。しかし日本人以外の「軍属」の記録はほとんど残っておらず、このように膨大な忘れられた死の存在こそ、この国の戦争をよく物語っているような気がする。