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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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[ダイビング]ハマサンゴを食べるオニヒトデ

まず、4日間も放りぱなしのブログに毎日訪れてくれてた皆さん、ありがとう&ごめんなさい。
書きたいことは山ほどあるのに時間と身体と頭がついていかず、やっとこれから3日分!の穴埋めをするつもり...です。というわけで、書いているのは14日なのに、なぜか日付は12日の海の中のお話からどうぞ。

[ダイビング]ハマサンゴを食べるオニヒトデ_a0043520_12171698.jpg[ダイビング]ハマサンゴを食べるオニヒトデ_a0043520_12175699.jpg左の写真は(ちょっと暗いけど)ヤップ島南西にあるマジック・キングダムというダイブサイト(ダイビング・ポイント)の海中を被うサンゴの様子。現在の被覆率は80%といったところかな?でも実は、今はこんなに元気なサンゴも昔からずっとこんなじゃなかったし、これからもずっとこのままである保証はないんだよね。

わたしが経験している1990年以降だけでも、~1992年頃までのうっとりするようなサンゴの群生が、その後の度重なる台風で物理的に壊され(特に1996年末の台風は痛かった)、それが徐々に回復してきたところで1998年夏~秋の大白化、続いてオニヒトデ、空港や道路建設による赤土etc. にやられ、幸いヤップを襲った2002年と2004年の大きな台風からは風向きが反対側だったことにより物理的なダメージをなんとか避けられた。それらがあってのち、やっとここ2年ほどで南西側のサンゴ群がめきめき元気になってきている。

[ダイビング]ハマサンゴを食べるオニヒトデ_a0043520_12184556.jpg[ダイビング]ハマサンゴを食べるオニヒトデ_a0043520_12192653.jpg一方こちらはヤップ島の東側にあるザ・バージというダイブサイトで、フカアナハマサンゴPorites lobata)にかじりついているあわれなオニヒトデ。このあたりは2002年3月の台風ミタグ(Mitag)後あたりからオニヒトデが目につくようになり、2004年4月の台風スーダル(Sudal)で大きな塊状サンゴもひっくり返るような打撃+オニヒトデの食害が進み、その後ヒトデは島の東側を南北へと広がった。

ヤップ島の東側のサンゴの状態は、1990年~92年頃は今ほどではないが荒れていた。おそらくそれ以前のオニヒトデの食害と台風によるものと思う。それがだんだん回復して、1998年に白化はあったものの何とか持ち直し、それが2002年の台風前まで続いていた。オニヒトデの最初の大発生は、ザ・バージからぺラックあたり、つまり島の東のど真ん中あたりだった。

それが徐々に南へ北への食い上り、現在では東側のミドリイシ科(Acroporidae)やヤスリサンゴ科(Sideratreidae)、ヒラフキサンゴ科(Agariciidae)など、オニヒトデの好物とされているサンゴ類は、ほぼ全面的に食い尽くされた。これらのサンゴはカラフルで形もさまざまに美しいので、ヒトデが食い荒らしたあとの光景は殺伐とした荒野のごとく、である。

ところでヤップにはオニヒトデがあまり好まないとされていたハマサンゴ科(Poritidae)、とくに前出のフカアナハマサンゴや直径数メートルと巨大な塊状になるコブハマサンゴPorites lutea)もたくさん見られ、内湾の浅場にはユビエダハマサンゴPorites cylindrica)がよく発達している。ハマサンゴの仲間は成長がゆっくりで色も地味だけど、大きな塊になるものが多く、サンゴ礁の発達には重要な役割を果たしている。成長が速くて色鮮やかなサンゴが発達しすぎると、こういうサンゴ礁の発達に必要なサンゴの発達を妨げるので、オニヒトデが成長の速いサンゴを食べることでバランスを取っているのだという見方もある。

というわけで、現在のヤップ島東側リーフには、あちこちにポツン、ポツンと大きな塊状ハマサンゴが残っているわけだけど、それをもオニヒトデが襲い始めたわけだ。場所によってはかなり高密度だったり、まったく食害のあともヒトデも見えなかったり、個体の分布にはばらつきがあるようだ。今後の心配は、彼らが果たして西側の「美味しいサンゴ」を見つけて進出してくるかどうか。幸い島の北と南の先端を回りこむような潮流はまず起きないので、卵が西側のリーフに流れ着く心配はあまりないだろう。でも水中を「歩いて」移動してきてしまう奴がいたらどうしよう...

ところで、こうしてダイバーや環境保護ピープルの目の敵になっているオニヒトデだけど、もちろん彼らに罪はない。それなのに最近はわたしも見つけると思わず内臓切り裂きジャックと化してしまうことが多いんだよね。そんなとき、こんなあたしに誰がした!ってヒトデが叫んでいるような気がして、ずっと後ろめたさが残る。

この世に無駄なものなんてないんだから、殺生しちゃいけないよ
っておっしゃったのは、お釈迦さまだったっけ?

蝿や蚊やゴキブリが消えたニホンの都会の生活が、なんとも無機質で殺伐としてきたように、
オニヒトデがサンゴの海から消えてしまうと、きっと何かマズイことが起きるだろう。

でも、ご飯粒が見えないくらい蝿がたかるってのも異常だろうから、それに殺虫剤を吹きかけるんじゃない方法で蝿とニンゲンが共存できるバランスをさぐるように、オニヒトデとサンゴの豊かで持続的なお付き合いの仕方をさがすにも、まず大事なのは長期的なモニタリングでしょうね。

そんなことさえ、よけいなおせっかいダヨ!by サンゴ&オニヒトデ
なんて言われちゃったりして(笑)


(参考)
オニ来襲:小野にぃにぃの海と島んちゅ生活
http://ononini.exblog.jp/5490291
オニヒトデってなにもの?(環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター)
http://www.coremoc.go.jp/onihitode/about.htm
主要な造礁サンゴ
http://zoo2.zool.kyoto-u.ac.jp/~hirose/Marine/corals/class.htm
アムスルだよりNo.25(阿嘉島臨海研究所)
http://www.amsl.or.jp/dayori/AMSL25.pdf
造礁サンゴの白化、その後(藤岡 義三:中央水研ニュースNo.24)
http://nrifs.fra.affrc.go.jp/news/news24/2401.html
非大発生時のオニヒトデの生態(95/3修 上野光弘)
http://www.ecology.bio.titech.ac.jp/Study/abstract/ueno.html


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2007-06-12 23:14 | ヤップのオニヒトデ
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