ボケた写真ですみませんが、これは
マングローブオオトカゲ(
Varanus indicus)、英語でMangrove Monitor、ヤップ語では
ガルーフ (galuuf)と呼ばれる生物。成長すると1メートル以上になるジャイアント君だけど、写真の個体は50センチくらいだったろうか。とっても臆病なので、こうして写真を撮れただけでも、ラッキーだった。
ヤップの
ガルーフは通常ジャングルに住み、カニやネズミなどの小動物や、民家の側にも寄って来て、ニワトリの雛や卵も狙うらしい(ヤップではニワトリはみな放し飼い。雛や卵は草むらにある)。だから、あんまり歓迎されている動物ではないけど、けっこうマヌケなお邪魔虫といった存在だ。
ガルーフを脅すとヤシの木にも登るという。さらに脅すと、自分の重さも考えずに幹から葉の部分に乗り移るため、そこから滑り落ちて気絶するのだそうだ。これが泳ぐところをわたしは見たことないけれど、泳ぎもたいへん上手いらしい。
島の人は絶対に食べないが、太平洋戦争中は飢えた日本兵がこのオオトカゲを好んで食べたので、戦争が終わった頃には
ガルーフの数が激減していたという。現在は開発による森の減少でまた減り続けているようで、1メートル級の大きな
ガルーフには、わたしももう長いことお目にかかっていない。
ヤップには
ガルーフにまつわる民話がいくつか残っている。きょうは、その中のひとつ、
ガルーフにされてしまった男の話を紹介しよう。
むかしむかし、たいへん働き者で魚とりの上手い男がおりました。男には妻と2人の子供がいましたが、妻の実家にも、とってきた魚をたくさん届けておりました。妻の実家では、その都度もらった魚に見合うくらいの主食をお返しにあげなくてはなりません(注1)が、あまりにもたくさんの魚がくるので、だんだんお返しの主食に困るようになりました。
ある日、いつものとおり妻が男といっしょに実家に魚を持っていくと、妻の両親は娘をこっそり呼んで、「これを夫の食べ物に入れてあげなさい」と、あるものを手渡しました。妻は何の疑いもなく、両親に言われたとおり、もらった物を夫の食べ物に混ぜて夫の食事を作り(注2)、男はそれを食べました。食べている最中から、男はなんだかおかしな気分になり、自分の身体が意志に反して前につんのめり、だんだん腹ばいになっていくのがわかりました。
一方、その様子を見ていた妻のほうも、何が起き始めたかをただちに悟り、急いで男と子供たちを連れて家に戻りました。その間も、男の身体にはどんどん変化が起きていました。そうです、男の身体は、だんだんガルーフの姿になっていっていたのです。
やがて、完全にガルーフの姿になってしまった男は、家の前の大きな木の中に住むようになりました。始めのうちは、妻が男のために食事を作って運んで行くと、ガルーフになった男が木から出てきて、まるで妻や子供たちのペットのように飼われていましたが、時が経つうち、男は自分がかつて人間であったことも忘れてしまい、ついに妻や子供の前に再び姿を現すこともなくなりました。
男の妻は、夫をこんな姿に変える薬を渡した両親を恨み、2度とその実家を訪れることはありませんでした。
注1)ヤップの婚姻関係では、男サイドのファミリーは女サイドのファミリーに魚を、女サイドのファミリーは男サイドのファミリーに主食(タロイモ、ヤムイモなど)を届ける習慣がある。
注2)ひと昔前までヤップでは、妻かそれに相当する特定の人だけが、一家の主の食べ物を用意していた。一家の主たる男は、そういう女性の手を通さない食べ物には、決して口をつけなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
よろしかったら
人気ブログランキング地域情報 &
にほんブログ村海外生活ブログにクリックをお願いします。
ヤップのマンタ:
http://yaplog.jp/mantas/
ヤップ島あれこれ:
http://yaplog.jp/suyap/
ヤップ島の旅案内:
http://www.naturesway.fm/index2.html