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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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ガル(オオハマボウ)の繊維

ガル(オオハマボウ)の繊維_a0043520_12191488.jpg左の写真はこちらでも紹介したオオハマボウ(Hibiscus tiliaceus)。屋久島、種子島、小笠原諸島以南に分布するハイビスカスの仲間だ。ヤップを始めとする太平洋の多くの島では、薬、繊維、建材、防風林など、いろいろな形で人間生活に役立ってきた。この植物をヤップ語ではガル、沖縄ではユーナというらしい。

ガル(オオハマボウ)の繊維_a0043520_12163939.jpg右の写真は、オオハマボウ=ガルの幹からとった繊維だ。ヤップ語ではこれもガルという。

オオハマボウは樹高数メートルから10メートルを越すものもある潅木で、それを切り倒した幹を適当な長さに切って表皮を剥き、1週間ほど海水に漬けておく。それを引き上げたあと乾かして、引き剥がすようにして繊維を剥いていくと、木の芯まで繊維がとれる。それをまた1週間水に漬けて晒し、乾かしたものが写真のガルだ。

ガル(オオハマボウ)の繊維_a0043520_12172213.jpgガルはカラフルに着色されて、若い女性の晴れ着になる。化学染料が無かったころはもちろん草木染だったが、ニホン統治時代に「染め粉」がニホンからもたらされ、ヤップの「晴れ着」は一気に派手になった。今ではアメリカ製の化学染料も輸入されているが、いまだにニホンの染料、それも「都染め」ブランドはヤップの女性たちに人気がある。

このカラフルな腰蓑は、ほんらいは結婚前の若い娘が特別なときだけ着るもので(ニホンの振袖のようなもの)、年配の女性が着るとかなり恥ずかしい(から、まず普通は着ない)。ところが、最近の踊りの衣装はだんだん派手になってきていて、孫がいるような女性も混じっているような踊りでも、衣装を「振袖」に揃えるようになった。

ガル(オオハマボウ)の繊維_a0043520_12175842.jpgこちらはヤップの成人男性の正装。六尺褌に似た絞めかたで2枚の下帯(スー)をつけ、その上に離島の女たちが織ったバギー(写真では白と黒の縞の布)を巻き、最後にガルのふさふさをつける。これは「晴れ着」ではなく、成人(ニホンの昔流にいうと元服のようなもの)したとみなされる年代に達した男は、この一式を身につけないと笑われるし、まわりにも不快感を与える。ヤップで褌1枚つけただけの成人男性を見かけると、それはヤップ島の人ではなくて、ヤップ州離島の人なのだ。

ニホン時代にブロードなどカラフルな綿布が入ってくるまで、下帯スーも飾り帯バギーも、バナナやオオハマボウの幹からとった繊維で女たちが織ったものだった。これらの天然繊維は洗濯に耐えないから、着たきり雀で古くなったら新しいものに変えた。上記2つのアイテムの色は生成りだったが、ふさふさの飾りガルには、その男の所属するリーグによって、生成りと、ヤップの土で赤く染めたものとがあった。しかし、いまでは、赤色に染めたガルをつけている人を、滅多に見かけなくなってしまったが。

ガル(オオハマボウ)の繊維_a0043520_12203069.jpg上記の伝統衣装のほかにもガルは、撚(よ)って細い紐にして、漁具や装飾品などにも使われた。左の写真は、今回のヤップデイ会場の小学校の展示ブースで見つけた新しいガルの使い方。たぶん「晴れ着」の材料の残りを使ったものだろうが、こんなカラフルな花束ができていた。



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by suyap | 2007-03-07 23:20 | ヤップの伝統文化
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