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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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ヤップデイ続き-女の仕事②

2007年ヤップデイ-ヤップの伝統料理の続きです。

ラック芋のチョルゴイ
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チョルゴイというのは、ヤップの団子と思ってもらえば良い。今回はラック芋(水田のタロイモ、Cyrtosperma chamissonis)の団子だったけど、これがパンノミでもタピオカでもブオイ(タイヘイヨウグルミ)の実でも、それらのミックスでも良い。ミソは削りおろしたコプラを大量に混ぜること。写真右のコネ鉢は、ヤップ産のテリハボク(ビヨッチ)で作った立派なもの、左はビンロウジュの葉の付け根の部分(ワティール)を使った容器。あらかじめ削ったコプラに炊き立ての熱いラックを入れて、搗き潰す寸前だ。

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ラックのチョルゴイを作るとき、わたしはいままで冷えた芋を一生懸命削っていたのだけど、なるほど、熱いうちに搗けば、こんなに簡単だったんだぁ(笑)。芋を搗いているおばちゃんたちの写真を撮っていると、「あたしたちの腰蓑にも注目してちょうだい!これが、ほんらいの料理用の腰蓑なんだから」という注文がついた。なるほど、おばちゃんたちの腰蓑は、わたしが着ているココヤシの葉だけじゃなく、表面がバナナの葉で覆われている。

ヤップ島では、つい3世代ほど前まで、一家の主(男)の竈(かまど=キッチン)はその他の家族のそれとは別になっていて、主は彼のオクサンかそれに準ずる女性がそこで調理したものしか口にしなかった。そのとき、女性たちは必ずバナナの腰蓑をつけて調理したのだそうだ。わたしは、あるオバアチャンが、夫であるオジイチャンのために別の竈でご飯を用意しているのを見たことはあるが、もうオバアチャンも日常着はシャツにスカートだったので、料理用の腰蓑のことは今回はじめて知った。うーん、チョルゴイ担当ルル地区ンゴロク村のおばちゃんたちのこだわりに感謝!

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上の写真左はまぶし用に別に用意されたヤシノミ・フレーク(コプラの削りおろし)。ビンロウジュの葉の付け根の部分(ワティール)を、うまい具合にくくって容器にしている。右は搗きたてのタロイモをお団子に丸めているところ。年期の入った石製の搗き棒にも注目!こりゃー、作業が速いはずだ(笑)。

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↑のココナツ・フレークの中でお団子を転がし、ハイビスカスのお皿に載せて、はい、出来上がり(上左)。

チョルゴイは、ヤップでまだ現役のご馳走、あるいはスナックで、子供や老人にも好まれる。ここまで道具にこだわらなくても、余った主食とコプラさえあれば、誰でも簡単にできる。あっ、一家の主に食べさせるときには、余りものを使わないようにね!(笑)。

タロイモの葉のデザート
a0043520_1232253.jpgこのブースは、いつ通りかかっても作っている現場を見逃したので、出来上がりの写真だけ。
タロイモにはたくさんの種類があるが、ヤップでマルと呼ばれる畑に植えるタロイモ(沖縄のタームと同じ)の葉は食用になる。このレシピの料理法はいたって簡単。固い筋を取り除いたマルの葉と茎を約45分ほど茹でて、茹で汁をこぼす。新らたに水を加えてさらに茹で、芋の葉や茎を噛んでみて舌を刺す味が消えていれば火からおろす。茹で上がった葉と茎は細かく切り刻んでおく。削ったコプラからココナツ・クリームをつくり、コプラの絞りかすの一部と刻んだタロイモの葉と茎をココナツ・クリームで和える。好みでココヤシ・シロップかサトウキビ・ジュースで甘みをつけても良い。なかなかサッパリしたお味がグーでした。茹でてアクを抜いたマルの葉は、野菜として他のレシピにも活用できそうだ。

ヤシ油づくり(古式)
裏通り(笑)の目立たない場所で、おばちゃん2人がなにやらやっていた。通りがかりに「何しとるん?」と聞くと、「うちら、ホンモノのヤシ油つくっとる、あんた、見ていきなさい。(行程を)最初からやってあげるから!」と、やりかけの作業を中断して、嬉しそうに答えてくれた。

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と、やおら、おばちゃんのひとりが立ち上がり、ヤシノミの外皮を上手に剥いていく(上の写真右)。中の実を割るのも「古式にのっとって」、ナナナント!(上左)。こういう道具にも、きめ細かく拘らなければなりません、なんたってヤップデイなんだから(笑)。

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次に登場した「古式」は、ホンモノのゴイ(写真右)。ゴイというのは海の中の貝の名前だとは聞いていたが、現在ではコプラを削る道具全般(スプーンの先にギザギザをつけたり、細かい歯のついた金具を座り台の先にとりつけたりしたものなど)を指す。先のギザギザした小さな貝殻=ホンモノのゴイで、おばちゃんのひとりが器用にコプラを削り始めた(写真左)。このゴイはひとつしかないらしく、もうひとりのおばちゃんはヤシガラの先で器用に削っている。「ヤップから金物が消えて無くなっても、うちらは困らん、大丈夫じゃ」と言いながら。ごもっともデス。

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こうして削られたコプラは、ほんらい5日は置いて乾かすのだそうだ。だけど、「ヤップデイは2日しかないしのう」とぶつぶつ言いながら、昨日削ったというコプラを、双葉のヤシの芽(筋が通っているので油が伝わって降りやすいのだろう)の上に乗せて包みながら、先をハイビスカスの繊維でしっかりしばる(上写真左)。さらに全体をこぼれないようにきれいに包んで、上からビンロウジュの葉の付け根(ワティール)で包む(上写真右)

a0043520_1211327.jpgそれを、ヤシ・ロープで柱にしっかり結わえ付けているところ。下に取りつけたヤシ殻容器で、絞り落ちる油を受ける。こうして数時間放置しておくと、徐々に油が容器に溜まるのだそうだ。

この「古式」ヤシ油づくりは、わたしも今回はじめて知ったが、近くを通りかかったヤップ人の男たちも、「何やっとるんや?」とおばちゃんたちに聞いて、ものすごい剣幕で怒られていた(笑)。「ヤップ人のくせして、ホンモノの油の作り方を知らんとは何事じゃ!あんたらの使うクスリ(ヤップのローカル・メディスン)は、みんなこの油で作ってあるんじゃ。水や火を使う今どきの油じゃ、クスリの役には立たんのよ!」 なあるほど...

出てきた油は匂いもなくきれいだったけど、ちょっと白濁していたので、試しにおばちゃんに聞いてみた。「これ、もっとコプラを干してから絞ると、透明な油が取れるんじゃない?」
ふたりのおばちゃん、わが意を得たりとばかりに、「そうよそうよ、ようわかってくれたの!」

ヤシ油づくり(現代式)
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「古式」油づくりの近くでは、別のグループが、わたしもよく知っている方法でヤシ油を作っていた。上のおばちゃんらの心証を悪くしないために(笑)、他のブースをひとまわりしてから、さりげなく近寄って、行程の一部を写真に収めた。コプラを削ったものに「水」を加えて油分を揉み出した後しばらく置き、底に沈殿した水分をチューブなどを入れてサイフォンの要領で出来るだけ抜いてから、火にかける(上写真右)。グラグラ沸騰したら、焦げつかせないように頻繁にかき混ぜながら、どんどん水分を飛ばしていく。ぴちぴち油がはねるので火傷に注意。

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かなり長いこと加熱を続けると、ある時点で、茶濁していた内容物がクリアな上澄みと鍋の底についた焦げた不純物に分かれる瞬間がある。このクリアな部分がヤシ油だ。この時点で火から降ろすと透明なヤシ油が取れるが、まだ水分が完全に抜け切っていないので日持ちが劣る。それで、もっと日持ちして香りの高い油を好む人は、上右の写真のような状態になるまで、さらに加熱を続ける。左の写真は、冷めてから油を濾しとっているところ。10個のヤシノミから、約3カップの香り高いヤシ油が取れた。

原料が何であれ、油づくりがいかに大変な作業を伴い、かつ歩留まりの悪いものか、こうして自分で作ってみるとよくわかる。そして、「天ぷら」という料理がいかに贅沢なものだったかも想像がつく。工業生産された品質の悪い油を多量に消費するようになって、現代人は多くの病気に悩まされるようになった。ほんとうに質の良い油を、ほんの少量とるだけなら、お金もかからず医者いらずの生活が送れるんだけどなあ。

ココナッツ・デザート
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カラフルなハイビスカス繊維の「着物」を着たお嬢たちがいるブースでも、なにやら作っていた。成長段階の違うココヤシの実でデザートを作っているんだそうだ。ヤップ語ではココヤシの実だけでも5段階以上の呼び名がある。ジュースを飲む段階の実はウチュブ、ココナッツ・ミルクを作るコプラの取れる完熟した実はムラウ、その一歩手前がマナウだ。このレシピでは、ウチュブマナウを使っている。作り方はいたって簡単、ウチュブは割ってジュースを取り分け、まだ柔らかい果肉と殻の茶色い部分も削り取る。マナウも同様に果肉を削り取り、両方の果肉を合わせて取り分けてあったジュースと混ぜる。好みでココヤシ・シロップかサトウキビ・ジュースを加えても良い。上写真左はウチュブを削っているところ、右はココヤシ・シロップ(ヤップ語でリッチ)を加えているところ。

ハイビスカス・ティー
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おなかが一杯になったら、やっぱりお茶でしょう(笑)。ブースの一角では、オオハマボウ(ヤップ語でガル)の木の、外皮を剥いた幹を薄くスライスしたものを煎じたお茶を、冷たく冷やして出していた。作り方はいたって簡単。上記の材料と水をヤカンに入れて、赤く色づくまで煎じるだけ。オオハマボウはハイビスカスの仲間で、幹はカラフルな腰蓑の材料にもなるし、花や幹は伝統薬としても多用されている。

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by suyap | 2007-03-04 22:41 | ヤップの伝統食
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