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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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マングローブの根元を潜る

マングローブの根元を潜る_a0043520_18154460.jpgマングローブに覆われた小島、タラン島でスノーケリングした。

ここはコロニアのすぐ目の前だから、内湾環境バッチリ、水面はいつも静かで、初心者でも安心して楽しめる。右(上)の写真は、マングローブの途切れた船着場の下で撮ったもの。ちょうど満潮だったので透明度もまずまず、光がよく差しこんでいて綺麗だった。

マングローブの根元を潜る_a0043520_1814515.jpgヤエヤマヒルギ(ヤップでは4種発見されている)が、岩の間から目を出していた。水が澄んでて解りにくいけど、これも水中から撮ったものです。葉のてっぺんに水面があり、それが鏡のように下の岩を映し出しているの、わかるかなあ...

ヤエヤマヒルギは、花が咲たあとに細長い実をつける。ただこれは普通の「実」じゃなくて、「胎生種子」といい、受粉したらすぐ、木にぶら下がっているうちに担根体(たんこんたい)という根の元になるものを長く伸ばしておくのだそうだ。それがやがてストンと落ちて、うまく湿地や水底にたどり着けば、このように、すぐに根付いて葉が出てくる。

ところで、あの群れてたサカナは何だろう...ボラの仔にしてはちょっと雰囲気が違うぞ、と思って拡大して調べてみたら、どうもパシフィック・ターポン(Megalops cyprinoides、標準和名はイセゴイ)みたい。

マングローブの根元を潜る_a0043520_18163367.jpgささっと泳ぎ去っていった群れを流し撮りしたので、あんまり良い出来ではないけど、ほら→このとおり、体長は10センチから15センチどまりという感じだった。

パシフィック・ターポンは、ルアー・フィッシングでは人気があるサカナだ。成長すると1m以上になるというが、ヤップで見るのはせいぜい数十センチどまり。コロニアの橋の上からでも釣ることができるけど、マングローブの近くに行けば、ほら、こんなにたくさん(笑)。

マングローブの根元を潜る_a0043520_18175232.jpg同じく桟橋下のゴロタ石の陰では、ホソスジマンジュウイシモチが、ひっそり控えていた。このサカナは、マンジュウイシモチと2人(笑)だけで1属(Sphaeramia)をなしている。

観賞魚としても人気のあるマンジュウイシモチに負けず劣らず、よく見ると腹ビレにも凝ったデザインがあってなかなかシックなサカナなのに、なぜかあまり騒いでもらえない。なにごとにつけても、控え目な性格のせいだろうか(笑)

マングローブの根元を潜る_a0043520_18183484.jpgさて、マングローブの生い茂るほうに行って、その気根の間に首をつっこんでみると、いましたいました、テッポウウオ。写真はマングローブ(ヤエヤマヒルギ)の根っこの間を泳ぐテッポウウオ、1匹だけです。上方のは実物が水面に反射したもの。

名前のとおり、水面直下から、飛んでいる虫を水鉄砲で撃ち落として食べることもある。だから、水面すれすれに隠れやすいように、背中がフラットになっているのだと思う。とはいっても、テッポウウオにしたって、鉄砲を撃つのは相当なエネルギーのいる作業らしく、ふつうは水面すれすれを飛んでいる虫に、水中から飛び上がってパクつくのだそうだ。

ところで、わたしはテッポウウオに何度も「撃たれた」経験がある、それもお尻を(笑)。
夜間、床板に隙間のある水上に張り出したテラスのようなところに座っていると、たぶん床板の隙間から漏れた明かりに、空中を飛ぶ虫が照らしだされるのだろう、それをめがけてピュっとやるらしい。それが隙間を通り抜けて、座っているわたしのお尻に命中するというわけだ。テッポウウオの仕業だとわかるまで、「誰が水をかけてるんだろう」とまわりを見回したものだ。

マングローブの根元を潜る_a0043520_18191320.jpg砂混じりの泥底に目を向けると、綺麗で大きめなハゼが、(たぶん)モンツキテッポウエビと共生していた。ところで、このハゼの名前をどう呼んだらいいのか、わたしはいつも戸惑うのだ。

ニホンの魚類図鑑では、これに似たハゼは必ずオイランハゼ(Singapore prawn-goby)Cryptocentrus singapurensis (Herre,1936 )となっているし、インターネットで検索してもオイランハゼしか出てこない。ところが、ミクロネシアの魚類図鑑の権威(笑)Robert F.MyersサンのMicronesian Reef Fishesでは、Pink-speckled shrimpgoby(ピンクスペックルド・シュリンプゴビー)Cryptocentrus leptocephalus Bleeker, 1876となっているのだ。

さらにネットのお魚図鑑FishBaseでは、Singapore prawn-gobyPink-speckled shrimpgobyが別々のサカナとして出てて、両方ともMyersサンの図鑑を参照にしたとなっている。実はMicronesian Reef Fishesには1991年版と1994年版があって、1994年版では、Singapore prawn-gobyのほうが消えて、2つの写真が両方ともPink-speckled shrimpgobyになっている。いま1991年版がわたしの手元にないので比較できないけど、おそらくMyersサンも学会も、2種がシノニム(異名同種)かどうかで揺れている(いた)ということだろう。

(追記)
人にくれてやってた1991年版のMicronesian Reef Fishesを取り返してきて(笑)、調べてみた。それでわかったのは、図版には入ってないけど、解説の部分で白黒の写真入りでオイランハゼ(Cryptocentrus singapurensis)が紹介されていて、分布がシンガポール、八重山諸島、そしてパラオとなっていた。それなのに、1994年版ではオイランハゼのことは図版でも解説でも触れてない。これはいったい...?

のちのちこんな「発見」もできたりするから、やっぱり古い図鑑でも大事に取っておくべきですね^^


ところで、パラオの「お魚博士」サザンマリンダイバーズのぢろーさんは、「C. leptocephalus とのシノニム等の問題もあるがそれは現在検討中」としている。彼のオイランハゼの解説をもう少し引用させてもらおう。
このハゼは共生するエビに餌を運ぶという非常に興味深い行動を行う。
この行動に付いては2004年魚類学会にて発表された。
全ての生物において他種の生物に対する自らの意思による
明らかな給餌行動は非常に珍しく、共生関係の新たな知見となった!
また、写真の様に時折巣上でホバーリングを伴ったディスプレイを
行うのもこの種の最大の特徴。
この行動も他のハゼのホバーリングとは違った特異的な行動で、
この種の誇示行動と考えられ大変興味深い。
うわーお、ますます、このサカナに興味を覚えてくるよね。ヤップのマングローブの近くの砂泥地にもたくさんいるから、じっくり観察してみよう。

マングローブの根元を潜る_a0043520_18194988.jpg最後はこれ、もしかしてミナミコブヌメリ(Diplogrammus goramensis Bleeker,1858)?
上のオイランハゼだかピンクスペックルド・シュリンプゴビーだかを見てるとき、目の端で動く奴がいたので見つけた。

追いかけると、近くに転がってた半ば腐った潅木の切れ端の下に逃げこもうとして、そこにも、もう一匹、少し小さめな個体がいた。写真は、その小さめな方です。

マングローブの根元を潜る_a0043520_8355389.jpg(追記)
※左の写真も上と同じ個体です。
クツワハゼ属のハゼでは?というコメントをいただいたので、「ぎゃ~、ハゼとネズッポを間違えるとは!」と真っ青になって、東海大学出版会「日本産魚類生態大図鑑」、山渓「日本の海水魚」、そして久々に、今上天皇がハゼ類の解説のほとんどをご担当された東海大学出版会「日本産魚類大図鑑(図版)」(1984年初版どぇーす)を引っ張り出してみた。

たしかに...カザリハゼ(Istigobius omatus)、もしくはホシカザリハゼ(Istibobius decoratus)にボディのデザインは近いかも、ですが、真上から見るとかなり扁平で、ともかくネズッポ歩きしてたんだから!(笑)

で、ほんとうはコブヌメリ(Diplogrammus xenicus)♀のほうにもっと似てると思うんだけど、どの図鑑にも分布が「沖縄島まで」となっているので、ヤップにいるかどうか自信がなかった。それで、より南方系のミナミコブヌメリ(D. goramensis)?としてみたわけなのだ。

この件、さらなるアドバイス&ご教示ヨロシク!

(追記の追記)
ということで、やっぱりカザリハゼ(Istigobius ornatus)でした^^
あのネズッポ歩きと扁平なボディを確信したわたしの目は節穴か(汗)
こんどニホンに行ったら、平凡社刊「日本のハゼ」をゲットしてこよう。


いや~、面白いですねー。こうしてド素人のくせに、サカナの身元調査のマネゴトしてると、けっこう時間を忘れてハマルもんです^^


わたしはスノーケリングもスクーバ・ダイビングも両方大好きだ。そのどちらも「海を楽しむ」という目的のための「手段」だから、その時々の目的に応じて手段を選べば良い。今回はスノーケリングだったので、いくら水深1m未満とはいえ、水底の小さい生物たちを写真に収めるのは、なかなか大変だった。「ああ、スクーバがあったらなあ」と思うのは、こんなときだ。

スクーバ・ダイビングという手段が目的化しちゃって、初期の講習を終えたばかりなのに、「もうダイビングはやったから」と飽きてしまう人や、スノーケリングもしたことがないダイバーが多いのをみると悲しくて、ますます声を大にして、「ねえねえ、いろんなやりかたで、もっと海を楽しもうよ」と言いたくなる。安全で楽しい「海とのつき合い方」は、年齢や身体の状態や目的にあわせていろいろ選べるし、「海の中って、オモシロイね」と感動するセンスがあれば、誰だって、それぞれのやり方で気軽に海とおつきあいできるものなのだから。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2007-02-10 23:06 | ヤップの自然・海
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