クリスマス前としては珍しく風も穏やかな一日、空にはアイスクリームのような雲が浮かび、海もまったりと静まっていた。
タロイモなどの伝統食を離れて、調理が簡単な米食を好む人が増えていると
前回のエントリーで書いたが、右の写真がミクロネシアで最もポピュラーな、カリフォルニアの(たぶん日系)精米会社が出している
CALROSEブランドだ。
ヤップで売られているCALROSEには
黄袋(Pacific Pride)と
白袋(特選〇小町とか書いてある)があって、わたしが普段買うのは黄袋、5ポンド(2.26キロ)$2.65(ニホン的に換算するとキロ140円以下)のものだ。50ポンドの大袋だと値段は$20.00前後(キロ105円以下)、大家族のヤップ人はもっぱらこっちを買っている。一方、白袋の値段はこの2倍くらいするので、買うのはおそらくわずかばかりの在住ニホン人がだけであろう。
多くのニホン人が外地でいだく「米の飯がまずい」という感想を、わたしもヤップに来た当初は持っていた。奮発してCALROSE特選白袋を買っても、どうしても「内地のご飯」の味にはならない。レストランやローカルのご飯も、やはりなにか「臭う」...
そんなある日の朝、自宅でぼんやりコーヒーを飲んでいたとき、前日に買ってきた米袋がテーブルに乗ってて、読むともなく袋のサイドに記載してある小さな文字を追っていくと、
This rice is polished and coated with glucose. Do not rinse before cooking.
(この米は精米してグルコースでコーティングしてありますので、洗わないで調理してください)
どひゃーっ!
グルコースって砂糖の仲間でしょっ。そんなんでコーティングされてたら、常温28度湿度80%以上もあるヤップのようなところでは、すぐにカビが沸くではないかー!
↑これが現在のパッケージの裏面。以前は袋のサイドに小さく書いてあったのに、今では堂々の裏位置を占めている。グルコース云々が無くなったのは、何か意味があるのか?グルコース・コーティングを止めたのかな?
ニホンに生まれ育った人間(わたしの年代以上のオンナであれば)なら、米を買っても、いちいち「炊き方」のインストラクションを読むことはないだろうが、もともと米食の習慣がなかったヤップ人の中には、こうして書いてあったら、つい読んで真に受けてしまう人も多いのではないだろうか?
わたしも学校の家庭科では、「米を研ぎ過ぎないように」とは習った。でもそれは、精米してあまり時間の経ってない保存状態の良い米が、いつでも手に入るニホンのような場所での話だ。カリフォルニアの精米所を出荷されて、長いこと港湾の倉庫に保存され、どんぶらこっこと太平洋を渡り、あちこちの港で時間を食い、ヤップにたどり着いても港湾や店の倉庫に長いこと置かれ、やっと店頭に並んで、ようやく消費者の手に入り、ヤップの常温・常湿にさらされれば、米袋の封を切って一ヶ月もしないうちに、米の表面にはうっすらカビが生えるのだ。表面にグルコースがまぶしてあれば、なおさらのこと...
パッケージのインストラクションを読んで驚いて以後、わたしは米を買ったらすぐに冷蔵庫で保存し、鬼のように研ぎあげて炊くようになった。すると、あら不思議!ニホンで食べる米と遜色ないお味になったではないか(笑)。同様に高い白袋でも試してみると、わたしには黄袋との味の違いがまったく感じられなかったので、もっぱら安い黄袋に徹している。(白袋のほうが米粒がそろっているので、おそらく屑米の混入率が違うのではないか?)
もともと味には定評のあるカリフォルニア米だから、よく研げば表面の酸化した部分が削れて美味しい味が戻ってくるのだろう。黄袋の表にも書いてある通りENRICHED、すなわちビタミン強化米なわけだが、わたしは、白米はもともと「米」という穀物の(言葉は悪いが)カスだと思って食べているから、下手に人工的な手を加えてくれなくて良い。白米で取れない栄養は、ちゃんとオカズで補うようにする、そういう栄養指導こそ、大切なのである。
ヤップの玄米とわたしが思っている「
ラック芋」が、「白米」にそのまま取って変わられたことが、ヤップ人の食生活に悲劇をもたらしている。昔は「イモとサカナ」を食べていれば、ほぼ完全栄養食だったのに、「白米と缶詰」では、ビタミンもミネラルも繊維も足らず、身体はバランスを崩す。その違いを多くのヤップ人に気づいてもらえるように、スタッフや友人には「イモとサカナのほうが、ええよー」と事あるごとに言いつづけているのである。
ヤップ州立病院でも「伝統食見直し」のプログラムを組んだりして啓蒙に努めており、また成人病の増加で一般ヤップ人の食への関心も高まりつつあって、徐々にではあるが、食生活の大事さに関心を寄せるヤップ人も増えていると思う。
(注)
精米技術が発達する前のニホンでは、「銀シャリ」といても今のように白い米ではなかったようだ。だから、今のニホン人が「伝統食」に回帰するとしたら、まず分搗き米からスタートするのが良いのではないかと思っている。玄米のように食べにくくはなく、味わいがあって、美味しいよ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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