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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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オニヒトデ対策

オニヒトデ対策_a0043520_4554914.jpgこのところ西風が続いていて、ヤップ島の東側のリーフが絶好のコンディションになっている。そのかわりヤップ・カバーンズから西のダイブ・サイト(ポイント)は波が高く潜れない。「マンタは見飽きた。明度が良くてサンゴのきれいなところで、のんびりリーフ・ダイビングを楽しみたい」というお客様のリクエストで毎日リーフ・ダイビングが続いているけど、さあ困った!2年前の台風以後、ヤップの東側でサンゴがよく発達していたリーフ(サンゴ礁)は、いまオニヒトデの食害にあってボロボロ状態のところが多いのだ。

オニヒトデ対策_a0043520_4562620.jpgオニヒトデというのはウニやナマコと同じ棘皮動物の仲間で、写真のように全身がトゲに覆われた直径60cm位にもなる大型のヒトデだ。腕の数は8本から21本となぜか一定ではなく、成長すると主にサンゴを食べて生活するようになる。写真の矢印が指す白くなった部分が、オニヒトデに食べられて骨格だけになってしまったサンゴ。すでにサンゴ虫は(食べられて)いないので、やがてこの部分には藻がついて黒っぽくなっていく。

オニヒトデが好んで食べるサンゴは、ミドリイシの仲間やコモンサンゴ類といった比較的成長の速いサンゴだ。とくにミドリイシはテーブル状や枝状など形状も目立ちやすく、ピンク、ブルー、パープル、グリーンなどカラフルなものが多いから、これらがやられてしまうと、リーフはずいぶん荒れた感じになり見劣りがする。

オニヒトデ対策_a0043520_4565783.jpgオニヒトデがサンゴに食べるときは、腹側(下になっている方)にある口から胃を出して、これがサンゴに押しつけられて消化・吸収してしまう。胃は複雑な形のサンゴにも入りこめるので、このヒトデが覆いかぶさった部分は真っ白な骨格だけしか残らないのだ。

オニヒトデ対策_a0043520_4573221.jpgところで、このオ二ヒトデは生まれてしばらくの間は浮遊生活者で、植物性プランクトンを食べているらしい。その後、着底してからも6ヶ月くらいはサンゴモなどの石灰藻を食べる。その間はサンゴの餌にもなるらしい。だからサンゴが元気なところではオニヒトデは少ない。

オニヒトデ対策_a0043520_4581192.jpgなんらかの事情でサンゴが減少すると、サンゴに食べられることなく成長したオニヒトデが増えるので、大発生するという説もある。ヤップの場合は台風→壊れたサンゴ→オニヒトデ大発生というメカニズムが考えられる。また最近の開発で大量の土砂が雨のたびに海に流れ込み、サンゴを窒息させていることもサンゴが弱って死んでしまう原因ともなっている。

オニヒトデ対策_a0043520_4583735.jpg沖縄などでは(環境省の機関なども率先して)オニヒトデ退治を大々的にキャンペーンしているらしい。しかし、オニヒトデを人為的に退治することには賛否両論がある。

反対論の言い分はだいたいこんな感じ。わたしも概ねこれに賛同している。
人間が気づくずっと前からサンゴとオニヒトデの食ったり食われたりの関係があって自然環境が保たれていたのだから、人間のエゴで(観光目的などで)片方の生物を退治すべきではない。不注意で散発的なオニヒトデ退治は自然のメカニズムを狂わせ、かえってオニヒトデの大量発生を恒常化する。オニヒトデの大発生を招く人為的な環境改変(土地を削ったり、有害な化学物質を海に流したり)を放って置いて、その結果であるオニヒトデだけを退治しても、何の効果も得られないだろう。
上に掲載した3つの写真のように、オニヒトデはひとつのサンゴのコロニー(同一のサンゴが集まって住んでいるところ)を徹底的に食い尽くしたりしない。それに彼らが好きなのはミドリイシやコモンサンゴなど、比較的成長が速く「サンゴ礁」を造らないサンゴだ。これらが増えすぎると、かえってサンゴ礁の発達が阻害されるのかもしれない。

それにしても、潜っていてサンゴを食い散らしているオニヒトデをたくさん目にするのは悲しいことだ。最近のように風向きのせいで潜る場所にあまり選択の余地がない場合は特にそうだ。なんとなくお客様とヒトデ退治モードになってしまって、オニヒトデをナイフでグサグサにつき潰すようなこともやってみたり...オニヒトデはへたに切り刻むと個体が増えて再生するというから、殺すなら徹底的に内臓と生殖腺を破壊しなければならない。「海の生物には触らない。危害を加えない」なんて言ってて、オニヒトデだけは別っていうのも、やりきれないな~。それに食べるでもなく「行為の意味に自信のない殺生」は心をゆがめる。とかいっても、「行為の意味に自信のある殺生」なんてのがあったら恐いけど。

ところでオニヒトデはすごく打たれ強い奴なのだ。内臓をぐちゃぐちゃにされても、まだ触手を動かして何とか生き延びようとする。それに普通これだけ美味しそうな内臓が撒き散らされたら、他のサカナが寄ってきてパクつきそうなものだけど、このヒトデの内臓にはベラもハタも寄ってこない。ちょっと食べてみても、すぐプッと吐き出している。そうかー、オニヒトデの肝は多くのサカナにも嫌われるほどまずいのかー...もしオニヒトデが美味しくて(人間の)食用になるのなら、話はずいぶん違ってくるだろうな、と思った。「オニヒトデ禁漁期」とかあったりして(笑)。

(いまヤップでオニヒトデが元気バリバリなポイント)
サンライズ・リーフ、ワニヤン・リーフ

(すでに食べ終わって落ち着いたポイント=これからサンゴの再生に向かう=I hope!)
チョール・リーフ、ガポウ・リーフ、サマカイ・ポイントから東南にかけてのリーフ

(これから心配な場所)
ミル・チャネルやゴフヌー・チャネルの中。水通しが良いので大丈夫だろうという意見もある。水路の中は1998年の世界的な白化には弱かったが...


◆8月22日20時50分現在のヤップ気象データ
天候: 曇
風向: 西
風力: 8ノット
気圧: 1010hPa
湿度: 84%
気温: 28.6℃
過去24時間の最高気温: 31.7℃
過去24時間の最低気温: 23.3℃
(注)「天候」「気温」に関しては、観測時間によってデータに大きく差がでます。一般的に夜は雲が多く気温も低いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2006-08-22 23:49 | ヤップのオニヒトデ
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