
台風04W(Ewiniar)は、
Joint Typhoon Warning Centerの情報によると、着々と沖縄に向かっているみたい。ヤップでは嵐のさなかにはほとんど雨も降らなかったのに(これはけっこう助かった)、今日はしとしと雨の一日となった。ところで、きのう書ききれなかった台風04W(Ewiniar)とヤップ州漁業公社YFAに陸揚げしてあるうちのボートのことなんだけど、左の写真のとおり、なんと!YFA所有の漁船Marwelが体を張って守ってくれていた。写真の右端に見えるボトム・アップしたボートがうちの船。右上の大破した潮汐観測所は、漁船Marwelが波で持ち上げられて叩いて壊したもの。
就航して11年が経過したので、船底を補強して内装も変えてなんて考えて陸揚げしたのだけど、なんせ腕の良いファイバー・グラス職人を確保するのは至難の業、おまけにこちとら日々の営業活動もあるし、日に日を重ねてわたしの最大の頭痛の種になっていた。何もしないのにYFAへの「ランプ使用料」は払わなきゃならないし・・・それでも、ネイチャーズウエイの初代のボート、なんとしてでも再び海に浮かべてあげたい、そんな思いでけっこうなお金をこれまでかけてきた。それで、このシーン。

Marwelというのはヤップ語で「労働」という意味でカタカナにすると、マルウェルって感じになる。マルウェル、ありがとう。わがボート(通称ビッグ・ボート)頑張れ!もしこのマルウェルがここにいなかったら、うちのビッグは桟橋に打ち上げる波と横から吹きつける突風に持ち上げられて、ひとたまりもなく流され打ちつけられてボロボロになっていたことだろう。
ビッグを陸揚げする場所をさがしていたとき、YFAのランプにはかなり躊躇した。というのは、ひとたび大きな嵐がくると、この状況は避けられないのがわかっていたからだ。海に浮かんでいる船は、時化る前に避難させるのは簡単だ。しかし、陸揚げした船はトレーラーがないと動かせない。それにうちにはビッグを乗せられる大型トレーラーがないので、いざというとき間にあわないし、嵐の最中にトレーラーに乗せておくのはもっと危険(底が上がっているので風に吹き飛ばされやすい)なので、移動した後にどこか安全な場所に降ろさなくちゃならない。なんだかんだで、大きな嵐が来たときにはあきらめなきゃならない状況を引き受けた上で、ここを選んだのだった。そして作業が遅延に遅延を重ねて・・・
だから、YFA関係者にはたいへん申し訳ないが、今回のマルウェル君の働きにはほんとうに感謝している。これもビッグが持って生まれた強運なのか?それでも万一マルウェグが大波で桟橋に打ちあがって大破してしまえば、ビッグも運命を共にしなけりゃならないので、風と波が落ちつくまで、わたしは片時も離れず見守っていてやりたかった。頑張れマルウェル、頑張れビッグ、「お母さん(わたし)は、〇〇さんの薦めに従っておまえを見限って処分してしまおうかとも思い始めてたけど、おまえがこの嵐を生き残ったら、どんなにお金をかけても再び海に浮かべてあげるからね・・・」なんて心で話してた。

それで、このマルウェル君、ただいま現在YFAに最後に残された船なのだ。2年前のスーパー台風Sudalのとき、JICA/OFCFからもらった3隻の漁船が見事に沈しちゃったから。
その沈した理由が、誰も船を避難させなかった、っていうのだから、今回の嵐に体を張ってうちのボートを守ってくれてるマルウェルを見たとき、「またかよ~」って思ったわけ。それでもYFAのドックには、暴風の中を波しぶきでずぶぬれになりながらヤップ人のスタッフが何人も打つ手もなくたたずんでいた。それに飛びそうなトタン屋根をくくったり、陸上でできることはちゃんとやってたから、何もしてなかったわけじゃない。情報不足(情報収集への努力不足)で初動が遅れただけ。
わたし: どうしてマルウェルを避難させなかったの?
スタッフ: だって、ディザースター・コントロール(ヤップ州政府の危機管理機構)が何も発表しなかったんだもの。気がついたら、もう動かせる状態じゃなかったんだよ。
わたし: でも、インターネットで熱低の情報は入手できたでしょう?
スタッフ: オレたち、そんなの見やしないよ。政府が情報をくれるべきだ。ラジオで流すべきだ。
(注)今回の嵐はほんとうに急接近だったので、ヤップ州政府の対応を責めるのはちょっと酷。海を職場にするものは、自力で情報収集できる環境にあるのだから。
わたし: あんたのボスの日本人は?彼らならインターネット見てるはずだよ。
スタッフ: ああ、ひとりは日本に出張中だし、もうひとりはねえ、、、(苦笑)
わたし: そのYFAのオフィスで一番エライさんの部屋を使っている日本人は、今日は来てないの?
スタッフ: ああ、土曜日だからね。それに遠いところに住んでるし(また苦笑)
という訳で、運悪く(良く?)日本出張中だったひとりのOFCF専門家は、帰島して満身痩躯のマルウェル君に対面して唖然とするだろうし、「もうひとり」の専門家は、3日の月曜日に「仕事」にやってきて、これをどう見るのだろうか?この方はコロニアから車で30分もかかる「海辺の素晴らしい借家」に住んでおられるようだが、わたしを含めて海を仕事場にしている者にとって、緊急時に職場=海に駆けつけられない、というのは最大のネックである。とはいっても、彼の場所は今回の嵐では何の影響もなかったろうし(水は多少上がったかもしれないが)、所詮は旅人、たいした家財道具もないだろうし、わたしだって自分の家のことは放ったらかしで(いま住んでるのはスーパー台風Sudalのときには屋根ごと吹っ飛んだ家だ)駈けずりまわっていたのに、道路だって早く動けば完璧に通じてたし・・・と、まったくハテナのマークがわたしの頭の中を飛び回ってしまったのだった。
ところで、このOFCFというのは、
海外漁業協力財団という財団で、次のような目的をもって活動している。
以下、海外漁業協力財団のホームページより。下線はわたしが引いた。
海外漁業協力財団(OFCF:Overseas Fishery Cooperation Foundation)は、海外の地域における水産業の開発、振興及び国際的な資源管理等に資する経済協力または技術協力を実施するとともに、我が国海外漁場及び漁船の安全操業の確保を図り、我が国漁業の安定的な発展に資することを目的として1973年6月に設立されました。
でも、この組織、ほんとうは下線部分がメインの目的なんだよね。それをこう書き換えてもいいかも。
「我が国海外漁場及び漁船の安全操業
並びに利権の確保を図り、我が国漁業
及び本財団に協賛する漁業関連企業の安定的な発展に資することを目的」
ホームページからは明らかにならないが、財源のかなりの部分は大手の漁業会社各社からの寄付によっている。それに官庁からの天下り・・・
財団法人海外漁業協力財団 役員名簿には、水産庁長官を筆頭に、そうそうたる役人が名を連ねる。あとの理事も、たどって行けば民間漁業会社に行きつくはずだ。そして、海外に派遣される専門家の多くは(といっても全員ではない、中にはほんとうに専門職で頑張っている人もいるから)、それほど高くない公官庁のリタイヤ組(笑)。いいよね~、ヤップのことを何も知らなくても、海辺の別荘に住めて、いちおう現地政府からは優遇されて・・・
もともとYFAというのはJICA/OFCFの無償援助で出来たものなんだけど、日本人の専門家が居なくなる=日本からの援助を引き出せない=ヤップ州のお荷物=破産状態、を繰り返している。2年前の漁船の沈はそのさなかに起きたこと。だけど、今回は(ひとりは出張中にしても)まがりなりにも日本人のマネージメントがひとりは居たのだから・・・それとも、新たしく寄贈する船をいま日本で建造中なので、このお荷物になっているマルウェグ君を処分してしまいたかったんで渡りに船で放っておいたのかしら?
◆ヤップの旅の情報はこちらでどうぞ
http://www.naturesway.fm/index2.html
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