ブログトップ | ログイン

ミクロネシアの小さな島・ヤップより

suyap.exblog.jp

戦跡の泥棒-その弐

天候: 少し雲のある晴
風向: 東
風力: 7ノット
気圧: 1008hPa
湿度: 71%
気温: 29.9℃
過去24時間の最高気温: ℃
過去24時間の最低気温: ℃
(5月29日午後4時56分現在のヤップ気象データ)
(注)「天候」「気温」に関しては、観測時間によってデータに大きく差がでます。一般的に夜は雲が多く気温も低いです。

戦跡の泥棒-その弐_a0043520_011978.jpg昨日の投稿で報告した一式陸上攻撃機のランディングギアに残っていたプレートが盗まれた件で、早速昔の写真を届けてくれた人がいた。オリジナルは1.3MGとデカイので、かろうじてわずかな文字が読み取れる。確率はとてつもなく低いだろうけど、万が一ネットオークションなどで似たようなものを発見したら、すぐにご連絡ください。ヤップ州ではこれら戦跡の残骸も(たとえひとかけのスクラップでも)州の財産となっていて、無許可の持ち出し行為はもちろん罪に問われる。

戦跡の泥棒-その弐_a0043520_0204511.jpg昨日も掲載したけど、これが今の状態。プレートは鋭利な刃物で丁寧に切り取られていて、4隅の鋲はしっかり残っているので、ちゃんと道具を用意した計画的な犯行であるのは明らかだ。わたしが心配するのは地元の人間の関与である。いくら肝のすわった泥棒でも、外国人がひとりで(あるいは複数で)ヤップの村に入り込むにはかなりの勇気を要するだろうから、だれか地元の人間を抱きこんではいないだろうか?もちろん多くのヤップの人には戦跡の残骸はただのクズにしか見えないし、こんなクズの破片が高く売れるなんて誰も想像できないから、考えの浅い奴ならちょっと大目のチップ程度でホイホイ手伝ったりするのがいてもおかしくない。

わたしが初めて沖縄の離島を旅したとき(もちろん大昔ですー笑)、泊まった民宿のおじさんが生きたクモガイやスイジガイ・タカラガイなどをたくさん取ってきては庭で処理し(砂に埋めたり軒につるして貝を変色させないように身を取りだすには技術がいる)、それを気前よく宿泊客に持ち帰らせているのを見たことがある。おじさんとしては単純にお客を喜ばせようとしてやった行為だったのだけど、たくさんのおじさんやおばさんが同じことをした結果、沖縄の貝は激減した。そして世界中の海で同じようなことが起きた経験の反省から、いまのダイバーは「海で撮るのは写真だけ。モノは一切取ってこない」ことを、最初のトレーニングのときから教わっている(ハズだ)。

どこの地域でも、「観光」というものが入ってくると、地元の過剰なサービスや対応によるアンバランスが起きやすい。それをできるだけ最小限にするためには、既に「観光」というものの持つ両刃の刃の怖さを知っているものが、根気よく地元に働きかけていくしかない。地元の無知を良いことに、自分や自己の属する側のみを利する行為を押しつけたりやらせたりなど、間違ってもやってはならない。

このような泥棒行為をする発想は、週刊文春に勝手に撮ったヤップの写真とデタラメな情報を売ったりするような程度の低いカメラマンを招聘したり、ヤップ人を馬鹿にしたヤラセ番組をつくるようなテレビ屋を呼びこんだりするのと、実は同じルーツから起きるのだ。要するにこれらは、地元に属さない人間だからこそできる発想であり行為だからね。

そこのところがわからないと、そういう奴らは自分は良いことをしていると勘違いしているかもしれない。いわく、「このまま放っておけば、このプレートも朽ち果てるだけじゃないか。だから自分が保存してあげるんだ」とか、「このままヤップが地味な観光に埋もれるよりも、少々嘘でも名前を売ったほうが儲かって雇用の口も広がるのだから、自分はヤップのためになることをしているんだ」とかね。

こういう連中に、わたしは、「じゃ、あんたはいったい何なのさ」と言いたい。ヤップで普通に暮らすヤップ人は、わたしたちに観光開発をしてくれと頼んできているわけじゃない。どっちかっていうと、見も知らない人間がワサワサと自分のテリトリーに入ってくるのは、うざったいものなのだ。まるで動物園の動物になった心境よね。そういう地元の感情を真摯に感じて、相手の尊厳を守りながら、観光と暮らしに折り合いをつけていくように手伝うのが、われわれヨソモノの務めであると思う。

人はお互いが目指すもので引きつけあうものだから、もしヤップをクウォリティの高いディスティネーションにしようと思ったら、われわれオペレーターもクウォリティーを高めるような努力をしなけりゃね。どっかの馬鹿な宰相のような子供だましのキャッチコピーだけで明け暮れてると、結局その程度の集客しかできなくて、ヤップの観光地としての質もどんどん落ちていくのだよ。そんなこんなを日々考えながら、まわりの(日本人)同業者から「文句たれ婆」と陰口たたかれても、わたしは今日も元気いっぱいに一言申しているわけなのだ。


戦跡の泥棒



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
よろしかったら人気ブログランキング地域情報 & にほんブログ村海外生活ブログにクリックを!



◆◇ヤップの情報はこちらでもどうぞ◇◆
http://www.naturesway.fm/index2.html
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
by suyap | 2006-05-29 20:11 | ヤップと戦争
<< オオオカガニな日々 戦跡の泥棒 >>