天候: 薄曇
風向: 東北東
風力: 8ノット
気圧: 1010hPa
湿度: 78%
気温: 27.9℃
過去24時間の最高気温: 31.7℃
過去24時間の最低気温: 21.7℃
(3月30日午前6時57分現在のヤップ気象データ)
このところ雲は多いけど雨は降らず、日中でも過ごしやすいお天気が続いている。わたしの身辺は、日本への旅を控えてやらなきゃならないことが山積みで、家に帰りゃ一時居候の友と話し込み、気がついたらまた3日もブログをさぼってた。でも彼女は明日の夕方、ヤップの離島へ出発するので、そしたらまた静かな夜と十分な時間が、I hope...(笑)。
それで、もっと早くに書こうと思っていたネタを、今朝は仕事の前に書いている。左の写真の船は、ヤップ州の離島のひとつファイス島近海で先週拿捕されてきた台湾船籍のマグロ延縄魚船だ。ミクロネシア連邦は、赤道の北・西太平洋に東西に伸びる広大な排他的経済水域を持っているが、その水域内で操業する外国船籍の漁船は、操業料を払って操業許可を取り、この国の規制に従って操業しなければならない。操業許可を受けた各船の位置は、アメリカの沿岸警備隊の協力により衛星を通して監視されていて、許可を受けない不審な船や、許可を受けていても「沿岸12海里」以内に入り込んだ船を見つけると、連邦政府や各州政府のパトロール船が速攻で拿捕に向かうシステムが出来上がっている。なんたって「排他的経済水域」というのは、この国の貴重なドル箱だし、「沿岸12海里」というのは、それぞれの島の住民の貴重な食料源だもの。
「沿岸12海里」というのは、200海里の排他的経済水域に対して、その国の実際的な「領海」ともいえて、その領海内に入る不審船は、当然各国沿岸警備隊(日本の場合は海上保安庁)によって監視・規制されるし、外国船の操業は禁止されている。「こん中で泳いでるサカナは、あたしたちのもんよ」という訳。ミクロネシア連邦や、とくにヤップ州のように、たくさんの小さな島が点在する地域では、とにかくちょっとでも水面に顔を出してる「島」は領土だから、そのまわりの12海里は領海だ。
ヤップ州の場合はもっとすごくて、大昔に
シピンという島だったのが一夜で沈んだという伝説から、今では海図上でハンターバンクという浅瀬(といっても瀬の一番浅いところでも水深は20m以上)になっている場所も、「伝統的な領土」と主張してるから、海面にチョンと顔を出して今にも波に洗われて消え去りそうだった南鳥島をコンクリートで固めつつ拡張して領土を守ろうとしている日本の努力なんか、「肝っ玉のお小さいこと」と笑えちゃう。でも、国際法上では海面下に没した陸地は領土とは言えないから、誰かが本気で裁判で争えば、ヤップ州の言い分は非常に弱いのも事実。
実は7~8年前にうっかりハンターバンクで操業してた日本の巻き網魚船が拿捕されてきて、たまたまその夜遅くまで警察に近い仕事場にいたわたしも、接岸後オリに収監されていく船長に「黙秘権があります、弁護士を雇う権利があります、云々」の条項を通訳する要員として警察に召しだされたのだけど、まだ年若い船長は「お泊りセット」をちゃんと用意してきていて、すんなりオリにお引越しになった。そして拿捕の数日後には、その漁船が所属する会社の重役が5千万円以上の保釈金を抱えてヤップに飛んできて、チョン。後で聞いた話では、裁判で対抗して争えば勝てるかもしれないけど、その間、何ヶ月も船も乗組員もヤップ州に留め置かれたままになり、そのロスを考えれば、5千万円なんか、チョロいもの、なんだそうだ。
この事件が起きる前にたまたま、ある巻き網漁船の漁労長をしていた人と知りあっていて、彼から聞いた話では、「漁船で一番エライのはオレ、漁労長だあ。船長はよっ、ありゃ、拿捕されたときのためのオトリとして乗せとる。乗組員全員を取り調べられると口が割れるんで、船長が素直に人質になるんだ」そうだ。そして、この日本の巻き網船拿捕事件は、それを見事に証明してくれた。年の若い従順な船長、手際よいお泊りセットの用意、弁護士に関しては「会社の人間が来ますから国選弁護人は必要ありません」などなどとね。逆に取調べのオマワリの方が不憫に思って「オリの中は暑いから、船から扇風機を持ってきても良いよ。コンクリの臭い床しかないから、毛布を持ってきて良いよ」と言う始末。それも見事に固辞して、多少の英語はわかるはずなのに一言も余計な発言はせず、すんなりオリの中へ。まあ、そんな健気な船長は可愛いらしかったけど、わたしとしては、狙いのマグロやカツオだけじゃなく、カメやイルカやサメや、その他もろもろのバイキャッチ(ついでに取れるサカナ)まで取って殺して捨てている巻き網漁には大反対なので、「ヤップ州頑張れ、もっとふんだくってやれ」って心の中では応援してた。
でも実際にはスマートな日本の漁船はめったに引っかからなくて、おもに拿捕されちゃうのは、装備やバックアップの貧弱な中国や台湾の漁船が多い。なお悪いことに、彼らの多くは禁止されているサメ(フカヒレスープの素)を隠れて取っている。とくに今回拿捕された海域のファイス島住民は、ミクロネシアでも伝統的にサメを食べる人たちで、そこで船倉からフカヒレがたくさん見つかったから、州・連邦検察のご機嫌は、最高潮にナナメになっている模様だ。聞き及んだ話では、現在100万ドル(1億円以上)の保釈金を要求しているとか。そんな金は、こういう貧しい漁船とそのオーナー会社は払えないだろうなあ。この件、どういうような決着がつくだろう。
この船には、台湾人の船長と10人のインドネシア人クルーが乗っていて、現在は全員オリから出されて、ひとり1泊15ドルの契約で、ある商売人のパラオ人の家に寄宿を許されているとか。船はヤップ州漁業公社の桟橋に監視をつけて繋いである。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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