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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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ヤシ酒だあ

きのうヤシ酒のことにちょっと触れたけど、今日、たまたま訪れた村で少しだけ分けてもらうことができた。以前ガニール橋の電柱再建で書いたように、いまのヤップの人は台風のお陰でまだまだバブリーなので、手間のかかるヤシ酒を作る人はほんとうに少なくなった。だから、あらかじめ注文もしないでヤシ酒が手に入ったというのは、とってもラッキーといえる。

ヤシ酒だあ_a0043520_23505250.jpgヤシ酒作りのプロセスは、まず、ココヤシの花が受粉して結実すると木は実を大きくするために甘いジュースをせっせと送るようになるので、実のついている先を切って束ね、それを受ける容器を下に取りつける。容器はたいていコプラ(熟れたヤシの果肉)をとりのぞいたヤシ殻だけど、その容器に糖分をアルコールに変える酵母菌がついているので、決して洗ったりしないで同じものを使い続ける。

ヤシ酒だあ_a0043520_23445349.jpgココヤシの実は葉のつけ根あたりに房のようにまとまってつく。写真の右側の緑色しているのが、ヤシの実のベイビーたちだ。その左側は、それらの先を切ってまとめて、ヤシ殻の容器にジュースがうまく流れ込むようにしてある様子で、右上の写真の裏側だ。これらの写真は、以前背の低いヤシの木で作っているところを見かけたときに撮っておいたもの。今日のヤシ酒はもっと背の高い木で作っていたので、そこまで登っていって写真を撮るわけにはいかなかった。

さて、こうしておくと木はまだ実があると思っているから、どんどんジュースを送ってくる。なんだか木をだましてジュースを取ってくるようで申し訳ないけど(笑)。そして1日に最低2回、できたら3回、ヤシ殻の容器にたまったジュースを取りに登る。そのとき切り口をあらたに「切って」ジュースの出を良くしておくという作業もするので、取ってきたジュースのことも、モーニングカットとか、イブニングカットという風に呼ぶ。

取りたてのジュースにすぐに火を入れて(煮沸して)発酵を止めると、子供でも飲める甘い飲料になる。それをさらに煮詰めていくと、ヤシ蜜ができる。店に行けば甘い飲料やシロップが簡単に手に入るので、今でも作っている人はほとんどいないけど、ヤシ蜜はかつての大事な保存食のひとつだった。

ヤシ酒だあ_a0043520_23462479.jpgヤシ酒にするには、取ってきたジュースを常温で放っておくだけ。すると、ぶくぶくと発酵を続けて、どんどん酒になる。モーニングカットを午後から夕方に飲むと甘口のワイン程度。それを常温で翌朝まで置くと、甘みが消えて日本酒程度のアルコール度数になり、ちょっと臭みもでてくる。そして2日も放っておくと、完全に発酵を終えて酢になってしまうのだ。

ヤシ酒だあ_a0043520_2353182.jpgだから、ヤシ酒を入れる容器は完全に閉め切らないで、写真のようにヤシの葉かなんかでルーズに蓋をしておくだけ。密閉したら蓋が飛んでしまう。ちなみにこの一升瓶はお正月用にともらった日本酒(美味しかった!)のもので、ヤシ酒製作者に空瓶をあげようと持って行ったら、たまたま今朝取ってきたのがあったので、早速これに入れたもらったという訳。

ヤシ酒だあ_a0043520_23475930.jpg一緒にいたお客様にも少しお裾わけして家にかえり、さあてヤシ酒タイム。おっと、その前に写真を、と撮ったのがこれ。白濁しているけど、濁り酒よりサラッとしていて、いまはワインと日本酒の中間程度の度数かな?それでこれを書きながらチビチビやっていると、けっこう良い気分になってしまった。ちょっとここでお代わりをやめるのはムズカシイかも・・・という訳で、1杯だけ飲んで残りは酢にしてトウガラシ酢を作るという計画は、あえなく挫折してしまったのだった、ぐびっ。



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by suyap | 2006-02-11 23:56 | ヤップの伝統食
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