空には一日中うす雲がかかり陽が差すことはほとんどなかったけど、雨は降らず北東の貿易風が強かった。コロニアの日曜日は、東京でいうと千代田区大手町、ほとんどの商店も昼過ぎには閉まり、以後はほとんど人通りが途絶える。そんな人気のない桟橋のまわりで、ぼーっと海を見てるのが好きだ。ときどきカスミアジやロウニンアジの若魚がエサの小魚を追って岸壁をよじ登ったりする。サルも木から落ちるし、サカナは崖をよじのぼる(笑)。
さて今日とりあげるのは、日本でも園芸店なんかで普通に売られている観葉植物のクロトン。クロトンというのは実は学名で、ヤップ語ではガチュグ、日本語ではヘンヨウボクともいう、トウダイグサ科の潅木だ。「へんようぼく」と書いて文字変換するとき、「変容ボク」とでたので気がついたのだけど、もしかしたら、和名はこの木の葉が様々に「変容」するところからきたのかもしれない。
変容その1。ものの本では、クロトンの原産地はカロリン諸島だという。カロリン諸島というのは、西はパラオ東はマーシャルあたりまでの、赤道以北でグアム以南の間にある島々を指す。スペイン国王カルロス2世のバックアップを受けたマゼランらがこの地域を「発見」したので、「カルロスさんの島」ということになった。ちなみにマリアナ諸島というのは、皇后「マリア・アンナさんの島」という意味だ。
原産地がカロリン諸島ということは、クロトンのルーツは、ミクロネシアのそれもグアムやサイパンじゃなくて、パラオ・ヤップ・チューク・ポンペイ・マーシャルのあたりを超えた地域にはたどれない、ということだ。これはけっこう、すごいことだと思う。バナナやココナッツやタロイモでさえ原産地はどこかよその土地なのに、クロトンはそれらが人間と一緒にやって来るよりずーっとまえから、この辺の島々で生きていたのだ。
だからどうか、ともかくヤップでもクロトンは元気が良い。イキのいい枝をちょん切って土にさしておくと、簡単に根づいてくれる。そして放っておいてもグングン育つから、家や、村の小道の垣根に最適だ。でもこまめにトリミングしないで放っておくと、どんどん上に伸びていくので、下のほうがひょろりとした木になってしまう。
変容その2。これは「飛び葉」と呼ばれるクロトンの一種。細長い葉の先に、また同じような葉がついている。たいてい2つまでだけれど、中には3つ飛び葉しているのもある。ほんとうに不思議な木だ。クロトンの幹や枝は、あまり粘り気がないのですぐ折れる。だから、野外でちょっとした間に合わせ道具の材料として重宝したりする。たとえばお箸を作ったり、、、
この丸い葉っぱもクロトンの一種だ。小鉢状になっているので、ちょっとした皿がわりになる。バナナの葉をランチョンマットにして、芋やサカナ料理などの乾きモノをおき、この葉の上にサシミやヌタ風のウエット系を盛って、ハイビスカスやプルメリアの花などあしらうと、かなりハイセンスなローカル・キュジンの出来あがり。そして食べ終わった皿やサカナの骨などは、まとめて古くなったヤシの葉の篭に放り込んで木々の根元においておけば、数ヶ月もすると土に還って肥やしとなるのだ。
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