ブログトップ | ログイン

ミクロネシアの小さな島・ヤップより

suyap.exblog.jp

カダイ村のカルチャーツアー再開

今朝は土砂降りが我が家のトタン屋根をたたく音で目がさめた。あ~あ、今日も雨か!衛星写真を見ると、赤道の北は厚い雲に覆われてヤップはちょうど雲の切れ目にあった。変わりやすいお天気が予想される一日だ。だから早朝ダイビングは雨の中の出航となったが、幸いだんだん空が明るくなって、帰ってくる頃には少し薄日がさしてきた、ホッ。

カダイ村のカルチャーツアー再開_a0043520_2244992.jpg午後は、島内観光と、半年ぶりに再開したカダイ村のカルチャーツアーに添乗した。カルチャーツアーというのは、この村が主催する観光事業で、村の入口で伝統衣装に身をまとった村のガイドさんに迎えられて石畳の道を歩き、石貨のならぶ村の集会場の前でヤップの踊りを鑑賞し、子供たちによるヤシの葉細工やビンロウジュの実採りの実演などを見たりする、なかなか内容の濃いツアーなのだ。ちなみにヤップ島の伝統衣装とは、男は独特のマワシをつけた褌、女はヤシの葉やハイビスカスの木の繊維でつくった腰蓑(みの)で、ちょうど今の日本人がたまに着物を着るようなノリでヤップ人もこれらを着るので、ワタシはこれらをヤップのキモノと呼んでいる。カダイ村では、週2回のカルチャーツアーを何年も前から催行してくれていたが、2004年4月の台風Sudalで集会場が倒壊して以降いろいろな紆余曲折を経て、去年あたらしい集会場の建替えが始まるとともに、一時休止していたのだ。

ヤップの人々の暮らしの基本単位は、まずタビナウ(家)で、このタビナウが何軒か何十軒かまとまったのがアロウ(村)、そしてヤップには100近いアロウがある。そしてほとんどの村は、キャッシュレスだった昔のやり方で今も運営されており、ちゃんとした財務管理係を置いていない場合が多い。もちろんヤップ州政府への報告義務もない、というか、その辺の法律解釈と執行があいまいなままだ。そんなヤップのある「村」が、「わが村でも観光客を受け入れようではないか」ということになり、入域料を取って村の集会場や石貨、踊りを見せたりして、多少でも現金収入が発生するようになると、かならず困ったことがおきてくる。入ってくるお金の管理がどうしてもウヤムヤになり、そうなると村の中でぶつぶつ言うのが出てきてモメ始めるのだ。そんな中でカダイ村の事業がなんとか長続きしているのは、伝統組織としての村の中に、ヤップ州認可の現代的なNPOを起こしたことによる。Kaday Community & Cultural Development Organizatkion (KC&CDO)というNPOには、選出された委員と委員長、会計、執行役員がいて、ナント、村の海岸に日本のODAで建てられていた使い道もない製氷施設を、その事務所に転用して活用しているのだ(ワタシはこれをODAの数少ない成功例のひとつとしている。そのココロは、「本来の目的とは違っても(モチロン製氷機は必要もないので稼動していない)、建物の一部は有効利用されている」ー爆)。

カダイ村のカルチャーツアー再開_a0043520_2272682.jpgさて久しぶりのカルチャーツアーは、なんと27人という参加者を迎え、なかなか盛況だった。写真は、村の女の子たちが、生のヤシの葉で簡易バスケットを編んでいるところ。タロイモを掘りにいったり、何かをお土産に持たせたりするのに、その場でサッサと編んで使う。生の葉だから数週間くらいしかもたないが、古くなったら最終的にはゴミ箱として使い、土に還るゴミを入れて木の根元においておくと、自然に肥やしとして土に還元されるという素晴らしい伝統アイテムなのだ。ヤップでは、これがちゃんと編めないと嫁に行けない(笑)。

カダイ村のカルチャーツアー再開_a0043520_2275989.jpgこの写真は、男の子がビンロウジュの木に登って実を採っているところ(写真、暗くてブレてて、スミマセン)。ビンロウジュの実をかむ習慣は、ヤップでは単なる嗜好品を超えて文化的社交道具の一種ともなっていて、その実を採ってくるのは男の子供の仕事だ。丈夫な紐で作った足輪を使いながら、この子もあっという間に10mはある木に登っていった。採ってきた実は、希望する参加者に噛み方の実演つきで提供されるが、今回の参加者(弊社のお客様3人以外は欧米の白人)には、あまり人気がなかったみたい。

いっぽう、集会場のほうも熱心に内装工事が続いていた。「カルチャーツアーが復活して、よかったね」と、作業中の若手に声をかけたら、「いつまで続くかなあ?」との返事。カダイ村がまとまっているとはいっても、村の中には「集会場の工事でも手一杯なのに、こんな面倒くさいこと(カルチャーツアー)なんか今しないでも」という意見もあるらしい。大手の観光事業者やホテルの要求に煽られたカルチャーツアーの早期再開で村人が疲弊するよりも、暮らしと村の実存をまず優先し、カダイ村にはこれからもマイペースでいってもらいたいものだと思う。




ヤップの旅の情報はこちらでどうぞ。
http://www.naturesway.fm/index2.html
by suyap | 2006-01-21 23:45 | ヤップの伝統文化
<< ヤップの狂牛肉と肥料食 パッションフルーツ >>