ヤップは今日も晴れ。風がとても強く、風速10m/秒くらいはいっていたと思う。この季節に強まるのは貿易風だけど、強風の日が数日続くと少しおさまり、また強くなる、というパターンを繰り返す。三寒四温の風版というような感じだ。海はリーフの中でも風が通り抜けるところでは白ウサギが飛ぶ状態だったけど、潜ることができるポイントもたくさんある。大潮の数日後なので、満潮前に行けば透明度もバッチリだ。
ところでさてさてお待ちかね(?)、今日はヤップの玄米とワタシが呼んでいるタロイモの一種、ヤップ語でラックと呼ばれているタロイモの品種(
Cyrtosperma chamissonis)の話をしようと思う。なんで玄米なのかというと、ビタミン・ミネラル・繊維質がいっぱいで、これを食べていれば、他はほんのちょっとのオカズで足りる、完全栄養食だからだ。ヤップのお年よりには「ラックを一日に一回は食べないと元気がでません」という人が多い。それと対照的に若者の間にはラック離れが進んでいる。日本人の米離れみたいなものだ。
左の写真のように、この芋はヤップ語でムートと呼ばれる水田で栽培する。ヤムイモのところで書いたけれど、むかしむかし、焼畑で栽培するヤムイモで土地が荒廃した後、この水田耕作のタロイモが導入され、ヤップの食糧事情は格段と安定供給されるようになり、それが人口の増加と豊かな文化の蓄積を可能にした、というのが、あちこちの文献を頼りにして構築した、ヤップの過去についてのワタシの想像だ。
ヤップ以外の島にもチョボチョボとこの種の芋が栽培されてはいるが、ヤップのように島中に、先祖代々受けついで維持している水田と灌漑用水が普及しているところをワタシは知らない。サモアでもこの種の芋を常食していると聞いたけど、どんな感じでどの程度、この芋に依存しているのだろうか?
swamp taro スワンプ・タロ Cyrtosperma chamissonis
食べる部分の芋の紹介は近々する予定なので、今日は主にラック芋の水田の様子を見てもらおうと思う。左は「花」だ。あまり田んぼ中に花が咲いたのを見たことがないので、花をどうするのかワタシは知らない。この芋を作付けしてから収穫するまでの期間は、田んぼや品種によって1年半から3年くらいだ。ひとつの田んぼに色々な成長段階の芋があって、田んぼの持ち主には次に収穫する芋の順番の計画がちゃんとある。収穫するとき、まわりの根を棒で切りながらひとつの芋の株ごと掘りぬくと、親芋のまわりには小芋がいっぱいついているから、それらは食べないできれいに取り分け、収穫後に空いたスペースに植えておく。あとは収穫に行くたびに田んぼの石をとりのぞいたり草をとったり、手をかければかけるほど、美味しい芋ができるそうだ。
ヤップのすごいところは、大昔から、山の上から海にいたるあちこちの水田どうしが、ヤップ語でウォンと呼ばれる人工的な灌漑水路で結ばれていて、降った雨水はこの水路を通って各水田に流れ込み、そこで山の栄養を含んだ泥は田に沈殿し、その過程でだんだん「ろ過」されて澄んだ水となって海に流れ込む、というシステムができていたことだ。ところが田を考えもなくつぶしたり、水路の掃除を怠って詰まらせたりすると、濁った雨水があふれていきなり海に流れ込むので、海が汚れてくる。残念なことに、そんな状況になってきている田んぼや灌漑水路が、実は増えてきているのも事実なのだ。
30代後半以上のヤップ人女性は、いまも日常的にこなしているかどうかはともかく、女の務めである田んぼや畑の仕事(主食の自給生産システム)のノウハウを、子供時代にした(させられた)母や祖母たちの手伝いを通して、いちおうは身につけているようだ。ところが、いまの20代以下の女の子は、田んぼや畑仕事を手伝っていない者も多く(親がそれを止めちゃっててチャンスもないのもいるだろう)、手伝ってても、「結婚したら自分とダンナの田畑を維持して家族を養うのだ」という具体的なモーティベーションが欠落しているのか、あまり積極的に作業の意味を覚えようとしていないようだ。日本の里山が、若者の都会への流入と消費社会の発達でどんどん荒れていったように、将来この世代が親になる頃には、ヤップの田んぼや食糧生産事情は、激変するんだろうなあ、、、というより、もう始まっているのだろう。
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