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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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鎮魂之碑

最近、「この事について知り得たことを、何かの形で多くの日本人に知らせなければ」という思いが日を追って強くなっている。「この事」とは、この太平洋の小さな島々を巻き込んで行われた戦争のことである。私も多くの日本人と同じく、学校の歴史の授業では日本の近世・現代史を学んだ記憶がない。幸い(?)生まれも育ちも広島なので、原爆のことは小さいうちから現実として肌で感じることができた。まわりにはケロイドの跡も生々しいオバちゃんとかいたし、原爆や空襲の話もたくさん聞いて育った。それでも、「日本はどうしてあのような戦争をしたのだろう」ということを考えようとすると、基礎となる歴史的知識(ファクト)の持ち駒が、自分にはあまりにも少ないことに気づくのだ。今の日本のありようを根本から考えるには、少なくとも江戸時代から明治維新あたりの日本と世界の動きを見ないと何もわからないのだなあ、ということに、今ごろ気づいているありさまだ。

私がこんなことを考え始めたのは、この地にいまだに散らばる戦争の残骸や、それを訪れる元・兵隊さんやご遺族の方々から聞いたり教えられたりした色々な「戦いのありさま」が積もり重なったからだ。ここヤップ島では250人近い兵隊が戦病死された(この数字には民間人や朝鮮から徴用された人たちは入っていない)。一方、ヤップ州の環礁島のひとつウォレアイでは、なんと1年のうちに5000人近い兵隊が「餓死」された。ここではいまだに畑や海からご遺骨が出てくる。寒い満州からいきなり熱帯の島に配置され、食料の補給も絶たれ(そんなことは机の上で戦争を計画していた連中にはわかりきっていたはずだ!)、大の男がサツマイモの大小を争って大喧嘩するほど飢え(それでもこの人たちはマシだった、イモがあったのだから)、島のトカゲを食いつくし、それでも体重が25キロを割って死んでいった、、、何のために?

かたや「どうしてヤップのお年よりは日本語を話せるんですか?」「ヤップでも戦争があったんですか?」という質問をお客さんから受ける時代でもある。そいういう質問を受けると、「先の戦争のことも知らずにミクロネシアに来るのは失礼です、島の人にも、ここで亡くなった兵隊さんたちにも」と、つい熱くなってしまうのだが、もどかしい思いにかられて落ちこむことも多い。私の世代でさえちゃんと教えられなかった近・現代史の知識レベルは、世代が若くなるにつれてもっと悲惨になっているようだ。そういう世代の中から、「中国や北朝鮮が攻めてきたらどうする」とか「憲法を変えて日本も正式な軍隊を持つべきだ」とかいう意見(私からみたら誰かからの刷り込み)を聞くのは、ほんとうに怖いことだ。

a0043520_23485322.jpg書きたいことはいっぱいあるのに、どれも重く大事なテーマで、なかなか取りつけないでいるが、このブログのカテゴリーのひとつ「ヤップと戦争」を、これから追々書き足していきたいと思う。まずは手始めに、この「鎮魂之碑」から。コロニアのパスウエイズホテル敷地内にひっそり建っていて、私も長い間ちゃんと近寄って見たこともなかったのだけれど、一昨年、厚生労働省の慰霊碑調査が入ったときに、汚れやコケを削り落として初めて碑文を読んで腰を抜かした。

a0043520_23494614.jpg碑文正面は「鎮魂之碑」。脇に「ヤップ最高指揮官陸軍大佐江藤大八」。裏面に「ヤップ日本陸海軍部隊
昭和二十年八月」。石はヤップ産で柔らかく、文字はかなり読みづらくなっているが、もしこれが本当だとすると、ヤップ島守備隊長だった江藤大佐は、9月に米軍がやってきて降伏の調印をする前の8月中にこの碑を建てたことになる!江藤大佐のことはヤップでも色々ストーリーが残っていて、「エドはアメリカのスパイだった」と信じているヤップ人も多い。理由は「名前がアメリカ人っぽい」「アメリカの船が来るとさっさと乗っていった(たぶん降伏の調印のときのこと?)」「収容キャンプを褌姿で抜け出して、コンビーフやキャメル(アメリカのタバコ)を持ってきた(捕虜の待遇を良くするための工作をヤップ人に頼んでいたのか?)」。ともあれ江藤さんは1945年10月には復員されているようだ。その後の消息を知りたいのだけれど、まだ果たせないでいる。

この碑はもともと、コロニアの裏手の山の頂付近に割れてひっくり返っていたのを、パスウエイズホテルのオーナー(ヤップ人)が「何だかわからないけれど、日本軍に関係する大事なものだろう」と思い、そのまま打っちゃっておくのが不憫で、ホテルの敷地内に持って下りて修復したのだそうだ。それでなければジャングルの中で永久に埋もれていただろう。

a0043520_2350198.jpg碑の横に見える白い花は、ココリスというジンジャーの仲間。クチナシのような甘い香りがするので、ヤップではよくレイに編みこまれる。今日のところは、この清楚な花で締めることにする。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2006-01-10 23:49 | ヤップと戦争
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