店のパーティションの一面を本棚にして、「古本交換」のスペースを作ってみた。自分で買ったものに加えて、読み終わった本を残していかれる方もおられるので、いつのまにか色々なジャンルの本が貯まっていく。ときどき思い切って「処分!」するのだが、根がケチだから、なかなかスパッと決断ができないのよね(笑)。
その本棚の埃を払ってくれていたJくんが、いつのまにか床に座りこんで、ある本のページを熱心にめくり始めた。
「海の幸」、山と渓谷社の1987年初版…。ダイビング仲間だった○○ちゃんが関わっていたから買ったこの本も、何度目も「処分!」の決断を逃れて、棚に並んでいた。
「ねえねえ、この本に出ている料理を、Suは全部作れるの?どんな味か説明できる?」
なんとなく舌なめずりの響きを帯びた声で、Jくんが聞いてきた。
「パール(ヤップ語でヒラメやカレイのこと)を食べると怠け者になるから、食べたことないや。ほんとうに美味しいの?」
「これはカレイだね。正面から見て、目が右に寄っているでしょ。左に寄っているのはヒラメ。刺身も醤油の煮付けも最高!でも、今の日本では、これを食べるの心配かも」
「うへっ、これはウナギじゃないか。こんなのまで日本人は食べるんだ?」(注:ウナギは神様なのでヤップ人は食べない)
「これは鱧(ハモ)といってね、親戚関係だけどウナギとは違うよ。ちょっと小骨が多いから骨切して、焼いたりスープにしたり、身がほこほこしてて美味しいんだよ」
「これは何なの?エビ?」 いつのまにか、G嬢まで本を覗きこんでいる。
「ああ、これはシャコね、ほら、あの
マンティス・シュリンプと同類の。わたしが小さかったころは、山盛りに茹でたシャコがオヤツだった日もあった。今ではすごく高い食べ物になっているらしいけど…」
…うわ~シッタカだ。ひと昔前の日本の磯にはね、こういう小さな貝がたくさんいてね、これで味噌汁をつくると美味し…かったな。今の日本の磯にも、まだたくさんいるのかしら…でも、もう食べるわけにはいかないね、フクシマのせいで」
J「…」
G「… …」
「きゃ~、またウナギだ!」
「違うよ、これもウナギの親戚だけど、名前はアナゴ。細めでさっぱりしてて、ウナギより上品な味で、Suママは、この魚が大好きだった…。これも海底に住んでるから、今は放射能たっぷりだろうね」
JくんとG嬢を差し置いて、いつのまにか自分でページをめくり始めていた私の気分は、どんどん滅入っていくばかり。
「なに、このグロテスクなサカナ。ヤップにもいるの?」
「近縁種はいるよ、ほら、あの、でかい
エンマゴチの仲間だよ。身は油が乗ってて、柔らかくて、とっても美味…でもね、これも底生だから、海中の汚染をすぐに受けるんだよね。わたしの若いころ、瀬戸内海で初めて海釣りして釣り上げたのがこのサカナだった。でもその固体には、頭に大きな瘤があったんだ。当時は日本中の海が公害で汚染されていた。あのころは重金属、そして今は…放射能。
○
東京湾放射能汚染の話
http://d.hatena.ne.jp/opuesto/20130716/1373963741
Jくんのおかげで、この本は再び、わたしの宝物となった。「あのころ」の海と味の思い出として…。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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