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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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2012年のヤップデイ-1日目(伝統踊り編)

また更新が滞ってしまいましたが、ヤップデイ1日目の踊り編です。

17年ぶりにコロニアに戻ってきたヤップデイ、1月も後半になってようやくかき集められた9つの踊りが、2日間にわたって披露されることになった。しかし今年のヤップデイでは、まず口開けの踊りティヨールが無く...おそらく準備する暇がなかったんだろうね。そしてほとんどは子供や若者の踊りで、大人も参加していたのは女の座り踊りのふたつだけだった。また9つのうち、3つは去年のヤップデイでも踊られたもので、少なくともあとの3つも他のイベント用に練習していたものだった...

まあそれはともかく...初日午後の最初の踊りは、ドゴール村のガメル(竹棒をもった踊り)から始まった。
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このブログで何度も書いているように、ガメルはもともとヤップ島よりもうんと東の島々から伝わった男の棒術踊りだった。それがおそらく日本統治時代になってから、男女の子供が混じって竹の棒を持って踊るようになったらしい。だからヤップの中ではガメルのチュル(伝統踊り)としての位置づけは低いし、覚えるのもそんなに難しくないという。
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今年はヤップデイ・プログラムにも踊りの名前やストーリーが出てないし、MCもほとんど説明しなかったので、ドゴール村の人に「この踊りの名前は?どんなストーリー?」と聞いたら、あまりよく知らないという。とりあえずわかったことは、この踊りは昔々トルー村から譲り受けたこと、最後が輪舞になるような現在の振り付けはドゴール村で考案されたこと、だからチャルまたはチェレグ(どちらもヤップ語で輪っかのこと)と呼ばれていること。
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わたしがあまりにも熱心に質問するものだから、知り合いのAさんが村のお年寄りにストーリーを聞いてくれることになった。それがわかり次第ここで紹介することにする。ヤップの踊りのチャーント(謡)は新しい踊りでも古語を使ったり韻を踏んだりするから、まして古い踊りとなると、今のヤップ人には歌詞を聴いただけではチンプンカンプンらしい。わたしが万葉集の朗詠を聞いたって、まあそんなものだろう^^

次に登場したのは、ワロイ村とチョール村の女の座り踊り(プルブット)だった。
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この踊りにはセーユハンという名前があって、去年のヤップデイでも披露された。ヤップ人はみんなセーユハンがちゃんと発音できなくて苦労しているようだけど、実はこれ、日本語です。
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太平洋戦争も末期の1944年になってヤップ島の守備にやってきた日本軍は、補給を断たれて乏しくなった食料を補うために島の食材をいろいろ調べて活用したが、ココヤシの油もそのひとつ、当時のヤップ島民に大量のヤシ油を作らせていた。そのチームが「製油班」、島民人口の倍を上回る大勢の日本兵のために、大量のコプラ(ココヤシの完熟した実)を削ってヤシ油を作る作業の大変さをチャーント(謡)は語っているという。
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端のほうに目をやると、3歳くらいの女の子がちゃんと踊りの振りについていっているのが可愛いらしかった。ヤップの踊りでは、子供が興味を示す限り、どんなに小さくても一緒に混ぜて躍らせる。

ところでこの踊りでは女たちがペバイ(公民館)モドキやファルー(男の家)モドキに対面しているけれど、こうして建物に対面して踊るのが、本来の正当なポジションなわけだ。しかし後から出てくる踊りでは、「画になるように」という配慮から、建物を背にして踊ったものが多い。ま、女がモドキといえども「男の家」の前にいるだけでも、ヤップ人の感覚からすればアリエナ~イのだけどね。

さて次の踊りはカダイ村のガメル(竹棒踊り)。
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実はこれ、カダイ村のカルチャー・ツアーで毎回踊られているものだ(だから土壇場でもすぐにヤップデイに出せたという事情もあり...)。

この踊りはガフゴウ・ウ・タナ・マルあるいはタンギン・エ・マルと呼ばれ、やはりヤップに太平洋戦争が来たときの、人々の苦労が語られている(意訳は以前の記事に載せているので、興味があるかたはクリックしてみてください)。
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内容がこういう悲しくつらいストーリーなので、本来はプルブット(座り踊り)でしんみりと聴かせ・見せるはずなのだけれど、こうして派手な動きのガメルにしてしまうと歌の意味がどこかに吹き飛んでしまう。実際に踊り手のほうも、歌詞の内容なんてまったく気にしてはいないだろう。それにしても何の考えもなく、「外国人が見ても楽しめる派手な踊り」を要求して止まないツーリズムの責任は重い。
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プログラム上では午後2時から5時半にかけて4つの踊りが披露されることになっていたが、例年のヤップデイとは正反対に異常な速さですべての踊りが続き、初日の最後を飾ったトミル地区の小学生~高校生によるガシュラウ(男のエロチックな立ち踊り)が登場してきたときは、まだ午後4時前だった。

下は献上する貝貨を掲げた村役のあとから、子供たちが先導されて入場してきているところ。前回の記事で紹介したヤップの「お宝」のひとつ、ヤールは、こういう使われ方もします。
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この踊りにはヤウールという名前がついていて、ヤウールとはパラオのアンガウル島のこと。ドイツや日本統治時代には、ヤップなどミクロネシア中の島々からアンガウル島へリン鉱石採掘の労働力が送られていたが、そのときのつらさや厳しさを語っているという。
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この踊りも去年のヤップデイで披露されたものだけれど、本来は男たちだけの間で踊り見ることができる、エロチックな動作がふんだんに入ったガシュラウを、女子供もたくさんいるヤップデイの昼日中にやることを憚って、わざわざ日没後に披露されていた。それがなんとまあ...今年は!
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こんな仕草があるたびに、意味のわかっているヤップ人の観衆の間から笑いや野次が沸き起こる。なにも知らない外国人だけが、神妙な顔つきで「厳粛なヤップの踊り」に見入っている(苦笑)。

小さな子供たちだって、負けちゃいません、シゴイテシゴイテイッシイッシ(あ~あ、書いちゃった!)
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それでもさすがに、踊りの真ん前のウンベイ(プラットフォーム)に乗っかって鑑賞するヤップ人はいないなあ...と思いきや!!!あちゃ~、数人のヤップ人女子がカメラを片手に座りこんでる!

ウンベイとはヤップの家や集会場の前にある「座敷」みたいなもので、それぞれにそれなりの席次や格があるものなのだけれど、なにせここはモドキなもので...、まだヤップ人自身が座って良いものかどうか、とまどっている雰囲気がある。それにしても身内の男のガシュラウの真ん前で、しかもウンベイの上でドカッとカメラを抱えてた女の子たち...やはりそれなりのヤツらとして見られてるんだよね...「ダメだね、あの娘は」と。
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本来は女が見てはいけないガシュラウが昼日中のヤップデイに堂々と披露されるようになったのは、どうやら80年代のことらしい。そのときから島内では賛否両論が続いており、いまだに「あんな汚い踊りを!」と怒っているおばあちゃんもいる。

ちょっと前までは、そして今でも躾のできた家の女の子は、決して男のガシュラウを大っぴらに見たりはしない。昔からこれは...女たちがこっそりと隠れて見る「男の品定め踊り」だったのだから(見られてなきゃ男もやらないでしょ‐爆)。それでもキョウダイ(イトコ)関係にある男の子がいると、隠れてでも絶対に見てはいけない。だからガシュラウをこうして昼日中にやることに、いまだに賛否両論が起きるわけだ。
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去年のヤップデイに出されたヤウールには大人の男たちも大勢加わっていて、それはそれは見事な出来だった。今年はなにせ準備の時間が無かったもので、急遽子供たちだけで編成されたのだろう。それでもよく頑張ったものだと思う。その人数、統一感、出来栄えなどから、その地域の人々のまとまりや勢い、リーダーたちの統率力を伺い知るというのも、ヤップの踊りの見どころのひとつなのである。

その準備期間の短さに心配していたヤップデイの踊りも、初日の4つがなんとか無事に終わって、まだ予定終了時間の1時間も前だというのに、会場は一気に閑散としてきた。オワッタ・オワッタ~と胸をなでおろしているヤップデイ関係者の顔が思い浮かぶようだった^^

第2日目に続きます...


ヤップデイ関連記事:
2012年のヤップデイ-1日目
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2012年のヤップデイ-2日目(伝統踊り編)
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(続きを書いてません...とほほ)

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2006年ヤップデイ・初日
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2012-03-04 17:45 | ヤップの伝統文化
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