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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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2012年のヤップデイ-1日目

うるう年で増えた1日もあっという間に過ぎて、もう3月。ヤップ島では例年によって、3月1日と2日にわたりヤップデイというイベントが行われている。
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諸事情によって、今年のヤップデイは17年ぶりにコロニアで催されることになった。

会場は去年できたばかりの例のヤップ・リビング・ヒストリー・ミュージアム!こんなに狭いところで、しかも公民館(ペバイ)と男の家(ファルー)がやらせ的に並んでいる前で女たちが腰蓑姿でちゃらちゃらするなんて(爆笑)というのがローカル雀の正直な気持だけれど、土壇場まで何の準備も整わず、引き受ける村々がなかったので仕方がない...。
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例年なら前年の11月頃までには「どこそこ村がこんな踊りを出すらしい...」という情報が島中に知れわたり、当該の村々では毎日のように踊りの練習を始めるのだけれど、今回は1月に入ってもヤップデイのために踊りを準備している村はなく、2月の声を聞くようになってようやく...とにかく速成で踊りをまとめることができる村や集団が呼び集められたようだ。

したがってヤップ人自身のモーチベーションがいつもよりなお低く、ヤップデイに関係しない人々は、昨日(3月1日)の木曜日から週末を入れて4連休となる休日を、村でゆっくり過ごしているだろう。店番のG嬢も、「ヤップデイを見たかったら連休中も出勤扱いにしてあげるよ」と薦めたにもかかわらず、彼女の返事はSee you on Monday!だった(苦笑)。

そんなわけだからわたしも今年は腰蓑を着るのをやめにして、午前中はずっと貯まりまくったデスクワークをこなし、ヤップデイ会場に行ってみたのは午後1時過ぎ、踊りが始まる直前のころだった。それでも会場の人出は↑こんな程度↓で、案の定、踊り関係者とエライさん以外で伝統衣装の人は数えるほどしかいない。伝統衣装でないと会場に入れてもらえなかった去年とは大違いだ。
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それでもコロニアのど真ん中という場所柄、てっきり交通規制が入って車で乗り入れるのは無理だろうと思っていたら、オマワリさんが忙しくコーンを動かしながら、手信号で行き交う車をさばいているだけ。マリーナの駐車場にもまだスペースがあったし^^
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会場と反対側(マリーナ寄り)のスペースには、主に食べ物や飲み物を売るブースが花盛り。しかし、ここもそんなに人で混み合ってはおらず、やはり伝統衣装姿はほとんど見あたらない。
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そんななかで、タトゥ・ショップというささやかな看板を見かけたのでのぞいてみると、男の子が数人、絵の具を囲んでいた。

「ホンモノのタトゥなの?それとも画を描いてくれるだけ?」と聞くと、「シャワーで落ちるよ、おばちゃんもやりたいの?」(爆)...「いやいや、ちょっと聞いてみただけだよ。写真撮っても良いかな?」というと、みんなでポーズをとってくれた^^

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さて、踊りが始まるまでにざ~っと会場を見てみよう。

今年もプログラムは土壇場までファイナルが出てこなかったけれど、(内容はともかく)なんとか形にはなっている。「どうしてJICAやフィリピン人会をヤップデイ・プログラムに加えなきゃいけないの?」とヤップ人の女友達Tはお怒りで、わたしもそれに100%同意なのだけれど、この件は今年のヤップデイ記事シリーズの最後に書くことにする。とりあえずプログラムを見たい方はこちらから。

それでまず訪れたのは、会場の海側に設営されたTraditional Navigation Socieyの看板が出たカヌー建造やロープ作り実演...?
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そこでは離島のおじさんたちがのんびりチョウナを使ったり、ヤシロープをなったりしていたけれど、あれっ、もうヤシ酒が始まっている^^

「おお、suyapも飲んでいけや。あんたが俺の島に来たときのことおぼえておるぞ」...「えっ、もしかして〇〇島の19年前のあのときのこと?」...ここに長居はヤバイかも...ですぐに退散(笑)。
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会場内に入ると、一番小さな小屋の中でなにやら展示物が...

中をのぞくと、HPO(歴史保存局)職員のFさんと奥さんが、ヤップの伝統的な「お宝」展示物の番をしていた。
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念のために書いておくけれど、石貨を含めて、こういう伝統的な「お宝」のことはマチャフと呼ばれ、人や共同体などを「結びつける」役割をするものだ。したがってモノを「売買」するような「お金」ではないからお間違えなく(だからサインにあるように、英語でcurrencyというのも違うんだよね...)。

2012年のヤップデイ-1日目_a0043520_8302827.jpg2012年のヤップデイ-1日目_a0043520_8312145.jpgこの展示品の中で、わたしがオッと思ったのが、←これらの包み。これはひょっとして、今回のヤップデイで一番の「めっけもの」かもしれない。だいたい、展示していながら包んだまま...ってのも、すごいでしょ(笑)。

Fさんにダメ元で聞いてみた...「これらの中身、見せてもらえないよねえ?」

案の定、ちょっと困った顔をして奥さんと顔を見合わせながら...「う~ん、ヤップ人としては見ちゃいけないんだが...ま、この際、suyapは外国人と考えることもできるから...いいよ、開けて写真を撮りなさい」

「でも、わたしが開けちゃったら、みんなが見ることになるじゃない。バチが当たったらヤだし(笑)。わたしは触りたくないよ。Fさんか誰かが開けてくれるんなら...」

2012年のヤップデイ-1日目_a0043520_8402262.jpg2012年のヤップデイ-1日目_a0043520_814936.jpgそこで奥さんがそお~っと開けて見せてくれた中身が←これ。

左側のはヤール・二・ガプチャイというシロチョウガイ製の貝貨で、主にソロモンやパプアニューギニア方面から来たと思われるもの。ちなみにガプチャイとは白人のことだ。

右側の包みには二種類の小さな貝貨が入っていて、上に乗っかっている直径6センチくらいの白いのがヤール・二・シピン...そう、あの沈んだ伝説の島シピンから来たものといわれていて、小さくてもものすごく貴重!もうひとつのはヤール・二・パウといってクロチョウガイ製にも見えるけど材料はわからない(聞きそびれた)。これらのセットはこの中のどの貝貨よりも価値があるのだそうだ。

その他に並んでいた「お宝」の種類は、

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上の左側から、でかいヤール・二・バラウ(バラウとはパラオのこと。クロチョウガイ製で大きくて装飾がきれいだけど、価値としては上の2つの包みのほうが上)、ガウというネックレス状のお宝、そして戦前まで活発だった神官の大切な道具のひとつヤブル(ホラガイのラッパ、ちゃんと吹き口が開いている)。

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上は左側からランと呼ばれるターメリックを固めたもの。真ん中は離島の女たちが織ったバナナ繊維の生成りの反物バギ、右は主に若者が身につけるネックレスダウエイ、ひとつ前のガウとは材料の希少性からして価値は劣る。

2012年のヤップデイ-1日目_a0043520_843119.jpg2012年のヤップデイ-1日目_a0043520_85129.jpg←こちらの左端のはやはり離島から献上される織物バギだけれど、バナナの自然繊維ではなく工業用ミシン糸で織ってあるから洗濯がきく。その隣のはアウと呼ばれるヤシロープ、さらに隣はフィガと呼ばれる女性用の飾り紐。昔のものは小さな貝殻で作ってあったが、これはプラスティックのビーズ製。そして右側のものがビンロウの実をつき潰す道具で、このようにクジラの牙やシャコガイ製の立派なものはと呼ばれ、位の高い男性だけが使える。

ところでクロチョウガイ製のヤール・二・バラウを見ながら、「この貝ならまだヤップにもあるよ、Fさんの村が監督する海の中にもね」ともらすと、Fさん、目の色を変えて「それはどこだ?こんど一緒に行って取ってこよう!」...「いやいや、もう数年待って大きくしてからのほうが良いでしょう?」(笑)

その小屋の外側では、ひっそりとヤシ油作りの展示が並んでいた...(もしかしてプログラムの「ヤシ油作りデモ」をこれで済ませたつもり?)

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このブログでも何度かヤシ油づくりを紹介しているけれど、ヤップデイ期間中の実演では2007年のが良かったかも:

〇(ヤップデイ続き-女の仕事②
http://suyap.exblog.jp/5197162/

完熟したココヤシの実(コプラ)の中身(上写真右の左側)を、カリカリと削って(上写真左側)、

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それに少量のココナッツ・ジュースか水を加えて絞った液を、水分と油分が分離するまで煮詰めるというのが、現在の一般的な行程だ(上写真右はその出来上がり)。

その他のブースはもう早々と終わっていたので、残りは2日目で紹介することにして、1日目の続きは踊り編を書きます。


ヤップデイ関連記事:
2012年のヤップデイ-1日目(伝統踊り編)
http://suyap.exblog.jp/14792716/
2012年のヤップデイ-2日目(伝統踊り編)
http://suyap.exblog.jp/14798142/
2012年のヤップデイ(その他の展示)
http://suyap.exblog.jp/14821689/

今年のヤップデイは気合が入ってます?
http://suyap.exblog.jp/12200044/
20011年のヤップデイ-ヤップ人全員伝統衣装で参加すべし
http://suyap.exblog.jp/12216654/

2010年のヤップデイ
http://suyap.exblog.jp/10086636/
(続きを書いてません...とほほ)

2009年のヤップデイ-1日目
http://suyap.exblog.jp/8017150/
2009年のヤップデイ-2日目
http://suyap.exblog.jp/8043952/
2009年のヤップデイ-伝統料理編
http://suyap.exblog.jp/8043993/

カヌー・セーリング
http://suyap.exblog.jp/6848207/
2008年のヤップデイ-1日目
http://suyap.exblog.jp/6853042
2008年のヤップデイ-2日目
http://suyap.exblog.jp/6859793/
2008年のヤップデイ-食べ物編
http://suyap.exblog.jp/6874909/
2008年のヤップデイ-踊り編
http://suyap.exblog.jp/6875261/
2008年のヤップデイ-ちょっと心配編
http://suyap.exblog.jp/6875271/
2008年のヤップデイ-あきれた編
http://suyap.exblog.jp/6875288/

2007年ヤップデイ・1日目
http://suyap.exblog.jp/5185908/
2007年ヤップデイ・2日目
http://suyap.exblog.jp/5189191/
2007年ヤップデイ続き-男の仕事
http://suyap.exblog.jp/5189280/
2007年ヤップデイ続き-女の仕事①
http://suyap.exblog.jp/5196595/
2007年ヤップデイ続き-女の仕事②
http://suyap.exblog.jp/5197162/

2006年ヤップデイ・初日
http://suyap.exblog.jp/3275793/
2006年ヤップデイ・2日目
http://suyap.exblog.jp/3281540/


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2012-03-02 11:14 | ヤップの伝統文化
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