ヤップでは晦日ころから良いお天気に恵まれてきた。きのうから少し雲が増えてきたけれど、まだそんなに大きく崩れることはなさそうだ。

南の島では雲ひとつなく晴れわたるより、少し雲がかかっていたほうが日中の活動には都合が良い。そんな好条件のもと、2012年「初」戦跡ハイキングに行ってきた。

太平洋戦争中、ヤップ島の守備についていた陸軍独立混成第四十九旅団は、コロニアの裏山にも相当な戦陣を張っていた。

それらは今ではみなジャングルに埋もれてしまっているので、戦跡ハイクでは蛮刀で生い茂る植物を切り分けながら進む。すると、戦後70年近い歳月を打ち捨てられたままになっている九一式十糎榴弾砲などが、次から次へと出てくるのだ。よくもこんなに重いものを、人力だけでこんな山の上に持ってこれたものだ。

すでに崩れ落ちた陣地壕跡や、まだ形の残っている見張り壕なども見られる。今では下草や木々に埋もれてまったく判別つかないけれど、どうやら当時、この地は連なる山々全体が陣地として構築されていた形跡である。

うす曇のお天気に恵まれていたとはいえ、熱帯のジャングルの中を数時間歩き回るのはやはり暑い。それでも山の中の木々に覆われた場所にいた間は木陰でしのげたが、下って開けた場所に戻ってくると...

先頭を行っていたこの村のローカル・ガイドLくんが、道傍にあったオオバギの小枝をひょいと切り取って、日傘がわりにして歩き始めた(笑)。
炎天下の日差の強いところでもお構いなしに立ち止まって話し始める島外からの訪問者に接して、地元の人間はよく困惑する(またはあきれられる)。生まれながらに強いお日様の元で生きている彼らは、炎天下での活動は極力避けようとするし、どうしても避けられないときには、本能的に日陰を捜して適度に休むか、Lくんのように即席の日よけ対策を講じて体力の消耗を防ごうとする。
今回もすぐ近くに木陰があるのにわざわざ日差の強いところに止まって話し始めるゲストを見ながら、67年前に満州からヤップに送りこまれ、この陣地を築いた日本兵たちのことを、ふと思ったのだった。
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