ヤップの髙島屋とわたしが呼んでいるYCAストア入口横の外壁に、4 X 8サイズ(約2.4m X 1.2m)の巨大な看板が出現した。
かなり大胆な色使いで、右下コーナーにはDeath(死)という文字が見える!
いったいなにごとが?と近寄ってみると、上にはゴチャゴチャと読みづらい大文字が並んでいて...
OUR OLD YAPESE WAYS OF LIFE...ACTIVITIES WE DO AND THE FOOD WE EAT THAT KEEPS US HEALTHY.
WHERE ARE YOU ON THIS DIABETES CLIFF PICTURE?
KNOW THAT WHAT YOU DO AND EAT DEPENDS ON WHERE YOU ARE GOING AND WHAT YOU WILL BE.
LET US ALL COME TOGETHER TO HELP STOP DIABETES
私たちヤップ人の伝統的な暮らし方...日々の活動や食事そのものが私たちの健康を守ります。
この糖尿病崖図のどこにあなたはいますか?
あなたの(図の)行き先や将来は、あなたが日々どんな活動をし何を食べるかによることを知ってください。
糖尿病撲滅にむけて、みんなで力をあわせましょう。
それで図をよく見てみると、左端は崖の内側の安全地帯という意味かな?
健康(パート1)
タロ芋、ヤム芋、バナナ、サカナ、野菜、脂身のない鶏肉、脂身のない豚肉
(ヤップ産豚にはそんな部分ないだろーが...と突っこみをいれたくなるsuyap)
運動、畑仕事、タロイモの田んぼの世話、伝統踊りの練習、ココヤシやビンロウジュに昇って実を取る作業、建設作業
(こっちはみな自前で家を建てるからね)、サカナとり、家や村の掃除
そして図の真ん中は崖っぷち近くで傾斜しているところみたい...
パート2
缶詰のおかず、七面鳥の尻尾肉、脂、白パン、白米、キャンディ、クッキー、インスタント・ラーメン、チップス類、缶・瓶づめ飲料、ドーナッツ
テレビ、ビデオ鑑賞、運動不足
タバコ(喫煙+噛み)、飲酒
そしてこれらの悪習慣は赤い矢印で崖の下へと導かれ...
パート3:糖尿病の診断
↓
パート4:糖尿病治療
心臓マヒ、脳溢血/梗塞、腎機能障害、(足や指先の)切断
↓
島外の医療施設送り
死
へと落ちていくのであった(笑)
この図がすべて英語で書かれているのは、ヤップ島在住の他島者(主にヤップ州離島出身者)にもわかるようにという配慮かな。この図にはヤップ島で長いこと暮らしていないと、なかなか実際のイメージがわかない英単語がたくさんあるので、それらを解説しておこう。こういう切り口から現地の暮らしを垣間見るのもおもしろいかもしれない。
TARO PATCHING: あはは、これは造語!ヤップ島のタロイモ=
ラック芋は田んぼ栽培で、ヤップ語で田んぼはムートというのだけど、なぜかヤップ人はムートを英語でタロパッチという。そこに行って作業をするからタロパッチング。プロの通訳でもよほど現地事情を調べてないと訳せないよね。
DANCING: ヤップで踊りというと、まずコミュニティ単位で半強制参加で行われる伝統踊りの練習のこと。これがしっかりしている村の子は健康だ!(笑)
CLIMBING: もちろんこれは趣味のロック・クライミングなんかじゃなくて、ココヤシやビンロウジュへ登って実を取ってくる作業のこと。ちゃんとした子供~若者の日常生活の一環です。
BUILDING: こちらではまだ住まいは自前で建てるもの。そのほか村の集会場や休憩所、家の中のちょこちょこした直しなど、ヤップでは大工仕事は男たるものの大切な要素だ。
FISHING: 岸から釣り糸を垂れて獲物を待つ...なんて悠長なサカナ取りはいたしません。まず一般的なのが潜って取る方法、その他網を投げる、仕掛けを置く...など、ヤップのサカナ取りは準備を含めてかなりの労働になる。
CAN MEAT: ミクロネシアに初めて来られた方は、どの店でも缶詰のオンパレードで驚かれると思う。こちらではやる気になれば食料は自給自足でまかなえるのだけれど、アメリカ時代になって「援助」や「商売」でガンガンと缶詰食品が入ってきてから、少しでもキャッシュ収入があると、みんな安易なそれらに食生活も流れていった...という悲しい歴史の結果です。
TURKEY TAIL: アメリカ国内で売られる七面鳥はほぼ成長ホルモンと抗生剤の薬漬けだ。それらの薬剤はお尻から打ち込まれるので、アメリカ国内では七面鳥の尻尾は食品としては売ってはいけないと法律で規制されているとか。ところがミクロネシアのような属国ではそういう規制がないのを良いことに、アメリカでは肥料される七面鳥尻尾肉を輸出して売り放題。もともと脂っこいものが大好きな人たち、安い七面鳥の尻尾肉は今でも大人気なのだ。
BREAD, RICE: ヤップにはたくさんパン屋があるけれど、どこでも焼いているのはミクロネシア・バージョンの甘ったるい白パン。お米も極々少量の玄米もあるけれど、一般庶民が買って食べるのは安い白米。
RAMEN: こちらでラーメンといえば100%インスタント・ラーメンのこと。みんなほんとうに良く食べるし、子供なんかは乾いた麺だけ食べて粉末スープを舐めている。島にはインスタントじゃないラーメンなんかないので、そういうのを島外で食べる機会があると「これはラーメンじゃない」というヤップ人(笑)。
MOVIES: ヤップには映画館なんかないから、これはレンタルDVDを家で延々と見る状況。週末には大人から子供まで全員、深夜から明け方まで延々と大ビデオ鑑賞をやるっていう家庭が多い。
AMPUTATIONS: 健康診断の機会もそんなにないし、みんなギリギリまで病院に行かないので、糖尿で足切ったり指切ったりした人は、わたしのまわりにもけっこういる。それにしても最近の義足の性能は、すごい進歩ですね。
OFF-ISLAND REFERRAL: 上記の足指切ったりはヤップでもできるのだけど(これもすごいでしょ)、腎機能とか心臓までいっちゃうと島の病院ではどうしようもないから、フィリピンやハワイの病院送りになってしまう。どんなに保険や援助がついても家族には相当の負担だし、あげくに棺おけに入って帰ってくる人も多いから...
最後は「死」で終わる看板に、すごく説得力があるのだ...と期待しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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