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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル-伝統踊り編

さて次は今年のカヌー・フェスティバル伝統踊り編です。去年の5つに対して今年は3つの踊りが披露され(縮小は予算の関係)、そのうち2つをなんとかビデオに撮りました。撮ってないのは開会式で出された近くのニマール村(実はマリーナやコミュニティセンターも村内)のガメル、いつも見ているし...とぐずぐずしているうちに終わってました...

夜の部では2日にわたって2つの踊りが披露された。まず初日はギルマン地区のガメル:
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実はこのガメルも、店の中でぐずぐずしているうちに始まりのタイミングをのがしてまい、竹の棒を打ち合う音がかすかに聞こえたのであわててカメラをかかえて駆けつけると、もう最終フレーズに入っていた。
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プログラムの上では7時からその日の勝者の発表などがあったあと7時30分から踊りとなっていたのに、どうやら7時過ぎに踊りの準備ができたらササーッと踊りが始まったらしい。
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去年の踊り編でも書いたように、ガメルはもともと他所から来た若者の棒術踊り。それがまた近代に外国人の影響を受けてより「見せる」踊りへと変化した。地域ごとに振りの特徴はあるが、島の伝統芸能としての位置づけはそんなに重くないので見る側もそれなりに...。とはいっても、この踊り手たちもしっかり練習を積んでいて、なかなか良いガメルを見せてくれた。

そして今回のカヌー・フェスティバル・伝統踊りバージョンのハイライトは、2日目の夜に披露されたウェロイ地区はオカウ村を中心にする男たちによるトトモイ
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これはオカウ村の奥にあった神々の宿る村アログに伝わっていた踊りで、アメリカの時代になってアログ村が消滅するとともに長く途絶えていた。またこの踊りは本来、アログ村やオカウ村の外では踊ってはいけないとされていた。
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だから上の写真のように、入場した踊り手たちが両端からふたりずつ定位置につくときに、若いココヤシの葉でつくった「お払い」を前に投げている。これにはこの踊りを授けてくれた神さんに、村の外で踊ることの許しを請うという意味がある。
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昔々、アログ村の男が病気になり、ひとり村の集会場で寝起きしていたとき、夜な夜などこからかやってくる人々に出会い、男もそれについていくと踊りの練習をしていた。男もそれに加わっているうちに踊りもマスターしたころには病も癒え...というストーリー(やや詳しくはこちら)。神さんからもらった踊りだから、ちゃんと神さんのキマリに従わなきゃタタリがあるよと、今もまだなんとなく信じられている。とはいっても...踊りの前にオンナにさわっちゃいけないとか、酒飲んじゃいけないとか、そういった個々の踊り手へのキマリはどうかなあ...(ホントはこれ大事だと思うけど)。
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総勢60人ちかい男たちが勢ぞろいして踊ると、さすがにすごい迫力だ。もうひとつ今回のトトモイに気合が入っていたのは、事前の値上げ交渉のせいもあったかもしれない。

実はヤップの村々に踊りを要請すると、今の時代、それには対価が要求される。ここ数年はひと踊り600ドルで推移していたが、今回オカウ村はカヌー・フェスティバル実行委員会に800ドルへの値上げを要求した。どこかで踊りを披露するとなると、数ヶ月におよぶ連日の踊りの練習、衣装の準備...など、手間隙とコストがかかる。しかし踊りの謝礼が800ドルとなっても、これだけの踊り手に渡るのはせいぜいひとり10ドル前後、もしかしたら村(コミュニティ)にキープされるのかもしれない。いずれにしても大人数の踊りを組織できる村(コミュニティ)というのは、それなりに「まとまる力」=「リーダーシップの存在」があるということで、ヤップではとても評価されることなのだ。
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さて上下の写真から、踊り手たちの衣装の違いをご覧いただきたい。

左側の子供たちは赤フンだけで、右側の若者たちのようにハイビスカス(オオハマボウ)の繊維で作ったガル(化粧まわしのようなもの)をつけていない。ヤップ島の男の衣装にも年代によって違いがあって、子供のうちはフンドシ一丁、成長とともにフンドシ2枚、3枚と重ねて、最終的に(大人の男とみなされると)ガルをつけるようになる。伝統衣装の世界では身につけるものはファッションではなく、その者の立場や身分を示すものなのは、かつての日本でも厳格に行われていたのだけどね。
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なんたってトトモイは「あっちの世界」からもらった踊りだから、(そのせいかどうかはわからないけれど)ときどき奇妙な(この世のものとも思えない)掛け声が入る。踊り手たちの足元に置いてある「お払い」も、しっかり彼らを守っている!
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いよいよ踊りは最終章をむかえ、横一列から横列に隊形を変えた。わたしの隣に座っていたおばさんが「この春にやったときのより振り付けが変わったわね」と小さな声でささやいた。そう言われてみるとなるほど...。実はこの踊り、今年のバエル小学校の卒業式で復活させたものを6月末に一度納めて(踊り上げして)いる
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踊り手たちの退場が始まった(下写真)。二列縦隊で踊りながらゆっくりと移動していく。この世のものとも思えない奇声も頻繁に発せられ、踊り手たちの足取りもお化けチック(笑)でおもしろい。
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6月末のオカウ村の踊り上げで見たときには、どっぷりと日が暮れたあと弱い電灯ひとつに照らされて、より「お化け」の雰囲気が感じられたけれど、やはり振りのディテールまでは見えていなかった。しかしこうしてコミュニティ・センターの煌々とした明かりの下、しかも本来の村の外でこの踊りが披露されることに、アログ村の神さんたちはどう思うっているだろう。どうかなにもタタリが起きませんように。


第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(1日目)
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by suyap | 2011-11-26 13:02 | ヤップの伝統文化
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