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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(3日目)陸上編

さて陸上の展示も見るものいっぱいのカヌー・フェスティバル...と期待していたら、今年は初日も大雨の2日目も、プログラムには載っているそれらのブースを、わたしは見つけることが出来なかった(実際には1日目はテントも看板もないところで、カヌーのセイル編みとヤシロープ作りなどをささやかにやっていたというのだけれど...)。そして最終日になってようやくラーニング・センターの看板が掲げられ(このブース担当者によると、その日に初めて届けられたのだと)、少しは「それらしく」見えるようになった(笑)。
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そして今年のデモンストレーションの中でも特にわたしが期待していた(蛸ではないよ)フィッシング!ほんとうは前日の予定だったのだけれど、大雨でできなかったので凧つくりだけ、最終日にやって見せてくれていた。

凧フィッシングとは、パンノキの葉で作った凧に餌をつけたラインを結び、それを空高く揚げて魚を釣る仕掛けで、昔はヤップ島でも行われていたようだけれど、今や離島ですら絶滅寸前の漁法となっている。下写真は離島のおじさんが、若いおにいさんに凧づくりを指導しているところ。
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教えられたとおりに凧を作っていくおにいさん。どんな魚が釣れるの?と聞くと、サメの皮の餌でダツを狙うという。ダツの歯は細かくてたくさんあるので、サメ肌の餌をパクッとやると歯が引っかかって口からすべり落ちないので良いのだそうだ。
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大きなパンノキの葉に格子状にココヤシの葉の芯を通して、それらを完熟ココヤシの実の殻(ヤシ殻)からとった繊維でていねいに結わえていく。なかなか根気のいる作業だ。

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下がその材料のヤシ殻繊維(下左)と、ココヤシの葉の芯(下右)。ヤシ殻の繊維はヤシロープの材料だし、ココヤシの葉の芯は箒の材料になったり、日本の竹ヒゴのような感じでいろいろな細工に使われている。

第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(3日目)陸上編_a0043520_1723516.jpg第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(3日目)陸上編_a0043520_1722433.jpg
最後に組みあがった凧の真ん中に糸を取りつけて完成だ。糸の位置は先生役のおじさんが慎重に決めていた。今回は店で売っている白い糸を使ったけれど、伝統的にはハイビスカスの繊維でつくった糸(紐)が使われるという。
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パンノキの葉の凧はどのくらいもつの?「一週間くらいかな」 
今でも凧フィッシングしているの?「ときどきね」だって(ほんとうかな-笑)。

さらに、パンノキの葉で手間かけて作らなくても、今なら軽い布地とか、もっと丈夫な凧を作れる素材があるじゃない?どうしてそれらを使わないの?と聞くと、「昔からこうやっているから」だって。しかし若いおにいさんの答とは裏腹に、実際は離島でも凧フィッシングはほとんど廃れていると聞く。

さて凧づくりの横では、離島の女性たちが航海用の保存食づくりを始めていた。今年は下の2点が作られるらしい。左のチマキ風なのは、パンノキの実の保存食マールで、去年のカヌー・フェスティバルでも作っていたのと同じもの

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第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(3日目)陸上編_a0043520_1724833.jpgそして上写真左の包みの原料が←これ。バナナのすり下ろしたものと、同じくすり下ろしたガノルル(ホノルルのこと。ヤップ島ではこの品種のタロイモはライと呼ばれる)。

これらをすり下ろすとドロドロに緩かったはずの素材を、よくこのように包めたものだと感心する。これらを包むところも見てみたかったなあ...。

さて大鍋の水が沸騰したところでバナナ+ガノルル(ライ)の包みを下に、その上にマールを置き入れて、再び沸騰させたあとは中火くらいで延々と1時間近く茹でて、まずマールだけを先に引き上げて、バナナ+ガノルル(ライ)の包みはさらにもう30分くらい加熱する。

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そうして出来上がったのが下の写真。航海に携行する食糧として常温でもかなり日持ちがするように、このマール(下左)にはココナツミルクなどを混ぜていない。

一方バナナ+ガノルル(ライ)の包みを開けると中身はアルミフォイルで包まれており...やっぱり包みにくいものね(自然素材の場合はバナナの葉かな)、さらに切り分けたあとでココナッツミルクをかけはじめた。これは...航海携行用ではなくて、きっとおやつ用ですね^^

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さらにその奥では、ひとりの離島のおばさんが、黙々とターメリック(うこん)の葉のレイを作っていた。

第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(3日目)陸上編_a0043520_17265912.jpg海の競技を見るにもちょうど良い場所だったので、おばさんの隣に座らせてもらい、世間話をしながら作り方を教わっていると(実は知っていたのだけど...離島のほうがヤップより葉を細かく揉んで作ります)、出来上がりをひとつわたしにかけてくれた。

ターメリックの根は装身用(うこん)として、あるいは薬用や食用(春うこん)として、太平洋の島々の暮らしには今でも欠かせないアイテムだ。そして独特の香りがあるその葉も、日本風に言えばお清め効果も期待されて、レイとしてよく使われている。このレイのお陰でわたしも一日中ターメリックの芳香を嗅いで、気分さわやかに過ごせたのだった。

さて見ていたレースがひと段落ついて後ろをふり返ると、航海師のアリさんが子供たちに星の位置を教えていた。パンダナスで編んだゴザの上に、星に見立てた小石を置いてのレッスンだ。
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小石が定位置に並べられると、ココヤシの葉の芯を使って方位をとって、それぞれの星の位置とコースが説明される。こういうレッスンを子供の頃から耳にタコができるくらい聞きながら育ってこそ、大海原を自由自在に渡り歩ける航海師になれるのだ。頭じゃなくて身体で覚えなきゃ使い物にならないヨってことですね。
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とっても長居をしてしまったLearning Centerのブースを離れ、たくさん立ち並ぶ食品売りのブースをのぞいていると、ヤップ高校のブースで気になるサインが目に止まった!

なになにロワル(標準表記ではRoowael)の実や、バナナのアライ(同Araay)や、おなじくバナナのグモイ(同Gumoey)のパンだって?ところでファルボンフラボンって何?と聞けば、バナナのフロリダのことだって。なるほど、Feal>fal'(良い)+boen(匂い)でFal'boenね。確かにフロリダは良い香りのバナナだけど、フロリダをこう呼ぶのは初めて聞いた。
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これはぜんぶ味見をせねば...と買ったのが下の写真のケーキたち。左端から時計回りに、フラボン、アライ、ロワル、グモイ。果物そのものの甘さに加えて砂糖(たぶん+卵)もたっぷり入っていたので、大きな塊りの4種類を1/3くらいずつ試食するだけで頭がずきずき痛くなってきたけれど、それぞれの風味もしっかり生きていて、なかなか美味しゅうございました^^
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そして甘いものがたくさん並んだヤップ高校のブースの近くには、今年もWa'ab Community Health Centerのスクリーニング・ブースがあった。WCHCはコロニアの州立病院から独立してヤップの4ヶ所でクリニックを運営していたり、各種予防医療の普及に努めているヤップ州の保健機関で、大きなイベントがあると必ずブースを出して、立ち寄る人に身長、体重、血圧、脈拍、血糖値などの検査を無料で提供している。
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カヌー・フェスティバルの最終日の午後3時からはレスリングとプログラムにも載っており、初日に見に行ったときにはその場所まで用意されていたのに、その後情報が二転三転したあげく、やはりレスリングの試合は行われなかった。今年のカヌー・フェスティバルでは大雨にもかかわらず大奮闘を見せてくれた競技部門に対して、プログラムや会場セットアップについてはずいぶん不備が目立ち、関係者以外の見物人を右往左往させていた。果たして運営側は、それに気づいているのだろうか...。


第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(1日目)
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第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-陸上編
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第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-海上編
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2011-11-16 20:11 | ヤップの伝統文化
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