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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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タロイモは煮るのか炊くのか?

台所に二種類のタロイモが転がっていたので、一緒に「炊く」ことにした。

下の写真は、奥の切り口が真っ白なのが畑のタロイモのマルColocasia esculenta)、沖縄では田芋(ターンム)と呼ばれているタイプで、手前の黄色いのが田んぼに植えるタロイモのラックCyrtosperma chamissonis)、これはヤップ人にっとってはメインの「主食」だが、日本で目にすることはないタイプ。それぞれを皮付きのまま割って鍋に入れ、ひたひたの水を張っている。
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ところでヤップ島で「主食」とされるタロイモやヤムイモ、パンノキの実などを調理することを、このブログではいつも「炊く」と表現してきたが、あるときイモは「煮る」とするが正しいのではありませんか?という指摘を読者から受けた。う~ん...それでもわたしの感覚では「炊く」なんですけどぉ...と思いつつそのままになっていたが、さっきふと思いついて<煮ると炊くの違い>というキーワードで検索してみたら、おもしろいことが見つかった。

下はマルColocasia esculenta)の芋と畑。マルの小芋は早めに根を切って親芋を太らせ、約1年で収穫します:
タロイモは煮るのか炊くのか?_a0043520_2352861.jpgタロイモは煮るのか炊くのか?_a0043520_23525595.jpg
大阪の読売テレビ・アナウンサーである道浦俊彦さんのブログや、その他の記事を拾い読みした結果だが、どうやら日本語では古くはみな【煮る】だったところに、【煮る】の中から【炊く】という調理法(の表現)が、新たに独立して生まれたらしい。それで現在では、関東以北ではご飯を「炊く」以外はみな「煮る」と言うのに対して、関西より西や南では、ご飯以外にも【炊く】と表現するものが多くある...と。そういった場合の【炊く】と【煮る】の主な違いは、
【炊く】まったく味付けしないか薄味で、調理後に水分があまり残らない。調理中に材料を混ぜ返したりはせず、水や火加減の調整だけする。

【煮る】しっかり味付けされ、調理中も混ぜたり他の材料が加えられたり、そして調理後には汁気が残ることが多い。
へえ~~~! このほか【茹でる】(湯で煮る)という区別もあって、こういう調理法の表現から日本語の変遷や分布の仕方を想像するのも、おもしろいなあ。どうりで、広島出身のわたしにはヤップのタロイモは【煮る】んじゃなくて【炊く】じゃなきゃ、しっくりこないはずだわ。そういうわけなので、今後ともこのブログでは、イモやパンノキの実やバナナなど主食の調理法はすべて【炊く】でいきますので、どうぞご了承を!(笑)

下は田んぼで育つラックCyrtosperma chamissonis)、バスケットの中の右端のやつが収穫されたイモ、写真右のような田んぼで数年かけて親芋を育てて収穫します:
タロイモは煮るのか炊くのか?_a0043520_23522515.jpgタロイモは煮るのか炊くのか?_a0043520_23542047.jpg
ところでマルラック、一緒に炊いて良いものだろうか?

答えはイエス。日本時代になって金属製の鍋釜が持ち込まれるまで、ヤップの煮炊きは土鍋だった。だから当時から、いろんな「主食材料」をその調理時間に応じて調整しながら、ひとつの鍋で同時に炊いていたようだ。とくにマルラックは調理時間にそんな違いはないので、同じ鍋に放り込んで炊くには、まったく問題ない。

タロイモは煮るのか炊くのか?_a0043520_2351379.jpgもう当時の土鍋はないし、まして我が家の火は竈(かまど)の直火ではなくてプロパン・ガスだけど、さあ加熱開始です。

ヤップ式では芋の葉をぴっちりとかぶせて落し蓋代わりにするところ、あいにく家に芋の葉は無く、雨の中を代わりになる葉を外から取ってくるのもおっくうだったので、今回はひとまわりサイズの小さい鍋のフタを落し蓋にすることにしたズボラ・クッキングだけど...。

それでまず強火でグワ~っと煮立て、ガンガン湯気が上がって鍋蓋がぷくぷくしてきたところで、吹きこぼれない程度まで火を落とす。それから数十分、ときどき火と水加減を確認しながら放置...で出来上がり~♪

タロイモは煮るのか炊くのか?_a0043520_23515538.jpgこれが炊き上がった二種類の芋を盛り付けたところ⇒

手前の黄色が強いのがラック芋で、ビタミン・ミネラル・繊維質ばっちりの、ヤップの玄米的存在。奥のほうのがマル芋で、ややもっちり系だけど、こっちもしっかり腹持ちします。G嬢いわく、マル芋は同じ条件と環境で調理をしても、なぜか炊く人によって調理時間に差が出るもので、わたしはマルの炊き上げに時間のかかる人なんだとか。なるほど今回も、ラックとまったく同じ調理時間をかけたのに、マルの一部はまだ完全にアルファー化しておらず...(苦笑)。

基本的にはこういう主食の調理は「でんぷんを加熱によりアルファー化する」という行為だから、加熱のプロセスは米を炊くのとそんなに違わないはず。だからイモを直火で炊けるヤップ人は、教わらなくてもちゃんと米を直火で炊けるわけ。いまだに電気炊飯器でしかお米を炊いたことのない日本の方々、たまには鍋ひとつでご飯を炊いてみてはいかがでしょうか?(笑)


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2011-10-11 12:31 | ヤップの伝統食
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