遠い昔の海の上...トータルで2時間にも満たない小型船(13トン)操船訓練後の実技試験...手に汗して舵輪を握るも舳先は悲しいほどあっちフラフラこっちフラフラ、衝突を恐れて、接岸ラインは桟橋から5メートルに想定せよとあらかじめ指定され...(爆):
教官、わたし免状もらっても、ちゃんと操船できる自信ありまっせ~ん!!
〇〇さんよぉ、海は広いんだから、将来、自分の船持ったときに、ゆ~っくり練習すればいっから。海技免状はそんなとき、保安庁が来たら見せるために取っとくのさぁ。それに海は場所によってぜんぜん違うしよぉ、あんたの船とあんたの海で練習すれば良いのさぁ。
そうしてゲットした某国の1級小型船舶海技免状は当時、まだ表彰状のようにデカかった。まあ実技にはやたら甘いくせに、学科には微に入り細に入りやたらうるさいってのが、その国の国家免許試験の特徴で、お陰さまで、学科はよく勉強させてもらったなあ。
それ以来、その教官のお言葉に甘え過ぎ(とほほ)、またヤップに来てからは、すっかりすべてをわが信頼するキャプテン・チョメにまかせてしまい、いまだに接岸すらマトモにできないペーパー・ボートドライバなわたし...なのだけど、さすがに、これには驚いた...酷い!
あの海自イージス艦「あたご」が漁船にぶち当たって沈めた事故で、漁船「清徳丸」の父子2人を死亡させたとして業務上過失致死罪などに問われていた、「あたご」の当直責任者、自衛官2人に対して、なんと、きのう横浜地裁で無罪判決が出たという...(怒)。
GPSが水没して清徳丸のデータを復元できなかったため、検察側は、清徳丸の後方を航行していた僚船船長らの証言などを基に、衝突に至るまでの航跡図を作成し、海上衝突予防法に基づき、清徳丸を右方向に見る位置にあった「あたご」側に衝突回避の義務があったと主張していた。
一方、横浜地方海難審判所の裁決はすでに2年前(2009年1月22日)に出されており、その主文は:
本件衝突は、あたごが、動静監視不十分で、前路を左方に横切る清徳丸の進路を避けなかったことによって発生したが、清徳丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
海上自衛隊第3護衛隊群第3護衛隊が、あたごの艦橋と戦闘情報センター間の連絡・報告体制並びに艦橋及び戦闘情報センターにおける見張り体制を十分に構築していなかったことは、本件発生の原因となる。
としており、検察側の立件も、この海難審判の根拠となったシチュエーションをほぼ踏襲している。
それに対して弁護側は、←左図のような、清徳丸の構図を南東方向に600メートルもずらした航跡図を「証拠」として提出、「あたご」後方を通り過ぎるはずだった清徳丸が、衝突直前に大きく右転・増速したことが事故原因(つまり、あたご側には回避責任はなかった)と反論し、「航跡予想」に争点の主点を置いた。
事故が起きたとき、
「あたご」の乗組員が緑色の灯火を視認したという報道がなされていたため、わたしはてっきり「あたご」側が
行き会い船だと主張しているものと思って
「それはありえない」と書いたのだが、そうか、わざと清徳丸の航跡をずらして想定すれば...いちおう、回避船からは免れる...う~む。
そして
秋山敬裁判長は「あたご」被告人側の戦略にまんまとはまり、検察側航跡の根拠とされた僚船船長らの供述の信用性を判決で否定した...いったい、どういう根拠でもって、海難審判で採用された航跡予想を「否定」できるんだろう?
あんた、ハマにいる間に、船舶免許でも取って、じゃんじゃん船に乗ってみろよ(怒)。
うちの小さなボートでさえ、ヤップの商業港へ出入りする
大型コンテナ船の前をちゃっちゃっと横切ることが、ときどきある。そんなとき、まず読むのは、どっちに回避義務があるかってことと、相手の船足と針路(水路の中なのでこれは簡単)、それから、その前を突っ切って行く?それともスピード落としてやり過ごして後ろを行く?っていう判断をする。できることなら大型船の真後ろは通りたくないから、こっちに回避義務がないとわかればスピードを上げて、あまり接近しないうちに前をスイッと通っちゃいたい。ま、真昼間でしかも相手は徐行中なので、スコールで視界が極端に悪いとき以外は、そんなにムズカシイことじゃないけどね。
さて3年前の房総沖、まだ夜の明けない広い海を、小さな漁船団が、一路、三宅島沖の漁場を目指している光景を想像してみよう。そこにルンルンと北に向かって驀進する「あたご」。まさか平時に往来の多い海域でステルスごっこするわけない(と思いたい)し、漁船団が「あたご」に気づいて進路を確認する時間的余裕はあったと思いたい。しかし海自は「いきなり来やがる」という話も、小型船に乗ってる人からよく聞くんだけど...。「あたご」に気づいた清徳丸はたぶん、前を横切る余裕が十分あると思っていたのだろう。でも「あたご」のスピードが予想外に速く...。あっ、ヤバッと思って切った舵が面舵(右方向への回避)。
たとえ百歩譲って清徳丸が「あたご」の後ろを横切るつもりで進んでいたと仮定しても、なにが悲しうて、清徳丸から見て右前方向に進行する「あたご」に接近する形で、面舵(右転)切ろうか?そんなことは絶対にありえない。これは起訴された「あたご」当直士官らの、まるで「死人に口なし」といわんばかりの、コジツケだ(怒)。そもそも12分も前に漁船団に気づいていたのなら、その時点では「あたご」に回避義務があったはず(そのとき既に「あたご」が清徳丸から見て右前方に出ていたのなら、そもそも衝突する状況にはならなかった)、もう論理破綻もいいとこだ。おい
秋山敬裁判長、海の上の船の見え方や動き、ホントにわかって判決したの?
それでは先の横浜地方海難審判所の裁決を、「海」と「軍」のプロの目から見たらどうなるか?
〇
海を往く者:「あたご」海難審判裁決と勧告が示すもの
http://ukmto.at.webry.info/200902/article_27.html
私の注目した点は、原因の考察部分である。この裁決の考察部分と勧告書を予断無く読む限り、「見張り不十分。船舶運航の基礎が出来ていないので、指定海難関係人(組織としての海自)は本件に真摯に対応しなければならない」と読める。つまり、海審は海自の艦船運航能力および海上交通三法の部内教育・訓練について「現状不可(=信用ならない)」を突きつけた形になる。私としては「あたご」艦橋内のBTMが崩壊していたように思われる。なぜなら人数がいても当直要員のレベル差や情報の不足、速力などの要素によって環境条件が変わる上に、他の人間が見ているだろうと考えているようではBTMが機能していたとは言えない。(その後に公開された他の護衛艦の光景を見る限り、指導官の指示に明らかな不満顔の海曹・海士の表情から、あまり組織改善はされていないと思われる。)中には「漁船側を責めてもしようがないから、海自側で何とか事故を起こさないように指導して欲しい」と解釈した人間もいるようだが、それは間違っている。
同裁決では、「15条・横切り船の航法」だけの適用で、「もっと早く回避動作をとっていれば」と言っている。つまり、海審の判断は「事故を起こすような状況を作り出す前に回避しろ」ということである。これを「そんな簡単な状態じゃない」と主張するのならば、その見合い関係になるまで避けもせずに漫然と航行していることになる。この指摘をしている人間は、「大型船は小型船の動静を注視するために原則直進する必要がある」とも主張しているが、ほとんど回避の選択肢の余地が無い狭水道通過時とか湾内だとかいうならばともかく、まだ外洋である上に、出漁時間帯は大体読めるのだから、その船団の中に突っ込んで行ったのはどう説明されるのか?小型船においても大型船の動向が読めないという点を失念していると思われる。だから、操船シミュレーションでは、大型船と小型船のそれぞれの船長を招いて同時にもう一方の船で訓練すべきである。少なくとも「船員の常識とかけ離れたもの」という指摘にはあたらない(どうも入港後の「式典」が予定されていたようなので、意図的に通常の航路を外して時間を調整していた節がある)。
これをもっとハッキリ言ってあげると、イージス艦のエリート士官さんたちは、
ボクたち、アメリカさんとMDごっこやってきたんだもんね、カッコ良いでしょ。それに、うちの艦はMD搭載だもんね、ルンルン!もうすぐ横須賀、さあ飲めやれ飲めワイワイワイ!あっそうだ、「式典」に間に合うように帰港しなきゃなんないんだった、ドンどこ行こーぜ、ようそろ~、ゴーゴー!だったんだろうってこと。
いまだに海難審判の裁決が受け入れられず、自分らに落ち度はないと「盲信」し、シビリアン・コントロールを日和見と馬鹿にする中堅士官どもと、それを持ち上げる机上軍事オタども。でも、彼らには絶対に隠さなきゃならないヒミツが...。これ見つかったら、マジ、ヤバイし...(笑)。
そこでデッチアゲの航跡図を持ち出し、裁判の争点を、確たる物証のない「航跡予想」の議論に留めおき、あの晩の「あたご」内で行われていた大宴会や、保安庁が乗り込む前にその酒瓶を自衛隊のヘリで市ヶ谷に隠したことや、なんやかやを、隠蔽しとおしおった。
でもね、これを許すと、奴らはますます増長するよ。そして帝国海軍もとえ、日本海軍あれっ?そうそう海上自衛隊!は、世界中の笑いもの(もうすでになってるって?)、そして将来ますます、とんでもないことになると思うけど。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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