2月に入ってしばらくすると、今年もやっと、あちこちで、
ヤップデイ準備の動きが見えてきた。とはいっても、開催日だけは2月28日と3月1日の2日間と決まったものの、まだプログラムの詳細は何もわからない...いつものことだけど。
しかし
ヤップデイに踊りを提供する村々では、もう何週間も前から練習を重ねていて、踊りを本番(
ヤップデイ)に出す前の「検分式(Thuum' Buw)」を、早々とこの前の週末に行った村もあった。そんな村のひとつ、ソル(Thool)村の検分式を、わたしもG嬢ファミリーのビデオ係として(笑)、見せてもらいに行った。
ソル村は、G嬢のマキ(Maekiy)村とは兄弟村のような関係で、村人同士の親戚関係も多い。これらの地域にはかつて、ヤップの呪術=神様たちとの交信術がたくさん残っており、他地域の人々からも大事にされていたが、太平洋戦争後、アメリカが押し付けた「デモクラシーとキリスト教」によって急速かつ強制的に「消されて」しまい、村のステイタスもひどく貶められていった。わたしはそういう歴史を持ったこのあたりの村々を「ヤップ縄文村」と呼んでいるが、マキ村同様、ソル村にも古い石貨がたくさん残っている。
いよいよ踊りが始まった。G嬢ママによると、この踊りは本来、年配の男たちだけで踊られるものなのだが、現在この村に残っている年配者は少なく、上位の隣村、マ(Maaq)村と、もうひとつの兄弟村マダライ(Madalaay)村にも応援を頼み、踊りを語り継ぐ伝えるために、若い男たちも参加させることになったという。
なるほど、だから若い男や子供まで
バギ(ヤップ成人男性がフンドシの上につける横帯)をつけ、赤い
ガル(バギの上を飾るオオハマボウの繊維で、やはり成人男性のみ着用。若いうちは生成りだが、地位や年齢により赤く染める)を着けているのね。
ソル村の公民館(ペバイ)のステージ(マラル)に勢ぞろいした50人近い男たち、それを見守る親戚縁者たちであたり一体は人だらけ、中には赤ちゃんや小さな子供もたくさんいるのに、1時間近いパーフォーマンスの間、立ち上がったり泣いて騒いだりする子はひとりもいなかった。さすが!村のホンモノの行事は、
ヤップデイなんかとは大違いだ。
ふたたびG嬢ママの解説によると、この踊りの謡はヤップ語ではなく、ヤップ州離島の古語だという。大昔、この村の女と結婚して住みついた離島の男によって伝わったものか、それとも何かの意図があってヤップ語を避けたのか、今では誰も知らない。しかし踊りの所作やリズムは、離島のものとは大きく違い、まさしくヤップの踊りそのものに見える。
言葉が違うので、謡を聞いただけでは、ヤップ人にもストーリーがわからない。しかも古語で韻をふむので、この踊りに出ているG嬢のおじさんの奥さんは離島の人だけど、彼女にも最初のフレーズしか解読できないという。まわりの女たちになんとなく伝えられているのは、「遠くの島に船出する父と息子の話...」という程度だそうだ。
踊りの真ん中と両側中ほどに、ずば抜けて上手い年配の男性がいた。この3人と後ろの謡手の年配者の顔つきがみんな似ているので聞いてみると、G嬢の大おじさんたちとのこと。あとの若い連中の所作は...上手そうに見える男でも「ショー」的な動きなんだよね...まだまだ練習や心構えが足りん、首が動いとらん、な~んちゃって、わたしもいっぱしのヤップの踊り批評をやっちゃったりして(笑)。
そして長い踊りの最中に、はあはあ息を切らしてるのが主に若い連中だったのも興味深かった。やっぱり小さいときからの食べ物と、日ごろの労働量の違いかも?ヤップの男なら、ジャンク・フードを止めて、もっと芋を食べろ!もっと漁に行け!もっと踊りの練習をしろ!な~んちゃって(笑)。
踊りの激しい動きで、男たちが身につけていたココヤシの若葉の飾りが、あちこちに落ちていた。踊りが終わって男たちが退場し、わたしたちも帰ろうと立ち上がりかけたとき、G嬢ママが小さい孫に、
あそことそっちと向こうの飾りを拾ってきて!と命じた。孫がマラル(ステージ)に降りて拾いに行くと、再びG嬢ママ、
それじゃない、あっち!と指示している。なんでかな?と思って聞いてみると、
踊りのあと、自分の飾りをマラルに残しておくのは縁起が悪いのよ。うちの弟(G嬢オジ)が落とした飾りは、わたしが手伝ったんだし身内だから拾わせてるの、なんか気持悪いしね。いまは気にしない人も増えてるけど...
と言いながら、まだたくさん落ちている飾りを放ったままで帰ろうとしている人々を見やった。なるほど...こういう「気持悪い」という身体感覚からくる躾って、わたしがいまだにお茶碗にご飯粒ひとつ残せないのと同じで、大事デスネ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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