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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-陸上編

早朝の雨も止んでカラリと晴れあがり、適度な風にも恵まれたカヌー・フェスティバルの2日目は、ほぼ定刻どおりの午前10時過ぎに始まった。
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幸いダイビングも他のツアーも入っていなかったので、ラジオ局の実況放送やフェスティバル実行委員会の無線会話を店の中で聞きながら、たまに海上競技や陸上ブースのアクティビティを見に、大混雑の外に足を運んで過ごした。この記事では、その陸上編をまとめておく。

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↑ここ↑は、かつて長い航海にも携行されたパンノキの実の保存食、マールの作り方を実演しているブース。上右の写真で容器に入っている薄黄色のものは、土中あるいは密閉容器に入れて数週間から数ヶ月かけて発酵させたパンノキの実に、水を足してよく揉み洗いしたあと、きめ細かい布(枕カバーが重宝される)で水分と酸味を漉し取ってから、砂糖やココナッツ・ミルクを適宜加えて↓下準備したものだ。出来上がりを長く保存用するときには、これらの混ぜものは加えない。

このパンノキの実の発酵食品マールは、主にヤップ州離島の食べ物だ。季節に応じていろいろな作物が採れるヤップ島では、パンノキの実を保存しなくても食べ物は豊富にあったので、マールのようなものは発達しなかった。

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さて上記のものを、ヤップ語でリーチと呼ばれる葉っぱでチマキのように包んでいく。ちょっと固めのホットケーキ・ミックスくらいのものを、まったくこぼさず、さっさと包んでいくおばちゃんの手さばきはさすが!くくっている紐はパンダナス(タコノキあるいはアダン)の枯れた葉を裂いて作ったもの。リーチや紐などラッピング素材も、すべて身のまわりで調達できる。

第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-陸上編_a0043520_22582253.jpg第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-陸上編_a0043520_22584616.jpg
すべてのマールを包み終わると、かき集めてきた枯れ枝やヤシ殻でサッサと火をおこし、チマキがかぶるくらいの量のお湯を沸騰させてマールを入れ(上写真左)、茹でること約20分で出来上がり。出来立てほやほやのマールを、わたしも1本もらっちゃった(上写真右)。食感はういろうに近い。

第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-陸上編_a0043520_22592445.jpg会場にはコミュニティや個人が出店した食べ物を売るブースもたくさん出来ていて、お昼前になると、あちこちからBBQの良いにおいが漂ってきた。

カメの肉やローカル・チキンの丸焼き、その他いろいろなローカル弁当も並んでいたけれど、ひと袋1ドルのパンノキの実のチップスと取れたてのサカナの空揚げを買ってきて、もらったマールとそれらをお昼に食べると、お腹一杯になっちゃった。

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食べ物の話はこれくらいにして...(笑)、今回の展示でわたしが最も期待していたのが、↑これ(上写真)、日本風にいうとカヌーの「船魂さま」のようなものかなと、わたしは解釈している。この人形は2面を持っていて、片面は人間、もう片面は半分人間半分お化け的存在の顔だという。

人形のボディと、それが入っている鉢はパンノキで出来ており、人形に入魂する儀式では、この鉢に炊いてつき潰したパンノキの実を山のように盛り上げ、離島の女たちが織った布(ラバラバ)でくるんだものが用意される。そのまわりで行われる様々な所作や呪文を通して初めて、人形にスピリチャルなパワーが加わる。

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この船魂さまの足はエイの棘で出来ている(上写真左)。ひとたび入魂されると、これは悪天候、悪海況、悪霊、あるいは人間の敵など、航海中のすべての困難と戦う武器になるという。「ここに展示しているのは入魂されていないから、触っても大丈夫、売ってあげるよ」と、人形の作者であるサタワル島のJさん、航海師がこれを使って悪条件と戦うときの所作を見せてくれた(上写真右)。

航海術訓練の総仕上げに行われるポー儀式(航海師の卒業式のようなもの)では、卒業生は航海術の大先生から初めてこれを授かる。ポー儀式を終えて一人前の航海師となったあと、航海師は海に出るとき常にこれを携行し、陸にいるときは特別な場所で保管する。入魂された船魂さまを粗末に扱ったり、まして他人が盗んだり売ったりすると、必ず天罰が下るからご用心!

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隣のブースでは、黙々とココヤシ繊維のロープづくり(上写真左)と、ミニチュアのカヌー作りが行われていた。

ココヤシ繊維のロープは、完熟したココヤシの実(コプラ)の外皮をしばらく海水につけて腐らせたあと、洗って繊維だけにしたものを、撚(よ)って綯(な)って作られる。ミクロネシアの伝統建築では、どんなに大きなカヌーや建物でも、すべてのパーツはこのロープでくくって造られている。

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少し離れたブースに、カヌーに入ってくる海水(アカ)をくみ出す道具を彫っているおじさんがいた(上写真左)。ちょっと木の色が変わっていたので尋ねると、なんとアカシアだという。今では空港や道路わきなどで普通に見かけるアカシアだけど、これがヤップにもたらされたのは、太平洋戦争の後、アメリカの時代になってからではないだろうか。「この木はテリハボクに次いで丈夫なんだよ」とアカ汲み器作りのおじさん。その隣には、ネズミ捕りを大きくしたようなフィッシュ・トラップも置いてあった(上写真右)。

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そして、こちらはカヌーのパドルを彫っているおじさん。この木の色合いもアカシアっぽかったので訊ねたら、やっぱりそうだった。「離島にはアカシアは無いでしょう?普通は何を使うの?」と聞くと、やはりテリハボクがベストとのこと。ブースの前には完成品が25ドルで売られていた。

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一方、↑こちら(上写真左)は、チュグピン(Chugping)と呼ばれるヤップ島カヌーの一種を復活させようとしているもの。このチュグピンが現役で活躍していたのは1920年代ころまでか?わたしも写真でしか見たことがないので、これが完成されて水に浮かぶ姿を早く見てみたい。

その隣では、チョウナでカヌーの胴体を掘る作業が行われていた。いろんな男がとっかえひっかえチョウナを手にしていたので、カヌー彫りの体験教室みたいなものをやっていたのかしら?

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そして子供たちは、どこでも水遊びが大好き!レースに出場するカヌーの乗下船場は、いつのまにか子供たちの水浴び場と化していた。

ツーリストのためには、伝統カヌーへの体験乗船を、お一人様ひと乗り5ドルで受付中。しかし...大会関係者の意気ごみにも関わらず、このカヌー・フェスティバルの期間中にヤップを訪れているツーリストはほんのわずかなので、期待したほどの収益にはなっていないだろうな...。

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↑こちらの方々↑も、朝も早くから総出で大張り切りだ。カヌー・フェスティバル期間中、マリーナから先とガニール橋は、午前9時から午後7時まで全車両通行止めとなる。その交通整理と監視が主な任務だろうけど、連日ご苦労さんです^^

またヤップ州立病院は最新鋭の救急車(上写真右)を待機させて緊急事態に備えるだけでなく、人の集まるここぞとばかりに、体重や血圧・血糖値まで測定してくれるブースを設けて、メタボ解消=成人病予防、早期発見の啓蒙活動に励んでいた。
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近くのコミュニティ・センターでは朝からローカル・バンドの生演奏が続いており、主にティーンエイジャーたちで、観客スタンドは常時かなり埋まっていた。ここからは沖に出たカヌーの様子もよく見えるし、それに何より涼しいし…。

第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-陸上編_a0043520_23132745.jpgヤシ酒を振舞うプログラムが今年は中止されたかわり、ヤシ酒を売ってくれるブースがちらほらあった。

マリーナ・レストランがうちの桟橋の目の前に出したブースでは、なんと、ヤシ酒1杯1ドル!とはいっても、女だてらに真昼間から人前でヤシ酒をあおるのはためらわれ…(笑)、それでも気になって仕方ないので、他のお客さんが途切れた隙を見はからって、たっぷり2杯分は入るマイ・カップを持参し、ヤシ酒のテイクアウトに成功したのだった(笑)。


第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(1日目)
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第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)-海上編
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第二回ヤップ・カヌー・フェスティバル-伝統踊り編
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第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(1日目)
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どしゃぶりの第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル(2日目)
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第三回ヤップ・カヌー・フェスティバル-伝統踊り編
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by suyap | 2010-11-13 23:14 | ヤップの伝統文化
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