ヤップでは朝夕サーと雨が来て、やや雲がちなお天気が続いています。そんな中、わたしは何日もブログを放り出し、パキスタンからイランを経てアフリカはケニアの草原をさまよい、挙句の果てはいまだ出口の見えない御巣鷹山のまわりを、ぐるぐるまわり続けておりました...。
そう、何をいまさら...ですが、ゲストが置いていってくださった
山崎豊子さんの沈まぬ太陽を初めて手にとって読み始めたら止まらなくなり、
最終編まで読了した今もまだネットを巡り続けているのです。(上の写真はヤップの夕陽、わたしの住まいは東側なので、島の高台から西の海を眺めて撮りました)
ちょうどこの小説が連載されていたころ、ある事情で3年近くも日本の土を踏みませんでした。ネットも使い始めたばかりだったし、もちろんヤップからはJALに乗りようがないから、JALが週刊新潮を機内から排除したなんてことも知りませんでした。それにしても幼稚なオジャルですねぇ(笑)。
そんなわけですから、今回読み始めるまで、この作品は全編
1985年8月12日も御巣鷹山で謎の墜落を遂げた日航123便を巡る話を扱っているものと思い込んでいました。したがって
恩地元という主人公のモデルとなった小倉寛太郎さんのことも初めて知ったのですが、もう8年も前に亡くなっていたのですね...
ご存知のとおり、
沈まぬ太陽は、大会社から不当な扱いを受け続ける主人公・恩地元を中心に描いた
アフリカ扁上下、123便事故や遺族をめぐる実録ともいえる
御巣鷹山扁、政・官・財ずぶずぶのどうしようもない会社の建て直しがなるか~やっぱりダメだったぁ...という昨今の現実に連なる
会長室扁上下からなります。アノ会社を描くには、やはり
御巣鷹山扁は避けて通れなかったのでしょうけど、この件はまたあとで。
それで
アフリカ扁で山崎さんが描いた主人公・恩地元の思いや行動があまりにもわたしにドッピーンと響いたので、いったいどういう人がモデルなんだろうとググッたら、
恩地元のモデルとされる小倉寛太郎さんにたどり着きました。晩年の彼は
アフリカの野生動物や野鳥の本や写真を、様々な媒体に発表したりしておられたのですね。
沈まぬ太陽の連載が始まって以降、元の会社関係者らが吐き出す陰湿な誹謗中傷脅しはいまだに続いているようですが、ご本人が人前に出てご自分のことを語ったものはほとんどなく、ただひとつネットで見つけることができたのが、1999年の東大駒場祭での、なんともカッコ良いスピーチでした。これこそ小倉寛太郎=恩地元さんなのですネ:
〇
『沈まぬ太陽』の主人公が語る・人間として信念をつらぬくということ ~「私の歩んできた道」駒場からナイロビまで~
http://minseikomabahongo.web.fc2.com/kikaku/99ogura.html
アマゾンのカスタマーレビューで、
報復人事は許し難い。しかし、恩地の生き方は筋を通す立派さというより、いささか子供じみている、というか、夫や父親としてどうか、という疑問を感じてしまう。独身の時にやれ、という感じだ。
なんて書いてる人がいましたが、どうしようもない理不尽な
大きな力に追い詰められた者の総毛立つような修羅をご経験ないのでしょう。わたしはご本人の弁に全面同意!です:
それでよく質問されるんですけど、「そんなにいじわるされてどうしてやめなかったのか」。それは「このやろう」と思ってやめてやろうと思ったときだってありますよね。しかしね、やめるとよろこぶやつがいる。~~中略~~ みんなが手を挙げてやめてよかったというのならやめていますよ。しゃくにさわるやつが喜んで、がっかりするやつを悲しませちゃいけないと思ったんです。
でも、そこまで強く修羅になれず中途半端で妥協しちゃった者からすると、こういう人の存在は自分を否定されるようでコワイのでしょう。そういう輩が
大きな力の手先となり陰でゴニョゴニョうごめいて誹謗する...。
小倉寛太郎さんのスピーチの中から、とくにわたしの印象に残ったフレーズを書き出してみます:
●肩書きは仮衣装
若い諸君に申し上げたい、世の中にいろんな肩書きがありますよね、何とか会社の取り締まり課長だとか、総理大臣とか、そういう団体の肩書きは自分の本来のものだと思わない方がいい。これは、結婚式の時の仮衣装だと思った方がいい。その時はきているけど、時期がきたらぬいで返すんです。それがわからないのがね、しつこく天下りするんです。~~中略~~ くれぐれも仮衣装を自分のものだと思わないこと、そして仮衣装を脱いでも、着る自前の衣装をお持ちになることを、今からこころがけるよう申し上げたい。
●お辞儀の角度
(お父様から学んだこととして)「お前が大きくなったら、非常に残念なことだけれども、今の世の中では、相手によってお辞儀の角度は変えなきゃいけないことがありうる。しかし、その振幅は最低限にしろ」
●人間は弱い。だから団結と連帯が必要だ
現在の日本の労働組合が、リストラの名の不合理な首切りに抵抗できない日本の労働組合はヌーじゃないかと思うんです。やはりバッファローにならなきゃいけないんだと思うんです。(肉食動物にやられちゃうヌーとバッファローの群れの違いを引き合いに出すというところが小倉さんらしいです)
●必要なこと=冷静な頭脳と温かい心
それから必要なことは、冷静な頭脳と温かい心。これ逆の人がたくさんいるんですよね(笑い)。
●自然における人類の位置
保護というのは力の優位にあるものが、劣位にあるものに対して使う言葉です。自然保護をするほどそんなに人類は偉いのか。その自然保護という言葉自体が人類の大きな思い上がりだと思います。~~中略~~ それと同じようになことが、なんとかに優しい、地球に優しい、環境にやさしい、ということがあるんですが、これも力の優位にあるものが劣位にあるものに対しておこなう、あらわす感情、もしくはおこなう動作です。~~中略~~ 地球にやさしい、環境に優しいという言葉も思い上がりなんです。地球に従順な、環境に従順なということをいわなければいけないと思うんです。
●異文化への理解の必要性
異文化への理解しないととんでもない思い違いがおきる。~~中略~~ 文化が違って、向こうの行動が理解できないと、人間って、必ずしも善意にはとらないんですよ。悪意にとっちゃうことが多いんですね。
●別の角度から日本の社会と日本人を見る必要性
日本にいると森にいて木を見ずになる。~~中略~~ (ある若い女性訪問者)マサイはいまでも世襲制の酋長がいるんですね」(小倉さん)「いるよ、でも日本だっているじゃない」(あっはっは、天ちゃんのこと?)
そして最後に、
東京大学とは、日本国にとって、日本国民にとって何なのか?を若い東大生に語ります:
てっとりばやく言うと高級官僚養成というのが大体の要請で帝国大ができた。~~中略~~ 「日本を滅ぼしたのは、帝国陸軍と帝国大学法学部だ。東大法学部は亡国の学部だ・・・親父の言うことは少なくとも法学部に関するかぎりあたってきつつあるんじゃないのか ~~中略~~ まかりまちがっても法学部にいくな、法律・経済・文学というのは、学校に行かなくてもできる。大学に行くんだったら、観測設備と実験設備の必要な学部へ行け。法律・経済・文学、これはやる気と本さえあればできる。
東京大学の設立の主旨は当時つくった明治政府が国と政府のためというふうに言われたかもしれないが、現在の日本においては、国民が東京大学に期待するのは国民の側にたった学問、知識をしてくれるところであろうと私は思っています。学生諸君はいろいろなことをして、苦しい道で生計費を稼いで雇われたり、自分で経営したり苦労するだろうけど、東京大学で学ぶこと、学んだことは、国民のために還元するんだという観点をぜひもっていただきたいと思います。
もうひとつ驚いたのは、小倉さんのイトコは2人も特攻で亡くなっていて、そのうちのお1人は学徒出陣で
人間魚雷・回天乗員に割り当てられ、なんとヤップ州のユリシー環礁近海で戦没されていたこと:
945年1月、南太平洋のウルシイというところの敵艦隊に突入して死にました。おそらく敵艦隊にはぶつかれなかったと思います。というのは十重二十重の防潜網がある。その母艦はかえってきませんでした。母艦の潜水艦はレーダーでいち早く探知され、あるいは発射前に母艦ともども沈められたのではないかと思います。
これはまさしく
伊号第四八潜水艦のことでしょう。意外なところで小倉さんはヤップともつながっていました。
沈まぬ太陽と小倉さんや伊藤淳二氏について、
日経新聞の「高尾」記者とみられる人物(
沈まぬ太陽の中では「日本新聞の鷹名記者」として登場)が
こんなツッコミどころ満載記事を書いていますが、そこに出てくる
伊藤淳二氏を誹謗する本を書いた人物というのは、「ラジオ関東に労働組合つぶし要員として入社したヤツ」だそうです。
この記事も根拠の示せないストーリーの羅列でネチネチと嫌らしいばかりですが、日本航空の腐った構造を指摘する者に加えられる誹謗というのは、みんな同じような腐臭を発しています。実際に小倉さんが会社員人生を賭けて対峙していたものについては、↓これら↓のサイトから、小説以上の迫力で読み取ることができます:
〇
日本航空機長組合:-考察・「沈まぬ太陽」-
http://www.jalcrew.jp/jca/public/taiyou/taiyou.htm
〇
日本航空ジャパン乗員組合:沈まない太陽
http://www.jaspu.or.jp/topics/sizumanaitaiyou.html
〇
論壇:日本航空、昔話
http://www.rondan.co.jp/html/ara/jal2/index.html
〇
『沈まぬ太陽』『不毛地帯』原作者・山崎豊子さんインタビュー
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10372877090.html
映画や小説とともに上のリンクを読むと、すごいリアリティで迫ってきますね。それにしても再びアマゾンのカスタマーレビューに戻りますが、
沈まぬ太陽を「読んではいけない本と聞いていたけど...」と書いているのがいて笑ってしまいましたが、後でハタと考えこみました-これも会社側の手のこんだ印象操作か、さもなくば、こんな幼稚なレベルで社員のマインド・コントロールをしているのだなあ...と。
いつもながら長くなってスミマセン。ヤップの日の出とともに
御巣鷹山扁にも触れておきます。
事故原因に関して、山崎さんはあとがきで、「他に異説があることも承知しているが、事故調のような科学的な実験データによる立証が得られなかった」として、「『事故調査報告書』に基づき、隔壁の修理ミス説を採った」としておられます。この小説が書かれた90年代後半では仕方がなかったかもしれませんが、事故調の科学的実験データのいかがわしさは、その後たくさん明らかになってきています:
〇
日本航空機長組合:123便事故特集
http://www.jalcrew.jp/accident/index.html
事故原因を圧力隔壁の破損によるとする『事故調査報告書』では、
急減圧があったという前提のもとに成り立っていますが、残された証言や写真など多くの点でそれがムリな前提であることは、科学的に実証されています。生存者は耳も痛くならなかったし、強風も感じなかったし、気温の急激な低下も感じなかったし、なにより酸素マスクなしで生存できたてた!こんな急減圧環境などあり得ない事は、いつも高圧環境へ行ったりきたりしているダイバーなら、身体で知っています。
高度1万メートルでは0.2気圧になりますが、ドーンという音がしたときの123便はもう少し低くて7600メートルくらい、それに客室の与圧は0.8気圧くらいですから、一気に高度と同様の気圧までの急減圧が起きたとしても気圧差は0.5から0.6気圧ぐらい?この圧力差はたとえば水面から5~6メートルほど潜るのに相当しますが、それが瞬時におきちゃったら、ほとんどの人が中耳の圧平衡(耳抜き)が間に合わず耳に痛みを感じ、中には損傷をおこす人も出ます。一方、0.5から0.6気圧ぐらいの急減圧の勢いで、尾翼を吹っ飛ばすほどのパワーが生じるでしょうか? わたしの感覚ではNOです。スクーバタンクには通常200気圧くらいの圧力を充填していますが、それを0.6気圧くらいまで減らしてバルブを全開してもそんなにパワーはありません。フル充填のバルブを開けたときはすごいですけどネ。
気体は圧力が減ると体積を増し温度は下がります(ボイル・シャルルの法則)。だから急激に減圧がおきると一気に「冷え」ます。スクーバタンクのバルブを開くと、バルブやタンクのまわりに見る見る水滴がついてきて冷たくなります。また再圧チャンバー内では、加圧時にはむんむん暑くなっていき、減圧時にはどんどん涼しくなります。これダイバーの常識ね^^
それに上空で圧力が低くなるということは空気が薄くなってるということで、とうぜん酸素濃度も薄くなっており、そんなところに人間が置かれると、長らく水を変えてない水槽の金魚の口パク状態になってすぐに酸欠を起こします。ところが息苦しさを感じた様子はなかった...
発表されるボイスレコーダーの解読文もころころ変わっていってるし、なぜか事故後15年を過ぎるまでボイスレコーダーの音声を公表しなかったし、おまけに事故調はすでに123便事故の膨大な調査資料をかなり廃棄しちゃったとか。そういう行為がすべて日航をめぐる政・官・財の闇のなかに隠されていて、同じような構造が日本全土を覆っている...危ないデス、ほんとうに。それらにしっかりノーといえる
政路家をはっきりと見極めて戦略を練り、7月11日の決断をしたいものです。日本という島に住む人々が沈んだままおぼれちゃわないために、みんなでヌーではなくバッファローにならなきゃね。
(追記)
〇
JAL123便 パイロットの苦闘(総集編)
http://www.youtube.com/watch?v=wEEQP9HzKm0&feature=related
〇
JAL123便 パイロットの苦闘(技術編)
http://www.youtube.com/watch?v=ewHOhpuwA8s&feature=related
〇
キュメンタリー ・ パイロットの苦闘 御巣鷹山の悲劇
http://www.creativesystemservices.net/jal123/index1.html
〇
ドキュメンタリー ・ パイロットの苦闘 御巣鷹山の悲劇2
http://www.creativesystemservices.net/jal123/index2.html
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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