午後3時過ぎ、TNS(トラディッショナル・ナビゲーション・ソサエティ)から電話がかかってきた。5月13日昼過ぎにグアムを出航したヤップの2隻の伝統カヌーのうち、
マソウ・メラムがヤップ島の北端に到着したという。それで、
マソウ・メラムがヤップ島の中心地・コロニアへいたる水路に到着したら、うちのボートで曳航してくれないかと。
それで、現在地はどこなのよ?と聞くと、正午の段階でヤップから30マイルとか...。
う~ん、沈んだ島シピンを過ぎ、ヤップがようやく薄く見えるあたりだなあ...、コロニアに近づくのは夕方遅くなるんじゃないかなあ...、
今日の風なら入港は明日朝になるんじゃないの?と不安に感じながらも、隣のダイビング・サービスの主、Fさんと相談して、うちがボートを提供し、彼がスタンバイして操船するということになった。わたしもFさんも、このカヌーには友人や友人の息子が乗ってるので、やはり気になるしね...
※この記事は昨夜(5月17日)に書き始めましたが、写真をポストしたあと両瞼を開けてられなくなり、今朝の投稿になりました。
それでボートの用意をしてスタンバっていると、午後5時半頃、風が弱くて日没までにコロニアに到着できそうもないから、もっと島の北のほうから曳航してくれ~と、TNSより少し上の方の筋から電話がきた。既にマリーナ・レストランはヤップ州のエライさんに貸しきられ、続々と関係者が到着し始めていた。
それで、カヌーの現在地はどこデスカ? マアプとガギルの間らしい... あわててガソリン・タンクをもうふたつボートに積みこんで、日没と追いかけっこしながらボートを走らせた。
マソー・メラムには、緯度経度を発信する単純な器機、島が近づいて電波が届く範囲内になったら使えるハンドラジオ、それにそれぞれのクルーの携帯電話しか積んでないはず。
お~い、今どこだい?とキャプテンのTさんの携帯にFさんが電話すると、なんとまだマアプ沖とのこと、ぜんぜん距離が縮まってないじゃん...。
なんとかまだ薄明かりのあるうち、ぎりぎりセーフという感じでカヌーに到着してみると、わたしたちより先に出たボートに乗った入国管理官と税関職員が、ちょうど手続きを終えたところだった。クルーはみんなヤップ人とはいえ、グアムから帰ってくる場合はちゃんと入国審査と税関検査を済ませないとならないんだね。
カヌーの様子はといえば、若いクルーたちはみんなおそろいのTシャツでおしゃれをして、元気そうに漂っていた。それを見て、わたしたちのほうが、かな~り気抜けして、かわりに、ず~っと気になっていた疑問が押さえがたくなってきた。
ほんとうに曳航してあげなきゃいけないのかしら?
帰りの
マソー・メラムには、キャプテンTさんを入れて、ヤップ人6人、離島人2人、それにグアム人1人まで加わって総勢10人もいた。写真で見ても、なんか「満載」って感じでしょ。
わたしたちの到着を見て、いそいそと帆をたたむクルーを見ていると、
どうして曳かなきゃいけないんだろうという思いがますます強くなり、日が暮れいく中で重いカヌーの曳航が始まると、Fさんも、わたしも、同乗してきたVちゃんも、だんだんに口数が少なくなって
ビールだけが減っていった(爆)。 実は、長旅で喉が渇いているだろうと、Fさんとわたしでビールの差し入れを用意して行ったのだけど、さすがキャプテンのTさん、マリーナに着くまでそれは控えておきますと。だから、わたしたちの前に飲み物だけはふんだんにあったわけで...(笑)
ここらでちょっと説明しておくと、このカヌー航海はまず、4月の始め、TNS所属の遠洋航海用カヌー、
マソー・メラムと
シミヨン・ホクレア、それに両艇に乗り組む22人のクルーたちを、ヤップ州東の離島、
ラモトレック環礁まで、州の連絡船で運ぶことから始まった。4月中旬過ぎ、キャプテンAさんとヤップ州離島人のクルーが乗船する
シミヨン・ホクレアと、キャプテンTさんとヤップ島人クルーが乗船する
マソー・メラムの両艇は、その
ラモトレック環礁からグアム島に向けて出航し、無事に4日間と半日の航海を終えた。そしてグアム島でしばらくの休息と補給の後、今回はグアム島からヤップ島まで戻ってくる旅だったのだ。
グアム島とヤップ島間の距離は直線でおよそ725キロ、
新幹線の営業キロ数でいうと、ちょうど東京-岡山間くらいかも。1986年にもヤップ島からグアム島まで行ったカヌーがあって、その航海では、6月で風の静まった季節とはいえ、9日間を要した。今回は、昨日までけっこう貿易風が強かったので、順調に風に押されて4日間でヤップが見える位置まで到達したということだろう。
もし曳航を依頼されなければ、というか、カヌーやヨットの普通の旅であれば、このまま日没後もヤップの沖をゆっくり漂って過ごし、翌朝、明るくなってから、堂々とコロニアへの水路を自力で入ってくれば良い。だから、この風と海況では、やはりグアム島-ヤップ島間は約5日の道中という推定が妥当だろう。カヌーを曳航するボートに乗りながら、なんで曳航しなければならないんだろう...という疑問が、わたしたちの頭から消えなかった。三日月に照らされた海の波高は2メートル足らずで、曳航というミッションがなければ、わたしたちでさえ一晩中外海で漂ってても良いかもと思える、素敵な夜の海だったのに。
カヌーにたどり着くまでは30分ちょっとだった距離が、それを曳航しての戻りは5倍以上かかり、ようやく、州のエライさんが借りきって待つマリーナに到着したときには、すでに午後9時半をまわっていた。それから、マリーナ・レストランではエライさん主催のレセプションが始まったけれど、Fさん、VちゃんとそのボスのCさん、それにわたしたちは中には入らず、桟橋の暗がりで手元に残ったビールを飲みつつ、ほんとうの伝統航海とはねえ...ブツブツ...と語り合ったのだった。
PS:
キャプテンAさんの率いる
シミヨン・ホクレアからは、本日(5月18日)朝の時点になっても連絡なし。
しかし、わたしも含めて誰も心配はしていない。きっとヤップ島の近辺で釣りでもしてるんだろうさあ~と。
エライさん主催のレセプションのため曳航されて帰ってきたカヌーと、マイペースで堂々と自力帰還するカヌーと。いつも他方に「花」を持たせるような「演出」をする離島人のキャプテンAさんに、今回も心あるヤップ人は賛辞を惜しまないだろう。さてエライさん、Aさんとそのクルーにも、またマリーナ・レストランを貸切にして、飲み放題・食べ放題のレセプションをするのでしょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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