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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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カテゴリ:ヤップと日本のメディア( 10 )

TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その参

その壱 | その弐

そして、TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤップ編のヤラセ、勘違い&捏造の映像は、いよいよクライマックスを迎えるのであった(笑)。

パンノキの実がインポーズされている砂浜の画がでてきたとき、なにやら嫌な予感がしたのだが...
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やはり、悪い予感は的中した。砂浜の海岸から掘り出されたのは、どこかで作ってあらかじめ埋めておいた、パンノキの実の発酵食品、マール。

マールというのは、ヤップ州離島(ヤップ島ではない)のパンノキの実の保存食品で、パンノキの実を収穫したあと、バナナの葉やパンノキの葉を敷きつめた土中に埋めて作るが、こんな砂浜には絶対に埋めない。 こんな場所に埋めたら、すぐ潮が侵入してくるし、台風でも来たらひとたまりもないし、第一砂まみれになって食べられたもんじゃないではないか!

a0043520_8264623.jpgマールをつくる場所は、標高の低い平坦なサンゴ礁島でも、やや内陸のちょっと高めの土地が選ばれる。現代のヤップ島に住んでいる離島の住人は、土中に埋めないで、クーラーボックスを活用している。わたしもそれで作ったことがあるけれど、量の加減も簡単にできるし、発酵したのを取り出すにも手間がかからないので、たいへん便利な方法だ。

a0043520_8274189.jpgところが、この砂まみれの哀れなマールを見よ!何の権利があって、他国の他人の食文化を、こんなにも冒涜できるのか!!!

このシーンを見るたび、わたしの頭は怒りでブチ切れ、悔し涙が心を濡らす。この行為は、パンノキの精に対する宣戦布告であり、離島の人々の食文化に対するレイプである!!!

a0043520_8292372.jpga0043520_8282780.jpg
石橋奈美:これは一ヶ月砂の中で発酵させたパンノミです。鋭い香りが、鼻をつく香りがしてきました。発酵させたパンノミは、赤道直下でも3ヶ月は日持ちするという、ヤップならではの保存食焼いた新鮮なパンノミに、発酵させたものをあわせれば、さらに美味しくなるといいます。バナナの葉っぱで包みます。それを炭の上に置きました。そして蒸し焼きにすること1時間、掘り起こしてみると、蒸気がたくさんついてます。出来上がったのは、マールと呼ばれる伝統食、サツマイモのような色をしています。ぬか味噌のような香りと、ちょっとチーズのような香りがします。けっこう酸味が強くて、食感はサトイモのような感じです。味は美味しいですね、これ。
もう、言ってることも、やってることも、めちゃくちゃだ:

1)土地が広く、パンノキの実だけに頼らなくても他の食料が豊富なヤップ島では、パンノキの実の発酵保存食品は発達しなかった。マールはヤップ州離島の食べ物である。その説明が抜けている。

2)発酵したマールを洗いもせず、こんなに黒焦げにした新鮮なパンノキの実を混ぜるなどという料理法は、ヤップ人も、ヤップ州の離島人も、誰も見たことも聞いたことも、とうぜん試したこともないという。この場面を見て、マールを知らないヤップ人はキョトンとし、離島人は怒りと悲しみに引きつった顔でカラカラと笑っていた。

3)蒸し焼きにすると言いながら、炭の上に直に置くとは、なにごとぞや?アンタら、蒸し焼き料理のイロハも知らないのだろうね!?

a0043520_8302280.jpg案の定、赤い矢印の先を見よ!これは市販のBBQ用の炭だ。

この炭をおこして、その上に直にパンノキの実を乗せりゃあ(たとえそれが炎の消えた炭であっても)、焦げてしまうのはあたりまえダネ。でも、それでは蒸し焼きにはならないし、パンノキの実の中まで火は通らないよ。だいたい、ヤップじゃ誰も、市販のBBQ用の炭で料理なんかしない(怒)。

ホンモノの土蒸し料理(ウム/アースオーブン)とマールの作り方は、この記事にも載せている:
ヤップデイ続き-女の仕事①
http://suyap.exblog.jp/5196595
2008年のヤップデイ-食べ物編
http://suyap.exblog.jp/6874909

a0043520_8312393.jpg←これが、似非マールの出来上がりだそうだ。黒いぽつぽつは、新鮮なパンノキの実の焦げた皮か?まずそう...

いくらヤラセ爆発とはいえ「世界ふしぎ発見!」ヤップ編がここで見せようとしていたのは、ヤップ人がカヌー航海に持っていった保存食品だったはずだが...。こんなパンノキの実の料理法では、保存食品どころか、ちゃんと口に入る食べ物にもなりはしないだろう。

a0043520_8373659.jpgどうして身近なローカルのアドバイスを受けなかったのかと不思議で仕方がないのだが...
石橋奈美:これは昔から、こういう風に食べられているものなんですか?

EP:そう、遠くの島に行くときには、欠かせないね。

石橋奈美:みなさん、そうやって食べ方を受け継いでいるんですね。
このヤップ人のEPさんを、彼のお父さんや伯父さんの代から知っているが、どうして彼がこのような協力の仕方をしたのかと、いろいろ想像を巡らせている。一番あり得るのは、日本人らがすでに何もかも決めてしまっていたので、口を出さなかったというケース。たぶん、取材グループが何をやりたいのか、撮りたいのか、彼にはわからなかったのだろう。単純に、日本のテレビに協力することがヤップの宣伝になると信じて。

そして、噴飯ものの「似非」文化の紹介はまだまだ続いていくのであった...
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石橋奈美:ヤップ島では、赤ちゃんが産まれるとすぐに、あるものが与えられます。そして、それは一生、その子のものになるのです。では、赤ん坊が生まれるとすぐに与えられるものとは、いったい何でしょうか?
ひとつ前のシーンでは、ヤップ州離島の伝統保存食品マールの、しかもデタラメな偽物を、ヤップ島の保存食品として紹介していたけれど、今度は、ヤップ島におけるプロパティ相続のことを言いたいらしい。この部分はヤップ島だけのことで、ヤップ州離島では通用しない。

すなわち、ヤップ島では、ヤップ人の親から産まれた子供にはヤップの名前が与えられるが、その名前には、タロイモ田、畑、屋敷、山、魚をとる海のエリア(漁業権)など、自給自足を保証する諸々の不動産と権利(+義務)が付随する。そして素行が悪いと、その名前を剥奪されるという事態さえ起こりえる。

a0043520_8394410.jpgまあ、そういう伝統が、今までヤップを急激な開発から守ってきたのだけれど(これからはわからないけれど)、この番組がここで答として認めたのは、なんと「土地」だけだった!左(左上)の回答の中には、〇や△をつけても良さそうなものがあるにもかかわらず...。まあ、この番組を作った連中がハッキリ理解していないのだから、問いを作るにも、答を作るにも、頓珍漢なのは仕方ないのだろうが、視聴者の懸賞品がかかってるんだから、もっと責任持ってもらわんとなあ(爆)。

ことほど左様に、この番組は、根拠のない幼稚な断定(見てきたような嘘を言い、ヤップ州離島のことと、ヤップ島のことをまぜこぜにして、現地の人々や文化を軽視・愚弄し、日本の視聴者に間違った情報を与えるような、極めてレベルの低い番組であるわけなのだ(怒)。

a0043520_8405419.jpgそれを象徴するのが、このような場面だね→

赤ん坊を抱いたオバちゃんは、日本人の撮影スタッフに言われるがまま、とりあえず身近にあった踊り用の「晴れ着」をつけての登場となったのだろう。いっぽう赤ん坊のほうは、紙オムツをして洋装、手には引っかき防止の手袋までしてもらっている。このギャップについて、撮影した側はなんとも思わなかったのかね?

同じような状況を日本の例でたとえると、農村にアメリカのテレビ・チームが取材に入り、日本人の「伝統的な暮らし」を見せると称して、オバちゃんに振袖を着せ、紙オムツをした洋服の赤ん坊を抱かせているの図。わたしだったら、こんなに失礼な出演協力は絶対に拒否するけれどね。ところで、石橋奈美はこのオバちゃんのことを、「2ヶ月前に赤ちゃんが産まれた」と言っているけれど、もちろん、この子はオバちゃんの産んだ子ではないし、オバちゃんの名前もビミョーに違うんだよね~(笑)。

a0043520_842178.jpgさて、この噴飯番組も、そろそろ大詰めに入ってきた。場面は、このブログでもよく紹介しているTNS(トラディッショナル・ナビゲーション・ソサエティ)のカヌー建造現場に移る。
石橋奈美:これ1個の大きな木をくりぬいているんですか?

TF:マホガニーの木を3つ組み合わせて造っているんだ。

a0043520_8445538.jpgヤップの伝統カヌーは、3つどころか、実際にはたくさんのパーツを組み合わせてあるのだけれど、それにしても、マホガニーという翻訳では、日本人にはどんな木なのかわからないではないか。ちゃんとテリハボクという標準和名もある木なのに。

それはともかく、トンデモな解説はまだまだ続く:
石橋奈美:遠洋航海にも耐えられるこのヤップカヌーこそが、3000年以上前太平洋を渡った人々が乗っていたものと同じものだと考えられています。サラガンさんの元には、今ではハワイなどからカヌーの製法を教わりに来ると言います。こうして、ヤップだけに受け継がれてきた伝統が、世界の常識を変えたんです。
ひぇ~ほ~っ、このような大嘘やデタラメには、まったくコトバを失うばかりでゴザイマスダ(激怒)。

a0043520_8462972.jpgそれにもかかわらず、トンデモ解説はまだまだまだ続く:
ナレーション:アジアからはるかイースター島まで、数千年をかけ旅したといわれている太平洋の人々。だが、ひとつだけ謎があった。実は、西から東への移動は、海流も風も逆向きで、3000年以上も昔にどうやって航海したかわからなかったのだ。
嘘も休み休み言いたまえ!今も昔も、島づたいに天気や風を読みながら帆を上げるのは、帆掛け舟の常識デス。

ここで唐突に、仰々しく、ハワイのホクレア号のことが述べられるのだが、こういう、関係ないシトのノーテンキな御託とハワイ(+アメリカ)崇拝が、いかにミクロネシア人の気持ちを逆なでするか、気づいてないとは、ご愁傷様:
ナレーション:しかし、その謎をめぐる議論は、近年一艘の船によって、ついに終止符が打たれた。1976年から昨年まで行われた実験航海に使われたのは、およそ2000年前に造られた大型カヌーを再現したもの。これで、実際に人々が太平洋を自らの意思で航海したことを証明しようとしたのだ。だが、当初このプロジェクトには大きな問題があった。ほとんどの太平洋の島々では、当時の航海技術がすでに失われてしまっていたのだ。そんな中、注目されたのが、伝統的な航海術を受け継ぐヤップの人々だった。彼らの技術によって、航海は見事に成功、謎とされてきた人類の冒険が真実だったことが証明されたのである。
ホクレアの航海を手伝ったのは、ヤップの人々じゃないっつーの!(怒)

a0043520_8472099.jpgこの番組がそれほどまでに持ち上げるホクレアの航海なるものが、実際にはどんなもんだか、↓これら↓の記事をとくと読んでみられよ:
アリンガノ・マイスとホクレアがヤップに到着
http://suyap.exblog.jp/5295771/
アリンガノ・マイスとホクレアがパラオにむけて出発
http://suyap.exblog.jp/5321433/
ヤップのホクレア号
http://suyap.exblog.jp/5422748
アリンガノ・マイスが新しい就職先に向けて出航

a0043520_9163221.jpgそして突然に出てきたこのシーンは、おそらくホクレアの船上風景だと思うけど...
石橋奈美:こちらのセサリオさんこそ、そのときのナビゲーターに選ばれた方のひとり
馬鹿も休み休み言いなさい!2007年のホクレア航海は、セサリオ氏のお父さんであり、1970年代からホクレア航海を指導したサタワル島のマウ・ピアイルグさんに、お礼としてアリンガノ・マイス号を送り届けるというのが、もともとの主要なミッションだったのだよ。今はパラオにいるセサリオ氏にも、この番組のDVDと翻訳をすでに渡してあるからねっ(怒)。

a0043520_8482666.jpgノーテンキで頓珍漢の暴発はまだ続き...:
石橋奈美:実はナビゲーションの技術は、島の人間以外に教えることは昔から禁じられています。しかし、今回、特別に門外不出の航海法を少しだけ教えていただきました。
またまた、なんでも「わたしたちだけ特別」を強調して視聴者を騙すってわけデスカ?

だいたい、ミクロネシアの伝統ナビゲーションの基本知識は、すでに色々な研究者によってあらかた文献になっているはず。しかし、「知識」だけでは大海原に出ては行けないわけで、その文献に出来ないソフトの部分、これを秘伝といえば言えるかもしれないが、カヌーに触ったり、航海の大まかな知識を聞いたぐらいで、秘伝の伝授とは何事か(爆笑)。

a0043520_8492045.jpgまた、セサリオ氏の口から出た言葉として日本語の吹き替えがしゃべっている「(航海)技術が受け継がれるのは、もともと一子相伝で」というのも、真っ赤な大嘘だ。セサリオ氏がそんなことを口にするはずは、絶対にないし、まして、母系社会であるヤップ州の離島では、父系社会に由来する「一子相伝」という概念すら存在しない。

a0043520_8501386.jpgこの番組収録から間もなく、セサリオ氏はヤップを離れてパラオに行くことを決断した。彼がそういう決断に至った理由はたくさんあるのだろうけれど、この「世界ふしぎ発見!」の収録によって、それに協力した地元の人々の間に、いささかの波風も立たなかったとは言いきれない状況があったということだけ、ここに記しておく。



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TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その壱
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by suyap | 2009-09-15 23:55 | ヤップと日本のメディア

TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その弐

その壱 | | その参

a0043520_314317.jpgさて、シーンはガギル地区のワニヤン村からマアプ地区のオチョラップ村に移り、またまたヤラセの大爆発!ヤップ島式に正装した成人の男たちが、石貨を運びながら登場してきた。
石橋奈美:実はこの石貨、日本から来た私たちのために、島でも特別に価値が高いものを用意してくれたものなんです。
はああ、それがなにか? なんでも「わたしたちだけ特別」を強調して視聴者を騙したいその心理、いったいどこから来るもんなんデスカ?「わたしたちだけ特別」というなら、なぜそういう待遇を受けられたのか?「特別に価値が高い石貨」というなら、それをどうやって見分けるか?そこまで説明してもらわなきゃ、何の説得力もないでしょうに。(あっ、このセリフ、一般視聴者にではなく、スポンサーの日立さんに言ってたの?-爆)

a0043520_315279.jpgやがて、筏(いかだ)に組まれた石貨は、これまた正装のヤップ男たちが操るカヌーで、リーフの中だけを帆走しましたとさ(笑)。
ナレーション:このアウトリガーカヌーは、もともと東南アジアが発祥、彼らがアジアから太平洋に乗り出した証拠のひとつとされている。紀元1世紀ころから、20世紀半ばまで、このカヌーで、ヤップ島の人々は、石貨を500キロ、東京-大阪間にあたる距離を運び続けていた。このような習慣があったからこそ、ヤップ島に伝統の航海術が受け継がれてきたのだ。
もう、聞いてるほうが恥ずかしくなっちゃうくらい、根拠のない幼稚な断定(見てきたような嘘を言い)と、空虚なコトバが炸裂しまくってるけれど、
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1)太平洋の人々がアジアから渡ってきたことは、カヌーに限らず、いろいろな面から広く知られているし、

2)なにも記録の残っていない過去を、「紀元1世紀ころから、20世紀半ばまで」とはっきりした数字をあげて断定する破廉恥な神経など、わたしのような一介のツアー・ガイドですら持ち合わせないし、

3)ヤップ島における航海の伝統が、離島に比べて急速に廃れた事実や、その理由についてまったく触れてないし、

視聴者がちょっとでも頭を使って考えたら、上のナレーションはなんのこっちゃ?の空虚な言葉の羅列に過ぎんのだが...(怒)。

a0043520_3154649.jpgまあ、どうせ、その程度のオツムの人々が作ってるバラエティなのだろうから...と怒りを静めつつ先を続けることにすると..
石橋.奈美:クエッションは、ミクロネシアにやってきた人々が、必ずカヌーに乗せていたものからです。その昔、近隣の無人島にあるものを持って行き、そのあとしばらくして、それが育っていることを確認してから移住していき、大海原に点々とする島々に広がっていったと考えられています。
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石橋奈美:正解はこちら、ヤシでした。
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きゃ~きゃ~きゃ~、ここんとこも、うちのスタッフ全員で笑い転げたオカシナ場面のひとつでして...
ナレーション:ヤシの実がアジアから太平洋の島々に自然に漂着しても、長い間海水に漬かっているため、芽を出し成長することはない。これさえあれば生きていけるという、万能なヤシをまず育ててから、人々は西から東へと移住していったという。
またまた、根拠のない幼稚な断定(見てきたような嘘を言い)しちゃってる!

昔も今も、人々は発芽できる完熟したココヤシの実(コプラ)を携えて航海に出ることに変わりはない。それはまず第一に、コプラは食料としても長持ちするからだ。また余ったコプラが行く先々の島で芽を出し根を生やし広がっていったことも間違いではない。だが、長時間海水に浸かったココヤシの実でも発芽することは、研究者の論文を読まずとも、南の島では常識デアール!したがって、この答も、いったい何のこっちゃ?ナノデスヨ。

万能なヤシをまず育ててから、人々は西から東へと移住という部分に、うちのスタッフ全員から激しくツッコミが入った:
わざわざココヤシの実だけを植えに渡り、それを確かめにまた行くなんてこと、誰がするもんか。しばらく住むつもりなら、もっといろんなものを持って行くさ
だって。ハイ、ごもっともで!(笑)

a0043520_318157.jpgそれで、←このココヤシの実。ジュースもだいぶ甘くなって、果肉も分厚く、飲みごろ食べごろというところだけど、まだ完熟するには、ほど遠いって感じ。

ココヤシの実は、成長段階によって、ジュースの味も果肉の状態や厚さも、まったく違う。だから、自分で木に登って採る場合は、そのときどきの好みや目的にあった実を採ってくれば良いわけなのだ。

a0043520_3194666.jpgふむふむ、美味しそうにココヤシのジュースを飲んでいるのは良いけれど...
石橋奈美:ヤシはミクロネシアで命の木と呼ばれる万能の植物、たとえば、その実から取れる繊維を利用してとても強いロープができるので、集会場など伝統的な建築に欠かせない建材としても使われます。
ちょっと、待ったあ~~~!!

a0043520_321998.jpgヤシロープにする繊維は、自然に木から落ちた実(コプラ)からのみ取れマス!キッパリ。

←↑これって↓、今じぶんが飲んだココヤシの実の皮じゃん!こんなんじゃ、弱くてすぐ腐って、ロープどころか、コヨリにすらならないよ(爆)。

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ヤシロープ作りの様子は、こちらの記事に出ているから、どうぞ(登場人物がみなフンドシ姿なのは、ヤップデイという祭りの出し物だったからで、普段のヤップ人はこんな格好で生活はしておりません):
ヤップデイ続き-男の仕事
http://suyap.exblog.jp/5189280/
2008年のヤップデイ-2日目
http://suyap.exblog.jp/6859793
さて、数々の勘違いと大嘘をばらまきながら、ミステリーハンターの探求はまだ果てしなく続くのであった...(脱力)

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石橋奈美:これにタロイモやバナナを入れるそうです。このバスケット、赤ちゃんの揺りかごにも使われます。
オイオイオイオ~イ!生のココヤシの葉で編んだ上のヤシの葉篭は、たしかにタロイモなんかを入れて運ぶのに使ってOKだけど、それに赤ん坊なんて入れたら、すぐに破れて赤ちゃんが落っこっちゃうよ!

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↑赤ん坊を入れる篭↑は、同じココヤシの葉でも、ちゃんと煙で燻して熱処理したものを使い、編み方も、ハンドルの材質もつけ方も違って、丈夫で長持ちするように作ってある。そういう説明をしないで、生の葉の篭編みシーンからすぐに赤ん坊の入った篭じゃ、大きな誤解を招くだけ。まあ画を撮ってるヒトもしゃべってるヒトも、その違いを知らなかった可能性も大きいけどね(爆)

a0043520_3294427.jpgさらに、もうひとつの壮大なヤラセが始まった。まだ4月の貿易風の強い時期に、松明をたくトビウオ漁を、カヌーを使ってヤラセようとしていた。(さすがに風が強くて中止といっていたけど、明らかに、これは画と撮るためにカヌーを出させたものだね)。

ちなみに「日立世界ふしぎ発見!」の製作会社はテレビマン・ユニオンで、この会社、10年くらい前にも、ヤップのトビウオ漁を取材しに来ていたっけ、それも同じマアプ地区の違う村で(笑)。もちろん、そのトビウオ漁も「撮影のための」ヤラセだったのだけど、そういう情報のストックがあったからこそ、今回の取材でも、トビウオ漁にこだわったのかな?確かに「画」にはなりやすい。

a0043520_3483772.jpgヤップ島のトビウオ漁は、伝統的には、なかなかややこしい、たくさんのキマリごとに従って行われていたようだ。昔は、今のように個人が好き勝手に漁に出るということはなかったし、取れた魚を配分するときのキマリごともしっかりあった。トビウオ漁に関しては、とくにそれがヤヤコシかったと聞いている。
ナレーション:海を知り尽くしているからこそ、危険な夜の海にも出ることができる。ヤップの男たちは、かつて、このトビウオ漁に参加することで、一人前の男として認められた。
オイオイオイオ~イ、ここでもまた、根拠のない幼稚な断定(見てきたような嘘を言い)デスカ(笑)。

実際には、「海を知り尽くし」たから「一人前の男として認められて」トビウオ漁に参加できたわけじゃなく(「海を知り尽くす」だなんて、なんと不遜な言い方だろう!)、多くのよその村を巻きこむ大掛かりで儀式的要素の強いトビウオ漁に参加することが、「一人前」の男としての通過儀礼ではなかったのか?

現代のヤップ島では、こういうテレビ取材でもない限り、トビウオ漁は行われなくなっており、若い頃にそれらを経験したことがある世代も、どんどん少なくなりつつある。


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TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その壱
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by suyap | 2009-09-15 23:42 | ヤップと日本のメディア

TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その壱

その弐 | その参

a0043520_0323366.jpg番組を録画したDVDを送ってくださった皆さん、お待たせしました~!(なんと1年半も)。去年の5月17日(土)に放映されたTBS「日立世界ふしぎ発見!」のヤラセ爆発ぶりを、これからメッタ斬りしま~す。

テレビ局の宣伝にまんまと引っかかり、「日立世界ふしぎ発見!」をドキュメンタリーだと信じてたり、少なくとも「他のバラエティと比べれば良質」と思っている人も多いようですが、実態は現地の人々や視聴者を馬鹿にした悪質なヤラセ!番組です。

a0043520_0332531.jpgヤップ編についても、その内容はあまりにも酷くデタラメで、「斬る」にしてもいったいどこから手をつけて良いやら...。おまけに録画を見るたび、わたしの頭と心臓はバフバフとオーバーヒートを繰り返すし(これこそ怒り心頭にしていうやつね)、気にはなりつつ、つい時間が経ってしまいました。でも、今から思えば、もっと早いうちに、これを書いておくべきだった...

a0043520_255273.jpgというのは、この番組に登場した石橋奈美というタレントが、その後、ヤップ取材をコーディネートした日本人と結婚してヤップに住み始め、その「ダンナ」の手伝いで自分とこのツアーをガイドするだけならまだしも、なんと、ちゃっかりとヤップ観光局からギャラをもらって、ヤップの宣伝をするということになってしまった。まわりの日本人らに乗せられて、日本の元女優という触れこみで観光局に売り込んだらしいが、年齢的にも30歳を過ぎ、実態的にも先細るテレビ・タレント稼業に見切りをつけて引退した元キャンペーン・ガールが、プロダクションのバックアップもなしで、いったい何ができるというんだろうね?

a0043520_034522.jpgだいたい、嘘とヤラセででっち上げた世界ふしぎ発見!のような幼稚なノリで宣伝してもらっても、それを信じてヤップに来てしまうシンプルな人らに対応しなけりゃならないのは、われわれ現地のツアー・オペレーターなわけで、ホントに困ったものなのだ。

でもまあ、日本もどんどん不景気になって失業率も上がっているし、こんなバラエティ番組を信じてパッとヤップに来れてしまう人種はめちゃ少なくなっているだろうから、あまり心配しないでも良いのかもしれない。でもそれならばなおさら、少ない観光予算の中からワラをもすがる思いで日本の元女優の威力に賭けてみた、日本の事情を知らないヤップ観光局とこちらの観光業者を、まんまと騙して観光予算をパクッたことになるんではないかい?

しかしまあ、こんな質面倒くさいことを書いても、たぶん本人も取り巻き日本人らも、それがわかるセンスをお持ちじゃないだろうから、まずはモンダイのTBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤップ編の大嘘つきとデタラメぶりを、とくと説明して差し上げましょっ。少なくとも、「世界ふしぎ発見!」のような大嘘とヤラセで、ヤップの宣伝をしないように!(怒)


a0043520_036155.jpg長いことヤップにいれば、海中でも陸上でも、たいがいの画は、どこで撮ったかすぐにわかるんだけど。

ちなみに、←このマンタちゃんは、ミル・チャネルの「あの場所のクリーニング・ステーション」の「あのサンゴ」の上を通過中デスネ(笑)。
ナレーション:現れたのは全長5mの巨大マンタ。めったに遭遇できないダイバー憧れの生き物に、ヤップではほぼ確実にあうことができる。
オイオイオ~イ、いくらなんでも5mはないでしょ、それじゃタタミ6畳以上の広さだよ(爆笑)。まあ、これくらいの誇張はカワイイものとしても、
石橋奈美:このマンタ、普段は深海にいるため、なかなか姿を見せないのですが、深海のすぐ側にサンゴ礁があるヤップでは、熱帯魚たちに身体を掃除してもらうため、集まってくるんです。
オイオイオ~イ、深海ってのは、いったいどのくらいの深さのことを言ってるの?はっきりいって、ヤップ島のまわりはそんなに深くない!ちょっと島を離れると、大陸棚200mくらいの水深になるのは、どの島でもアタリマエで、うんと深いヤップ海溝までは相当な距離があるし、「島のすぐそばに深海がある」といえば、パラオのほうがより当たっている。もちろんマンタの主な食事場は深い海のプランクトンだろうけど、それはなにもヤップ島のまわりだけとは限らない。実際にマンタは何百キロも泳いで島から島を渡っている生き物だ。このような、根拠のない幼稚な断定(見てきたような嘘を言い)は、この番組のコマッタ特徴のひとつだ。
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石橋奈美:そんなマンタが泳ぐ海の底で、ふしぎなものを発見しました。なにやら穴の開いた石の彫刻が沈んでいます。いったいなぜ、このようなものが海に沈んでいるのでしょうか?
へえ、「石の彫刻」ねえ...石貨のことを言ってるのだけど、実はこのミル・チャネルの海中石貨、2つ上の写真のクリーニング・ステーションのそばに設置してあり、昔から、いろんな番組に登場してマス(笑)。

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で、この番組に出てくる2つの海中石貨を仔細にチェックすると...
右上のは通常の設置位置で撮った画デスネ。もともと、この石貨はミル・チャネルの違う場所にあったものだけど、ずいぶん前にヤップのあるダイビング・サービスが、ダイバーが見やすいよう、この場所に移したものなのだ。
それで、ひとつ上の、マンタも写りこんでいる画の石貨をよく分析してみると(写真左上)、ななななな~んと、右上の石貨を裏返して置いただけだというようにも見えるが(笑)。他所んちの海中に設置してあるものを、勝手に移動させて画を撮るってことは、しないですよね、いくらなんでも>>テレビマン・ユニオンさん&水中撮影担当の越智隆治さん!!(←はじめ、お名前の表記を間違っててゴメンナサイ)

(追記1)
水中カメラマンの越智隆冶さんから直接ご連絡をいただきました。左上の石貨は水深25mにある別の石貨だとのこと。あそこの石貨でこんなにマンタのからみが撮れたのなら、すごいですねえ、越智さん!あそこの石貨はもう長いこと見てないし写真もストックしてないので、今度行って写真を撮ってきて検証します。続編乞うご期待!


やがて番組の画は陸上に移り、ヤップの石貨の由来を説明するわけだが...
a0043520_0482368.jpg

はあああ?大理石デスカ?どこのガイドブックを見ても、ヤップの石貨はフツー、パラオ産のライムストーン(石灰石)だと紹介されているけどね。大理石じゃマーブルでライムストーンじゃないし... まあ大理石も石灰岩が熱変成してできたものだから、当たらずとも遠からずではあるけれど、ところでパラオって大理石が採れたっけ?(笑)

a0043520_0544151.jpg←このスタジオMCのオッサンも(名前忘れました)、石橋奈美やナレーション同様、それが脚本だとはいえ、よくもまあ、見てきたような嘘を平気で述べ立てておられます。さて...
ナレーション:太平洋の島々に暮らす人々は、3000年以上前、アジアから大海原を旅したといわれている。だが、今では遠洋を旅した航海の技術は失われ、それがどのように行われたのか、謎とされてきた。ところが、その航海技術が、このヤップ島周辺にだけ、奇跡的に残されていたのだ。
別に謎なんぞじゃないっつーの。この番組のもうひとつの大きな問題は、ヤップ州離島のことと、ヤップ島のことをまぜこぜにして、現地の人々や文化を軽視し、日本の視聴者を惑わす編集なのである。

東西1000キロ以上もの広大な海域を占めるヤップ州には、少なくとも4つの主だった言語とそれにともなう文化がある。とくにヤップ島と、その他のヤップ州離島の言葉や文化は、たとえて言うなら日本語と朝鮮語くらいの違いがあるわけだ。外国のテレビ局が日本にやってきて、日本人と朝鮮人の出演協力者を得ながら、双方の文化を勝手にまぜこぜにして、まことしやかに大嘘を語る図を、想像してもらいたい(怒)。

a0043520_0555471.jpg取材は去年の4月、たったの7日間だった(それでも昨今のテレビ取材の中では長いほうだけど)が、そのすべてはヤップ島で行われた。しかし、そこに動員されたローカルの協力者たちはヤップ島人だけでなく、ヤップ州の他の島から来ている、文化も言葉もヤップ島人とは異なる人たちも混じっていた。それなのに、番組では彼らの文化や言葉の違いどころか、それぞれの島の名前すら説明しない。
石橋奈美:実は近年、このときに使われた航海技術にこそ、人類が行った大冒険の謎をとく鍵が隠されていることがわかったのです。
実態の伴わない空虚なコトバの氾濫が今の日本の特徴だけれど、このセリフもそのひとつだね。地球上の人類は、それが海であれ陸であれ、広大な地域を渡るためのナビゲーション技術を、みんなそれぞれ持っていただろうということくらい、ちょっと考えれば想像できることじゃないか。

ところで、ヤップ島の陸地の近くを走る船の上で、この画のように女が立ち上がるのは、ヤップではとってもお行儀の悪いことだとみなされる。たとえば、うちのボートでわたしがそれをやったら、番頭のチョメシット・ダウン!と叱られちゃうよ(笑)。

a0043520_051918.jpgさて、やがて番組の画は、ヤップ州の中心地、コロニアを映し出した。←この交差点は、わたしが勝手にヤップの大手町交差点といっている場所だけど、右手の(これもわたしの呼称で)晴海通りの先にうちの店はあるわけで...(そんなこたあ、ここでは、どーでもいいって-笑)。

a0043520_0501625.jpgそれでまあ、この美しくも静かなコロニアのラグーンを望みながら、石橋奈美はこうのたまった:
石橋奈美:しかし、すこし町を離れると、うっそうとしたジャングルが生い茂る光景に変わります。
そして、いきなり画は↓こちら↓に切り替わるわけだが:

a0043520_052763.jpga0043520_0525195.jpg
この↑どちらの場所↑も、コロニアから車で30分くらい離れたところだけれど、実は、これらの画に写っている道のすぐそばまで、舗装道路が通っているわけで(爆)。この部分は視聴者にはけっこう印象的だったようで、あの番組を見た人がのちにヤップに来て、島の北から南まで舗装道路が走っていることに驚いていた。ヤップを原始的で未開な土地として宣伝することで、誰が得するのデセウカ?

a0043520_0575330.jpgこんなデタラメ番組のストーリーも、いよいよヤップの石貨へと移っていき...
石橋奈美:なんとこれらは、世界でもここだけで今も通用する石の貨幣、石貨なんです。まさに現存する世界最大のコイン
オイオイオイオ~イ、ヤップの石貨は、貨幣でもコインでもないってば(怒)。石貨をはじめとするヤップの伝統的なモノは、人と人の絆を結ぶツールであって、貨幣やコインではない~~~!のです!!!

a0043520_1241441.jpg貨幣経済でしかモノゴトを図れない発想では、こういうヤップの伝統的なモノと、小さなコミュニティ同士の共生社会のシステムは、とうてい理解できるものではないだろう。しかし、これを理解して説明できなかったら、ヤップ島のツアー・ガイドとしては失格です。

a0043520_2571051.jpgところで、この撮影をした場所は、マキ村の集会場(ペバイ)。現在そこには建物はないが、ヤップの村にとっては建物がなくても集会をする場所(ペバイ)であることに変わりない。ヤップの村の集会場(ペバイ)は、日本では村の公民館のようなもので、どの公民館にも舞台があるように、ヤップの公民館にも必ず舞台(マラル)があって、そこに石貨が飾ってあるわけなのだ。
石橋奈美:ここは石貨銀行と呼ばれる石のお金を保管するための場所、村ごとにこのような場所があるそうです。
前にも書いたように、ヤップの伝統的なモノは貨幣ではないのだから、そもそも石貨銀行なんてのがあるわけがない。石貨銀行/ストーンマネーバンクというのは、外国人が勝手にそう呼び始めただけで、この場所はヤップではマラルと呼ばれる、村の公民館の舞台なのデス。

a0043520_0584994.jpgところで、←こういう風に石貨の穴から顔を覗かせている画は、よくツーリストも好んで用いる構図なのだけど、由緒正しく育ったヤップ人にとっては、あまり良い気持のしない(お行儀の悪い)眺めらしい。今は昔、わたしもこういう画を雑誌記者に撮らせたことがあって、あとでパートナーにこっぴどく叱られたっけなあ...

それにしても、↓こういう統一されない表記↓、画をつくってて、恥ずかしくないのですかねえ...?
a0043520_1174925.jpg

ヤップの石貨は、島の東半分ではライと呼ばれ、西側地区ではフェと呼ばれるが、まあ一方だけでも、↑ここ↑ではヤップ語を使っておきながら、
a0043520_1192817.jpg

↑こっち↑では、石貨銀行(ストーンマネーバンク)だなんて...(笑)

セリフ書いたヒトにも、しゃべってるヒトにも、画を撮った連中にも、結局、ヤップのこと何もわかっていなかったんだろうネッ(怒)。ところで、マキ村の人に聞いたところ、このグループ、この村に撮影で入ることを断っておらず、一般ツーリストとして入域しながら、これだけの画を撮っていったようなのだ。それだけでも、とんでもなく失礼なことなのに、こんなに長いカットを使いながら、番組ではマキ村の名前すら紹介していない。

ところが、マキ村のすぐ次のシーンに、一瞬だけ(1秒以内)挿入された↓この画↓(あまりにも時間が短いので、キャプチャーするのに苦労しました)に、石橋奈美のセリフがかぶる:
a0043520_2532826.jpg

石橋奈美:私たちが訪れたワニヤン村の石貨銀行は、普段公開されていませんが、今回特別に、取材を許可されました。はたして石貨はどんな風に使われているのか、ワニヤン村の長老の方々にお話を伺いました。
この目にも止まらない短いシーンとセリフのお陰で、視聴者はそれまで見てきた石貨がすべてワニヤン村のものだと誤解してしまうだろう。マキ村はわたしがヤップ縄文村と呼んでいるほどヤップの古い歴史を持つ村であるが、ある時点でワニヤン村など東側の勢力に圧倒されて負け組に転じた。そういう背景を持つマキ村の人がこの画の扱いを見れば、どんなに悔しい思いをするか、想像してみて欲しい。この番組は、ヤップ島内においても、それぞれの村の人々や文化を軽視し、日本の視聴者を惑わす編集をしているのだ。

ところで、石橋奈美は「普段公開されてない」といってるが、ワニヤン村の集会場(ペバイ)は、誰にでも見える道端に建っているわけで、ワニヤン・ビーチに行くツーリストにも丸見えですが...(爆)。ご覧のようにトタン屋根のコンクリート造りなので、ふつうそこまでしないけれど、ツアー・ガイドを通せば、ツーリストだって写真を撮らせてもらうことはできる。なんでこんなところまで、「わたしたちだけ」を強調して視聴者を騙したいのかしら?これも「世界ふしぎ発見!」のコマッタ特徴のひとつだね。

a0043520_1252846.jpgさて、シーンはワニヤン村の男の家(ファルー)の前に集まった年配のおじさんたちに移り、この番組のもうひとつの大きな問題が炸裂していく。すなわち、現地の出演者の音声をすべて消し、番組にとって都合の良い日本語のセリフに吹き替えるという暴挙。

こういうやり方は、これの2年ほど前にヤップに来た下らんバラエティでも見たことがあって、そのときもわたしは怒り狂ったのだけど、この日本語吹き替えセリフ、ヤップ・ロケに来る前から、脚本(ホン)が出来上がってるってわけなんですよ(怒)。だから、ここでヤップのオッサンたちが日本語でしゃべった言葉を、ぜったいにそのまま受け取らないでいただきたい。たとえば、
石のお金は伝統的な行事のときの支払いなどに使われるんだ
とか、
石貨は村の建物を建てるときに支払うお礼や、カヌーを買うときなどに使うんだよ。たとえば外洋航海用の大型のカヌーだと、価値のある石貨なら2枚は必要だね
とかいうのも、「世界ふしぎ発見!」が勝手につくった吹き替えのセリフであって、ヤップ人がしゃべった内容とは大違いなのだ。

実はこのブログを書く前、わたしはこの番組のナレーションとしゃべりを全部書き出し、英語の全翻訳もつけて、この番組に登場している主だった人たちにDVDといっしょに配ってまわった。驚いたことに、ローカル協力者の誰ひとりとして、番組放映後のビデオすら見せてもらっていなかった。日本のテレビ番組のほとんどが、そういう撮りっぱなしを平気でやるのだ。

わたしが配ったDVDと翻訳を見ての感想は、オレの声、こんなに老けてないぞと気分を害したヒトも含めて、自分の言葉が消されて変な内容の日本語になってしまっていることに、みんな後味の悪い思いをしているようだ。


まだまだ続きます。
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TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その弐
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TBS「日立世界ふしぎ発見!」ヤラセ大爆発のヤップ編・その参
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by suyap | 2009-09-15 23:19 | ヤップと日本のメディア

フジテレビ「カスぺ! 南極!北極!自分の足で答えを探せ!世界一過酷な冒険クイズ」を斬る-その弐

a0043520_093893.jpgお待たせしました!フジテレビ5月9日放映「カスぺ! 南極!北極!自分の足で答えを探せ!世界一過酷な冒険クイズ」を斬るの第2弾。
←ヤップの海を知るダイバーの間で、「長いこと海中にあったというのに石貨には全くサンゴが付着していなかったので、一発でこれはヤラセだとわかった」と話題になった、フジテレビ・ヤラセ海中石貨

本題に入る前にひとつ告白しておこう。その壱でこの件を取り上げたとき、なんとわたしは「カスペ」が火曜スペシャルのことだって知らなかったのだ(爆)。だから何度もカスかカスか見極めようとしたけど、パソコン画面でははっきりわからなかったので、番組ウエブサイトからコピペしてタイトルにした訳。それにしてもこういう略語化が、どんどん言葉を空疎なものにしていくんだよなぁ。あっ、コピペもその類か?

さて、この番組の録画入手は困難を極めた。ヤップに来たことのある人が、「おっ、ヤップの番組だ!」と楽しみにして録画予約までしてたのに、あまりにもひどい内容なので頭にきて、せっかく録画したのを消しちゃった、とか、そういう話ばかり。ヤップの部分は20分ちょいだったらしいのだけど、やっと後半の12分を録画した人が見つかって、郵送でカセット・テープが私の手元に届いたのが1ヶ月前。それから皆んなに配るためにDVDのコピー作ったり、すべての台詞とナレーション、キャプションの英訳を作ったり、関係者やコミュニティーに相談したり、いろいろしてたので、「その弐」が遅くなってしまった。

a0043520_0113372.jpgそれにしても、あまりにもひどいヤラセと傲慢なやり口に、ビックル10本いっき飲み(by きっこさん)してもまだ足りないくらいで、おまけにDVD作ったりビデオ起こしして翻訳したりコメント書いたりという作業をする度に、何度も何度も何度も嫌な映像を見なきゃならなかったので、ヤップにはビックルがないのでレッドブルでお腹がパンパン、頭がギンギンになってしまった今日この頃、みなさん、いかがお過ごしですか(笑)。


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by suyap | 2006-07-26 23:26 | ヤップと日本のメディア

フジテレビ「カスペ! 南極!北極!自分の足で答えを探せ!世界一過酷な冒険クイズ」を斬る-その壱

天候: 曇
風向: 東
風力: 6ノット
気圧: 1010hPa
湿度: 94%
気温: 25.3℃
過去24時間の最高気温: 28.9℃
過去24時間の最低気温: 22.2℃
(5月11日午前6時59分現在のヤップ気象データ)

a0043520_7414564.jpgどうも雨勝ちなお天気が続いている。フィリピンのほうに行ってる熱帯低気圧が雨雲を引きづってるし、ヤップの東にも雲がいっぱいだ。風が東にまわったので、島の西側のリーフは穏やか。なぜかこのところミルチャネルではマンタが見にくいので、まだ波や流れの強いゴフヌーでどのサービスも潜ってるけど、いま来ておられるお客様方は素晴らしいナチュラリストで、「どんな海でも楽しめる。ヤップの良い海を紹介してください」ってことなので、ちょっと天候と海況は優れないのだけど、そんな中でベストなポイントを選んで潜る、ガイドとしても嬉しい限りの毎日なのだ。

a0043520_7422521.jpgそれで、このところ夜の10時を過ぎると上の瞼と下の瞼がすっごく仲良しになってしまう癖がついてしまって昨夜も早く寝たので、朝仕事に行く前にこれを書いているのだけど、昨日のダイビングの一本目はノースファニフウォールというポイントで潜って、ブルーに抜けた水の中で浅場の見事なサンゴを堪能した。ここは台風とその後のオニヒトデでサンゴがみんなやられちゃったのだけど、浅いところからどんどん回復している。上の写真は、その様子。次に潜ったミルコーナーでは、きれいな水がミルチャネルに流れこみ始めたときだったので、水路から出る濁ってプランクトン豊富な水を求めるサカナたちの大宴会中だった。グレーリーフシャーク、クロヒラアジの群れ、カンムリブダイの群れなどなど、大きいものにずっと囲まれて水路に入って、上がりがけに撮ったオイランヤドカリとモンツキカエルウオの顔(実物は1cm以下です)。

a0043520_7432527.jpgそれでもって、今日のテーマは海モノかと言えば、そうじゃない。昨日お願いしたヤップのトンデモ・テレビ番組の名前や、ひどい内容の情報が続々寄せられてきた。このブログにコメントを書き込んでくれた、Hideさん、Mukさん、のりたけさん、れんたろうさん、その他DMくれた皆さん、ありがとう!それで、「斬るなんてコワ~い」ってコメントがまた入るかもしれないけど、こういうヤップなど、番組を直接見ることのできない地域の人たちを馬鹿にした、低劣番組を排除するには、やはり「斬る」しかないんで、今回も、この番組を斬ることにした。といっても、わたし自身が番組を見るまでは、寄せられた情報に頼るしかないんで、このシリーズは新しい情報が入り次第書き続けることにして、今回はとりあえず、その壱。

寄せられたどのコメントもDMも、「ひどい内容だ」で一致。あまりにもひど過ぎて、れんたろうさんは録画も消しちゃったって。そうだよ、わたしでもそうするだろう、うちのビデオデッキが穢れるような気がするもん(笑)。それでもまだ録画を取ってある人は、是非連絡ください。

どこのテレビ屋も似たりよったりだけど、特にフジテレビはひどいらしい。ノリタケさんの情報では、どっかの大学の先生がバヌアツやパプアニューギニアを扱った番組に正式に抗議をして、その経緯をウエブサイトで発表している。

バラエティ番組では「やらせ」が許されるのか?
ーフジテレビ「ワレワレハ地球人ダ」を巡ってー
http://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Ibunka/kyokan/yoshioka/wareware.html


「未開人」を捏造し続けるフジテレビ
フジテレビ「あいのり」のパプアニューギニア・ロケについて
http://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Ibunka/kyokan/yoshioka/nariyuki.html


フジテレビ「世界の絶景100選」にみる神秘の演出
-「南太平洋に輝く神秘の湖・ブルーホール」-
http://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Ibunka/kyokan/yoshioka/bluehole.htm


その先生の主張とわたしの言いたいことは、ほぼ同調するのだけど、日本人が日本人を使って(ということは、日本に住んでれば誰でも明らかにヤラセとわかる状況で)ヤラセ番組を作るなら(それが良いとは言わないが)、まだ救いがある。が、しかし、ヤップの人たちも、バヌアツやパプアニューギニアの人たちも、番組を見られないし、見られてもそれが日本社会でどういう風に受け取られてるか分からない状況で、おそらく「この番組に協力すればヤップの(バヌアツの、パプアニューギニアの)観光のためになる」とかって乗せられて、純粋に「協力」「熱演」しているのだ。そして、その人たちが熱演すればするほど、日本のお茶の間では大受けするように編集されて、それが制作側の狙いでもあるのだ。

たとえばヤップのテレビ局が日本にやってきて、ある過疎の村に行って、村人に「明治時代の服装をして番組協力して欲しい。ヤップであなたの村の宣伝をするから」って言うと、どう思う?それで村人が協力して出来上がった番組がヤップで流れて、ヤップ人たちから大笑いされてるのを知ったら、どういう気がしますか?

こんなとんでもない破廉恥が何度も繰り返されるのは、いまの日本の低劣な操作された腐れメディアもひとつの大きな原因だけど、それを見る奴、抗議をしない奴、みんな同罪で、特にわたしが今もっとも腹を立てあきれ返ってるのは、ヤップに居ながら、日本人であればそれがどういう番組であるかわかっていながら、こういう低劣な番組のコーディネートを受け入れた奴だ!この話は最初にわたしのところに来たから、番組企画書、依頼書、全部わたしの手元にもある。それを見りゃ、どんなにヤップの人たちや彼らの文化を馬鹿にしたものを作ろうとしていたのか、一目瞭然なのだ。わたしの言い分に文句があったら、堂々と連絡して来なさい!


「カスペ! 南極!北極!自分の足で答えを探せ!世界一過酷な冒険クイズ」
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2006/06-148.html



◆ヤップの旅の情報はこちらでどうぞ
http://www.naturesway.fm/index2.html

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by suyap | 2006-05-11 07:45 | ヤップと日本のメディア

緊急!5月9日放映のヤップ関連テレビ番組の情報を求む

ここ数日ヤップに雨を降らせた雲が、ついにきれいに渦を巻いて熱帯低気圧になった。
http://www.goes.noaa.gov/guam/GUAMIR.JPG
東の方にも雲が固まりかけていて、今朝もイマイチすっきりしないお天気だ。

a0043520_712762.jpgそれで今日もダイビングに行くのだけど、その前に飛行機が来る朝だからお客様をお迎えに空港に行く。それでその前に昨夜あまりに眠くてサボっていたメイルのお返事とブログの書き込みを見ていたら、トンデモナイ情報を数件いただいていた。それを見て、わたしの気分も、一気に今のお天気と同調してしまった。あ~あ、またかよ~~~

昨夜(5月9日)、ヤップのこと(石貨)をふざけて取り上げた番組が(たぶんフジテレビ系)で放映されたらしい。一報をくださった方の情報によると、どうも、昨年12月に弊社Nature's Wayに依頼が来たものと同じようだ。タレントを連れてきて、パラオから石貨を切り出してヤップに運んだことにして(実際にやるほど金を使う気はない)、それを海の中から運び上げ、島に上陸して、それでモノを買わせて、石の値段を知る、とかいうフザケタ内容だったので、モチロンわたしは断った。

その後、ある村から「マ●●●●ベ●ホテルの日本人スタッフが、ミルチャネルから誰かの石貨を運び上げて、うちの村の男の集会場に上陸して撮影したいと言って来たのだけど、どう思う?」って問い合わせが来たので、「そんなフザケタ番組を手伝っても、村の恥・ヤップの恥になるばかりだから、かかわらないようが良いよ」と言っておいた。今の時点でわたしの方にいただいた情報はほんとうにわずかなものなので確信はないが、ともかく同じようなフザケタ臭いがする。また村から問い合わせが来たときにヤップ州にResearcher's Permitの申請をしているか調べたが、まったく届けは出ていなかった。

日本のメディアにヤップのことを取り上げさせれば、それが宣伝になる、じぶんは仕事をしているって気になるっていう輩にも困ったものだが、ヤップみたいに、苦労せず安価に取材に来ることができて、なおかつ、ちょっとユニークな画が撮れるのを良いことに、トンデモ番組やトンデモ企画をデッチあげる日本のメディアの低劣さは、どうよっ!!!全国の視聴者の皆さん、怒ってくれ!!!

それで、この番組を見た方、とにかく詳しい情報、コメント、願わくばビデオ(DVD)などを、お送りくださ~~~い。まず、第一に知りたいことは:

番組名
放映局
内容の詳細
登場人物(日本人とヤップ人)

断片的なことでもかまいませんから、このブログにコメントをいただくか、ネイチャーズウエイの方に直接メイルくださると嬉しいです。ときどき「exblogのパスワード知らないからブログにコメントできない」というお問い合わせを受けますが、このブログのコメント欄のパスワードは、コメントする人がその都度自由に決めるパスワードです。自分が書いたコメントを消したいときには、そのパスワードを入れると消せるのです。

どうそ、ヨロシク!


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by suyap | 2006-05-10 07:03 | ヤップと日本のメディア

週刊文春4月13日号のヤップ記事を斬る-その弐

天候: 晴
風向: 東北東
風力: 11ノット
気圧: 1009hPa
湿度: 78%
気温: 27.5℃
過去24時間の最高気温: 31.1℃
過去24時間の最低気温: 23.9℃
(4月14日午後8時50分現在のヤップ気象データ)

一昨日の朝、慌しい日本の旅を終えてヤップに帰ってきた。マリンダイビングフェアの会場に来ていただいた方々にはご心配かけたけど、東京での一夜を過ごした次の日から、わたしは声をほとんど失った。どうも少し風邪気味だったところにホテルの部屋のエアコン(暖房)が災いしたらしい。それでも会場でしゃべり続けるから、毎日の終わりには喉に痛みを感じるまでになっていた。それが日本を離れて湿気の多いミクロネシア圏に入ると一気に快方に向かい、今はほとんど元の美声(?!)を取り戻している。

ところで、帰ってすぐに取りかかろうと思っていた文春の件だけど、帰島当日はさすがにバタンキュー、そして昨日は何やかやと残務処理に追われ、結局今日やっと動きまわることができた。それでも、ちょっと聞きまわっただけで色々なことがわかってきた。

まずヤップ州HPO(歴史保護局)に約束していた、問題の文春とその記事の翻訳提出。興味のある方は、この記事の末尾に全文(英文)をコピペしておくので読んでみてほしい。それにしてもこの翻訳には苦労した。意味のないコトバの羅列や体言止めが多く、主語と述語をはっきりさせる論理的な英語にするには難しい。本文に比べて訳のほうが格調高くなりすぎた気もしたので、コメントにその旨を断っておいた。「教養のある人はこのような文は好みません」とね(笑)。

それから、お墓のおじいちゃんの家族に連絡をとった。そしたら、「ああ、今年の1月か2月に日本人の○○に連れられて来た人たちかしら?うちのPも協力したわよ」っていうことで、Pさんにも話を聞いた。ヤップの正装(フンドシ)姿で写真に写っているのはTさんだけど、彼が掲げている貝貨はPさんのものだそうだ。もちろんお墓の写真を載せる許可など取ってはいなかったので、写真を見て、おじいちゃんの奥さんは憮然となった。

彼らにも訳文つきで文春を一冊贈呈し写真と文章の説明をしたら、真っ青にしか見えない1-2頁をみて「何だ、これ?」 そして、みんなの注目を集めたのが4頁下の写真。「なんでよりによって、こんな貧弱な写真を出したのだろう?」ということに議論が集中した。そしてPさんが、「これはルムングのガノン村の石ではないか?」と言い出した。

a0043520_0153682.jpgルムング島はヤップの北の端にある島で、橋がかかってないからボートがないと渡れない。それにまだ田舎気質を残していて、よその人が村に入るのにも昔ながらのシステムを踏襲するので、商売にエゲツない会社はForbidden Island(禁じられた島)なんて宣伝して、「手前どもだけが(お客様を)ご案内できるんでござんすよ」って売り込んでいるけど、実際は、ちゃんと手順を踏んでルムングの人にガイドを頼めば、どのツアー会社でもご案内できるのだ。ネイチャーズウエイの場合は、チョメもフラビッティルもルムングの人だから、まーったく問題なく、いつでもご案内できるという訳。

a0043520_0163030.jpgそれで、Pさんの発言で文春の写真をよく見てみると、なるほど、ガノン村にも半分に割れた石貨があったのを思い出した。左上の写真はその割れた石貨の手前の方を写したものだけど、こっちのほうが雰囲気あるでしょう?でも、わたしにはまだ確証はない。ガノン村に行っても、あまり見栄えのしない割れた石のほうは写真を撮ってないから、比べようがない。

a0043520_0172374.jpgちなみに、写真右上、それから左、右下に続く2枚は、すべてガノン村のもの。しっとりとした集会場もあるし、石畳の道もある。この村は、ウヌベイと呼ばれる建物の土台&テラスや石畳に敷く石を産するので、とにかく1枚の石がみな大きい。普通はみなこのどっしり感に打たれて、割れた石のある隅っこなんかに興味を示す人はいないのだけど。

a0043520_018669.jpgまたPさんは言った。「あの人たちは、たくさんのカメラ器材を持っていて、あちこちでいっぱい写真を撮っていた。それをヤップの宣伝に使うと言っていた」

ライター氏のことはわからないが、カメラマンの濱川聡一郎氏は文春専属ではなさそうなので、そうなると、ヤップの取材で撮り貯めた写真を、あちこちに売りさばく気だろうか?そうとしたら、文春には敢えて取って置きの写真は使わせないっていうのも、うなづける。ともかく文春編集部が納得する程度のものでOKなのだ。

その壱でも書いたけど、濱川氏もライターの林氏も、ヤップ州のResearcher's Permitを取得していない。これは旅サラダのときにも触れたことだが、ヤップ州にはResearcher's Lawというのがあって、州内でいかなる「採集」行為、それが生物であっても、民俗・民族関係であっても、ともかくヤップ州内の自然・文化遺産を「採る」行為をする外国人は、州法に従って届け出、納税、許可取得の義務があるのだ。生物化学者、写真家、文章家、民族学者、テレビ取材、報道関係者、みんな該当する。

1997年にこの法律が成立したとき、わたしも一時「言論弾圧じゃないか」といきり立ったが、今は違う。法的に不備の多いのも確かだが、このような法律をよりどころにして、ヤップのような風前の灯火状態のマイノリティの文化と自然環境は守られなければならないのだ。

日本のように人口の多い民族の文化や暮らしは、外国人が少々嘘や誇張を書いたところでビクともしないだろう。たとえば、アメリカのニューズウィーク誌に「日本人はまだ木と紙の家に住んで、ブシドーの精神を生きている」とか、これはほんとうにあった話だが、オーストラリアの新聞に「日本人は恥を重んじるので、この溺れ死んだ青年のように、死が迫っても恥じて『助けて』と言えないのだ」なんて書かれても、笑い話で済んでしまう。

ところが、ヤップのように数千人、島によっては数百人という小さな人口規模の民族の文化や暮らしでは、外国人の勝手な表現物(映像、画像、書物)が、いつのまにか既成事実として後世に残っていき、ひいてはその文化の本来の継承者へも影響を及ぼす>>外からの圧力が文化を変えていくという危険性を持っているからだ。

言い方を変えると、日本のように昔から文字というハードツールを使って自分たちで自身の文化や暮らしを表現していた民族では、外から何か言われたり書かれたりしても、少々のことでは本体に決定的な影響は及ばない。しかし、ヤップのように、文字というハードツールを使わないでソフトツール(口とマインドによる伝承)だけで繋いできた文化というのもは、外からのハードの襲来には、ほんとうに脆弱なのだ。

ヤップといえども既にソフトツールだけでの伝承は限界に来ている。はっきり言って既に途絶えているとも思う。しかし、今ならまだ間に合うのではないか、マインドがまだ生きているうちに、自らの手でソフトをハードに置き換える作業をしなければいけない。そういう思いを持ってこのResearcher's Lawを読むと、とっても強い味方のように思えてくるのだ。もっとも、ソフトツールで成り立っていた文化がハードツールに置き換わった段階で、ソフトツール文化の真髄は失われている、とも言えるけど。でも、その推移を自身のパワー(あるいは自身の意識的な選択)で行うか、外圧により変化を遂げるかは、大きな違いだと思う。どうだろうか?

Researcher's Permitの窓口になっているヤップ州HPOでも、この法律の運用は非常にフレキシブルに行っている。ヤップのことを深く知らない外国人には、興味本位やいい加減な知識でヤップのことを表現してもらいたくないので、発表前に必ず地元の評価を受けること、ヤップのことを扱って利益のあがる場合にはヤップ州にも利益の一部を還元すること、というのが柱だが、学生や研究者、とくにヤップ州と協力して研究活動をする人々には、州との共同研究という形で便宜をはかってもらえることもある。

ということで、何かというと「ヤップの宣伝をする」だの「観光の振興を手伝う」だのと触れこんで、自分らの利益のために好き勝手な画を撮って好き勝手に書いたりしゃべったりするテレビ屋さん、写真屋さん、物書きさんが多いが、こういう手合いからこそ、ヤップ州はガッポリ税金を取るべきなのだ。事実と反する「宣伝」でヤップの名が売れても、結局、困るのは地元なのだから。

いろいろな文章や作品に接するとき、最近わたしは、対象にたいする作者の「愛」が作品中にどのくらい見えるか感じられるかという視点で見るようになった。この「愛」を見つけるというアプローチは、ある人に教わったのだが、とっても簡単で間違いのない方法だと思う。「愛」というのは定義の難しいコトバだけど、要するにcommitment責任・献身・執着ね。loveとかhateってのはそのひとつ下の感情だが、これらも無いよりはマシ。作者にこれらの姿勢が感じられる作品は、安心して味わえるということで、それらが感じられないものは、作者の無責任、不献身、どうでも良さが現れていて、とても信用のできるものではないということ。この文春の記事を含めて、今の日本にはそういう表現物が満ち溢れていて、ほんとうに息がつまりそうだ。でも、わたしはあきらめない。質の高い読者が質の高い作品を産むのだから。

さあ、みんなで文春編集部に抗議しよう!
i-weekly@bunshun.co.jp


ーーーーーヤップ州歴史保護局に提出した訳文とコメントーーーーー
A Translation of
Weekly Bunshun, April 13, 2006 (published on April 6, 2006)

Photographer: HAMADA, Soichiro
Text: HAYASHI, Fumihiro
Publisher: Bungei Shunju Co. Ltd.
Contact: i-weekly@bunshun.co.jp

1) Captions on the Photos
(Page 1)
What fulfills the Paradise?
The word “paradise” suits Yap very much. The environment of the island is of course beautiful. Blue waters, fringing reefs, etc. But the most important elements which make the island paradise are its easy going atmospheres and the people who still want to keep their own traditions.

(Page 2)
Yap at dawn. A triangle shaped local house in blue background surrounding the island.

(Page 3)
Photo above
The objects which the man is holding in his hands are money made from whale bones and which on his neck is necklace money made from shells.

Photo below
Beautiful clear water with varieties of blue gradation.

(Page 4)
Photo above
A grave in a forest. It looked like a flower garden with white, violet and yellow flowers.

Photo below
Bank. They use huge stones as their currency. The stone doesn’t move but the ownership changes.

2) Text
You can find a paradise named Yap with almost-being-extinguished and cartoon-like tolerant atmospheres, near the equator only 5 hours flight from Japan. The island is in the Federated States of Micronesia, is almost the same size as Isu Oshima and the people still refuse the capitalization and the westernization as much as they can.

“You harvest fruits and catch fish only enough for today. You can get them again when tomorrow comes.” They all live from hand to mouth, self-sufficiently. They still use huge stone money like in the Stone Age and keep the traditional wooden canoe sailing across thousands of miles of water only by star navigation.

Of course there are no conveniences such as cell phones, internet access or even TV. Only things you can see here are beautiful waters, coconut trees, lots of fruits and laughs of the lighthearted and a little bit lazy islanders. The Yapese is happy to live in this way. They respect and live with the natural environment. I think their lifestyle is one of the most beautiful and ideal one.

Because of the Japanese administration before the WWII, some Japanese words, such as “undokai” and “bento” are still commonly used in their daily life and there are some elders still speak fluent Japanese. You can experience many discoveries, surprises and outbursts of laughter of the islanders by just visit and look at this unique and miracle paradise of Yap, which is impossible to find in your life in Japan. The island is full of healing that most of the Japanese needed now.


Comments to HPO

1) There is a lot of intended misinformation to make Yap look like a “primitive paradise”, which eventually all visitors can find false, but most of the readers who have no chance to come to Yap will believe what they read about Yap.

2) The words Bento or Undokai are common in Palau but not in Yap. This and many other phrases indicate that the writer referred to and used phrases from many other already-existing documents in Japan about Micronesia to make up his story of Yap but not based on what he actually had seen in Yap.

3) My translation may sound nicer than the actual text that is full of nonsense rhetoric and which real-highbrow readers would dislike. I translated in this way so that the people who cannot read the Japanese language would understand what exactly the writer meant. It was hard work anyway because he didn’t mean anything in many parts.

4) The photographs used were quite low quality and not a good introduction of Yap. They could have used better photos and visit more places to show Yap.

5) The Weekly Bunshun is one of the five popular weekly magazines and its targeted readers are in a wide range from highbrow to lowbrow such as Newsweek Magazine in the US. It can be obtained at any bookstores, bookstands in town or at train stations. The possibility of the negative influence, because of its intended misinformation, to the general public in Japan is quite high.

6) I have written in my Japanese weblog about this to inform the Japanese people not to believe what they had read in the magazine. Many were concerned and encouraged me to continue to do so.

7) If your office, as HPO or Yap State Government, could officially announce comments, ask the editor to correct the facts and have the publisher list an apology in its future issue, it will be helpful to protect the future from incidences of same kind.

8) A strong enforcement of the Researcher’s Law and an announcement of the law to all the tour operators, hotel managements and general public in the state are suggested.


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by suyap | 2006-04-14 20:32 | ヤップと日本のメディア

週刊文春4月13日号のヤップ記事を斬る-その壱

a0043520_1217546.jpg一昨日の夕方ヤップを出てグアムに一泊して昨朝成田に着いた。予想していたより寒く桜もほぼ散っていて、かなり残念。今回は池袋のサンシャイン近くで今日(4月7日)から3日間行われるマリンダイビングフェアに出展するヤップ観光局の手伝いだ。そんなわけで、あと20分したらホテルを出なければならないので急いでこれを書いているので、この記事は今後時間ができ次第修正加筆します。

昨日発売の週刊文春巻末に「楽園を満たすもの」と題して、濱川聡一郎・写真、林文浩・文で、噴飯でっち上げ大嘘記事が4ページものカラーグラビアで出ている。実はヤップを発つ直前に情報が入ったので、ヤップ州政府歴史保存局に、この濱川氏と林氏がヤップ州のResearcher's Permitを取っているか確認してきたが、案の定、届けも出ていなかった。彼らは最近ヤップに在住してビジネスを始めたある日本人の知り合いだということはわかっている。以下に問題点をあげる。

最初の見開き
これはヤップのマアプ島オチョラップ村の男の集会場の写真だ。民家ではない。それにしてもわたしの目にはただの青くて解像度の悪い写真にしか見えないのだけど、こんなの載せちゃっていいの>文春さん?

グラビア3ページ目の写真上
貝貨(ヤール)を両手に掲げガウ貨を首にかけて、ベチヤル村の男の集会場の前で写真に納まっているのは、うちのチョメの親戚のおっさん。彼はこの出演料にいくらもらったんだろ(笑)。だけど文中ではヤールのことを「鯨の骨で作った貨幣」、ガウのことを「貝で作ったお金」だって。記者にはちゃんと目と耳があったのだろうか?

グラビア4ページ目の写真上
これは同じくベチヤル村の村長さんだったおじいちゃんの墓だ。これを載せるのにご遺族の許可を取ったのだろうか?ヤップに帰ったら早速聞いてみる。

グラビア4ページ目の写真下
オチョラップ村かウァロイ村のウヌベイとマラル(石貨を置く所)に見えるが、これも帰ってすぐに確認しよう。それにしてもヤップの石貨のことを紹介するには、もっと大きく立派なマラルが、記者が泊まったビレッジビューホテルの近くにもあるのに。それにベチヤル村のおじいちゃんの墓まで行きながら、すぐ近くのマラルと大きな石貨の写真は撮らなかったの?

3ページ目の記事
「日本から僅か五時間たらずの赤道直下に今や絶滅寸前と言っていいマンガ的なおおらかさに包まれた楽園がある」だって。
それじゃヤップの人は絶滅危惧種か?ヤップ人はマンガか?ヤップの人たちがこの記事を読めたら、決していい気持ちはしないだろう。

「資本主義と西洋文明を拒絶し」
記者の泊まった村にもある商店に並ぶ缶詰やコインランドリー、たくさんの車(ほとんどが日本からの中古車)が見えなかったのだろうか?思うにこの記者は資本主義とか西洋文明とかというコトバの定義さえできないのではないか?

「石器時代さながらの巨大な石の貨幣が流通し」
石でホテルに泊まれましたか?ビールが買えましたか?

「文明の利器である携帯電話にも、インターネットにも、テレビにも無縁の世界」
モデルのおっさんも携帯持ってるよ。わたしは今日本でこれを書いてるけど、このブログはヤップから発信してるし、いまヤップではNHKワールドも含めて20チャネルのテレビが地上派で24時間放送されている。わたしはテレビ持ってないから見ないけどね。

「”ウンドウカイ”、”ベントウ”という日本語がそのまま使われ」
ウンドウカイやベントウは、ヤップでは定着しなかった。だから日本語世代にしか通用しない。これらが現代の若い世代にもコトバとして定着しているのは、ミクロネシアの他の島のこと。

ちょうどヤップ観光局長と観光局副理事長がマリンダイビングフェアで来日中なので、記事を見てもらって内容を説明したところ。「すぐに出版社に言って訂正してもらえないか」って言われたから、「もう出ちゃったものはtoo lateだから、これはヤップ州政府として後日筋を通しておいたほうが良いですよ」と言っておいた。悔しいけどわたしの財布から3部を購入し、ヤップ州歴史保存局ほか各関係機関に報告する。

ともかく、この記事が巻末に載ってる文春4月13日号を、立ち読みで良いから見ておいてください。今後もっと時間をかけて「斬り」ますので。


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by suyap | 2006-04-07 09:01 | ヤップと日本のメディア

「朝だ!生です旅サラダ」の正しい食べ方・ヤップ編&ポンペイ編

久しぶりに本格的に晴れ上がった一日となった。北東の貿易風も順調にもどってきたので、これでしばらくは好天が期待できそうだ。

さて本日の話題は、お待ちかね(?)「旅サラダの正しい食べ方」、去年の11月26日にレポートした「朝だ!生です旅サラダ」の作り方・ヤップ編の続編だ。あれから、12月10日にヤップ編が放映されたのだけれど、まさかそんなに早く番組アップするとは思っていなかったワタシは、予定していた日本の友人に録画を頼みそびれてしまった。それでもヤップ在住日本人のご家族がたまたま録画してくださったものを入手できたので、昨日やっと見る機会を得た。

でもこの番組に登場しているヤップの人たちのところには、観光局にさえも、番組制作側からのコピーがいまだに届いていない。放映後にメイルで催促をした人には「まだ放映が終わらないから、もう少し待ってくれ」という返事が入ったきりだという。利用するだけしておいて用が済んだらナシのつぶて。日本のテレビ屋さんの取材は、いつもこういうのが多い。だから私はいま希望者にコピーを作ってあげるので忙しい。やっぱり自分がテレビに出ているところ、みんな見たいもんね&見せたいもんね(笑)。コピーのあとは内容の説明文を早急に作らなきゃ。だって、いちいち各人のところに出張して通訳やってられないもん。

で、お待ちかねの番組観賞のあとは、やはり、爆笑憤慨落胆の坩堝なのであった。

番組では最後のほうになっていたが、まずは気になるマンタのシーン。

a0043520_221948100.jpgなんで、こうなるのお~~~~~?

私が予告したとおり、マンタの数が増えていた(笑)。「作り方」でも書いたように、あの日、私たち(私と弊社のお客さん)と取材チーム水中班+彼らのガイドが見たマンタは、確かに一匹だけだった。私とお客さんのチームが先に潜って後から上がったのだし、画面に出てくるクリーニングステーションは、両方のチームが一緒にいた場所に間違いはない。

a0043520_22204372.jpgこの写真ではよく見えないけれど、録画した画面ではクリアにうちのお客さんも写っている!(この影を消したかっただろうね、制作側は)

どうして取材チームにだけ、私たちには見えなかった+2匹のマンタが、見えてしまったのだろうか???

それで、マンタが3匹でてくるシーンを何度も何度も巻き戻してみた。すると、映っているサンゴの形から、3匹マンタを撮ったカメラの位置が想定でき、それは実際にカメラマンが居た位置からでは絶対に撮れない構図だということが見えてきた。このシーンは、時間にしてほんの5秒くらいなのだけど、完璧に借り物か、譲っても手前のマンタだけがホンモノ(カメラマンが実際に撮ったもの)で、後ろの2匹はコピーだろう。

スタジオでも、「この日でたマンタは3枚」と何度も強調していたけれど、捏造してまでマンタの数を増やすことに、いったい何の意味があるのだろう?どうして「残念ながら今回見たのは1匹だけだったけど、もっとたくさん来ることもあるんですって」って、素直に言えないのだろうか?それにしても、マンタは座布団じゃなくて、いちおうサカナなんだから、「枚」って数えるのは違うんじゃないの?カツオが1枚、サンマが2枚?

この手の番組を録画して長期保存してる人は稀だと思うけど、いちおう他にもいっぱいあるマチガイヒジョウシキシツレイな内容を下に挙げておく。番組を見た人で少しでもそのシーンを思い出せる人は、ここで内容をもういちど反芻してみて欲しい。そうすることで、このサラダの味わいは、コンビニで売ってる危ないサラダから、心を込めて作った母さんのサラダくらいに、グ~ンと上昇すること請け合いだ。

上記のとおり、マンタを最初にもってきちゃったけど、以下は番組の進行どおりに記します。

1)ナレーション「見知らぬ訪問者を優しくもてなすヤップの人は...」
これは、あるヤップの家の野外キッチンにレポーターがいきなり入って行って、ごはんを食べているおばちゃんに話しかけるシーンで言ってるのだけど、「見知らぬ」もなにも、すべて取材チームのリクエストでお膳立てしたうえでの撮影なんだから、これを読んでる皆さんは、たとえヤップに来ることがあっても、いきなりよそのおうちにスタスタ上がり込む、なんていう勘違いな行動は、なさらないですよね!?と、いちおう言っておきたい。

2)おじさんが3人でビンロウジュを噛む
このシーンで、当人たちには申し訳ないけど、ワタシは腹を抱えて笑ってしまった。彼らは全員ヤップ観光局のスタッフである。それも、ひとりは観光局長代理(局長ポストは当時空席)。そういうエライ立場であるにもかかわらず、この涙ぐましいまでの演技協力!ヤップの男の気持ちがちょっとだけわかるワタシとしては、「お気の毒に」とは思いながらも、ついつい笑い転げてしてしまう。

ところでここでの問題は、
a) レポーターが、ひとりのおじさんのバスケットに断りもなくズケズケ触っていること。
すべて撮影側のリクエストで事前に筋書きがあってのことだろうけど、いくらスタジオやナレーションで「ヤップの人たちは自分たちのしきたりや文化を大事にします」と口先で言ってても、こういうところでボロが出る。ヤップの男にとってバスケットは彼自身の分身なのだから、ほんとうに親しい人(つまり奥さんとかね)以外は、めったなことでは無断で触ったりできないのだ。バスケットを画にしたいのはわかるけど、それだったら、ちゃんと断っているシーンを入れ、その理由をちゃんと視聴者に説明しないとね。こういう不注意な番組づくりが、勘違いした旅行者を生産し、それが元で現地が荒れてくるということを、番組制作側はまったく考えてもいないのだろう。

b) レポーターが不注意で地面に落としたビンロウジュの実を、平気でおじさんのビンロウジュ袋に戻したこと。
もしかしたらおじさんは、撮影の後で袋のビンロウジュをぜんぶ捨てちゃったかもしれない。噛んだとしても気持ちのいいものではなかっただろう。だって地面に落とした他人の食べ物を、ふつう持ち主に断りもなく拾って袋に戻すだろうか?ヤップ人なら、いや相手に少しでも気を使う人ならば、決してできない行動だろう。そういうシーンにNGを出さなかった製作側の程度が、こういうところでも知れるというものだ。

3)ナレーション「ストーンマネーと呼ばれる石のお金」
ここでも大爆笑。だってこれって「シュリンプと呼ばれる海老」「ドッグと呼ばれる犬」
「マネーと呼ばれるお金」って言ってるのと同じじゃん。ストーンマネーは英語、石のお金は日本語です。ヤップでは石貨は地域によって「ライ」とか「フェ」と呼ばれます。似たようなナレーションはまだあったよ。「メンズハウスと呼ばれる男の集会場」とかね。どうしてヤップの名前をちゃんと調べて原稿を書かないのだろう。たとえば「ファルーと呼ばれる男の集会場」というようにね。これらの主要なヤップの固有名詞は、すべて「ヤップ観光局2005-2006オフィシャルガイドブック(日本語)」に出ています(執筆者はワタクシですけど)。

4)石貨の伝説を語るナレーション
とっても怪しげな話デス。「満月の夜に作ったから石貨は丸い」だなんて、長い話を思いっきりはしょって継ぎあわせたか、思いっきりの勘違いか(笑)。こういう確証のない話は安易に扱わない、というのが、良識のある制作者の心得というもの。へたすると他人の文化や歴史に、勝手に新たなストーリーを加える(いじる)非を犯す危険があるからだ。

5)カヌーの帆をあげるときの変な太鼓の音
カヌーの帆をあげるのは、かなりの集中力を要求される共同作業だ。それなのに、男の掛け声以上の音量で(実際にありもしない)太鼓の効果音を入れていた。これは後で触れるポンペイ編でも出てくるけど、「生サラダ」といいながら青菜を茹でてくたくたにして出すような行為だ。どうして「生」の躍動感をそのまま表現しようとしないのだろう?この辺にも取材対象をまったくリスペクトしない制作側の態度が現れている。

7)レポーターの質問「これでストーンマネーを運んできたの?」
帆をあげたシーンの後で、カヌーのクルーのひとりにレポーターが日本語で聞いているのだけれど、返ってきたクルーの答えは航海術の説明だ。質問と答えがまったくかみ合ってない(笑)。でもワタシが問題にしているのはそういうことではなくて、このカヌーとクルーは実はヤップ島出身ではないのだ。ヤップ州には東西1000キロにわたってたくさんの島が点在し、州内には大雑把にいって4つ以上の異なる言語があり、文化もすっごく違う。それで、石貨をカヌーで運んできたのはヤップ島の人たちの祖先であって、このシーンに登場する島の人たちとは関係ないのだ。またもっと細かいことをいうと、カヌーのシェイプも各々微妙に違ってて、それぞれの出自にはもちろんみんなプライドを持っている。取材対象をちゃんとリスペクトしていたら、たとえ日本語だから通じないとわかっていても、こんな質問はできなかったはずだ。それとも単なる勉強不足?

8)ナレーション「(このホテルは)メンズハウスの作り方でできています」
パスウエイズホテルのコテージのことを言っているのだけど、男の集会場なんかをホテルにしちゃったら女のお客さんは泊まれないじゃん。ほんとうは、ヤップの伝統的な家のつくりを模した構造と外観になっているのだ。もともと男の集会場は若い男たちが寝泊りする「家」でもあったから、それは当時ふつうの民家のつくりとほぼ同様だった。だから昔から男の集会場が特別なつくりだったわけではなく、たまたま男の集会場という形でしか、現在は昔の民家のつくりをしのぶことができなくなっているだけなのだ。

9)カダイ村の表記
踊りのシーンの前にカダイ村の石畳の小道を歩いていく場面で出た字幕が「カデイ村」。集会場の建替えで忙しい村に強引に踊りをリクエストして、長老にまで出演してもらい、取材チームは村の中で何度も「ここカダイ村では」という説明を聞いたはずだ。それなのに、ああそれなのに、、、もうこれだけ書いてくると、頭の中では湯気が沸き立ち、タイプする指も目も疲れてフリーズしそうだよ。Ctrl+Alt+Del

ちょっとお茶を飲んで一息入れたら、もうひと頑張りする元気がでてきたので、さらに先を続けてみます。まだ続きを読んでくださる方々、ありがとう、ありがとう、ほんとうにありがとう<<<ここら辺もきっこのブログの影響ナノダったらナノナノダ、なんていってみたりして(笑)。

さてカダイ村では子供たちの踊りが出てくる。ヤップの踊りは大勢で踊ることに意味があって、個々の踊り手もそれぞれ工夫を凝らしてオリジナリティを発揮しているけれど、全員がそろって統率がとれていることが大事とされる。当たり前だよね。タカラヅカのレビューだってそうだもの。それなのに、ああそれなのに、この画の撮りかた&編集はナンナノダ!!!ヤップの踊りをレビューに例えるのは申し訳ないのだけれど、ともかくレビューでいえば、一列の踊り手の端とか真ん中あたりだけをアトランダムにクローズアップしたり、足の部分だけとか手の動きとかのシーンをつなげて「これがレビューです」っていっているようなものになっていた。おそらくカメラアングルでも失敗していると思う。撮るほうにヤップの踊りについての予備知識がないから、踊りが始まる前にカメラの位置とか構図とかの計画が十分にできなかったのだろう。踊りがどこでどのように始まるのかくらい、事前に調べろよ、聞けよお~~~。それにしても、画面の編集、もっとやりようがあっただろうに!

あとは微にいり細にいるのでマトメていくけど、ミクロネシアの建造物を特徴づけるココヤシの繊維で作ったロープの素材を知らないらしく、ただの「強くしまる紐」で済ませたり、男の集会場の中で、男のヤップ人ガイドと女のレポーターが一緒に横になっているシーンがあったり(このガイドは家族と一緒にこれを見られないだろう)、小学校のシーンで日本語で質問された先生の答が質問とはずれてたり(コミュニケーションになってないんだから、あたりまえ)、ローカルのダイブガイドが「インストラクター」になっていたり(笑)。ダイブマスターやインストラクターってのは、いちおう職業の資格なんだから、これはマズイでしょ。そのうえ本人には可愛そうなことに、番組ウエブサイトでは彼の名前は出てなくて、彼の勤めるサービスの日本人スタッフの名前になっている!?

これだけ書くのに(ビデオを何度もまわす時間を入れると)、もう4時間以上かかっているのだけれど、手に入った録画カセットテープには、ヤップ編の一週間まえに放映されたポンペイ編も入っていたので、ちょっとこっちの食べ方にも触れておく。でもワタシはポンペイのことはあまり知らないので、とっても気になった部分だけ、ヤップ在住のポンペイ人の友人に確認した。

それはシャカオの場面(番組ではサカオとなっている)。シャカオの儀式は、ポンペイの文化ではすっごくコアな部分だ。番組制作側が、ポンペイの人々と文化をほんとうにリスペクトしているなら、彼らの流儀をまず尊重しそれに従おうとするだろう。それが、、、ナント、女のレポーターが男の作り手と一緒になって、神聖なシャカオ石の上でシャカオをつきつぶす作業に加わってるのだ!ここでも邪魔な太鼓の効果音が入っている。それで、彼女の目の前で困ったような顔をして作業している若者のことをレポーターは、「きっと『オレあの娘のこと好きなんだよな』って考えながらついているんだろうな」なんて、ふざけたことを言っている。ポンペイ人の友人によると、シャカオを作る作業には、絶対に女は近寄れないとのことだ。おまけに出来上がったシャカオを、レポーターも音屋の兄ちゃんも、立ったまま容器を片手で持って飲んでいた。日本のお茶のお手前を、正座できないからといって外国人が立ったまま茶碗をわしづかみにして飲んだら、あなたはどういう気持ちになりますか?ポンペイでも、シャカオを飲む正しい作法は、座って、両手で容器を奉げもち、目をつむって、ひと口飲んで返す。すると(日本のお濃茶のように)容器は次の人に渡るのだ。

ことほど左様に、この「生サラダ」は、うっかりボーっと食べ続けたら、間違いなく中毒をおこすような代物だ。でも見た目はコンビニのサラダのように、とってもオシャレで万人の目をいとも簡単に惑わすから、なおさら怖い。しかしその毒気は、放置すると食べた人だけでなく、素材を提供した産地にまで及ぶ。そういうことが心配でならないから、ワタシはこうして深夜までかかって解毒剤を処方する努力をしているのデス。

毒の伝播の構図とは、こういうことだ。

1)番組視聴者の勘違い>>感覚的な映像だけ記憶に残る。
2)何かのきっかけで、あるいは番組に触発されて現地を訪れる。
3)感覚として残った映像がよみがえる。
4)よみがえった映像と同じシーンに出会うことを期待する。
5)旅行業者にその期待の実現をリクエスト。
6)旅行業者がお客の期待の実現をセットアップ>現地にリクエスト。
7)収入につながるなら、ってことで、現地は伝統を曲げてでもニーズに答えようと頑張っちゃう。
8)それが繰り返されると、現地(とくに若い世代)はいつのまにか、そのヤラセがホンモノと錯覚するようになる。

こうして、「伝統の根強く残る地球最後の楽園」(これ、モチロンよく使われるステレオタイプの宣伝文句へのワタシの皮肉です、誤解なきように)は、いつのまにか失楽園へと変遷をとげるのであった。

まあ、それもひとつの歴史の流れだといって達観できる人には、ワタシが今夜ついやした数時間の努力は、エネルギーと時間の無駄づかいということなんだろうけど、、、それでも、少しは評価してくださる方々へ:

皆さん、「生サラダ」はいちど直火(現地の現実)をとおして召し上がれ!

<制作者への教訓>
1.取材対象を心から愛すること。
2.取材には時間をかけ、足でしっかり事前調査すること。
3.番組準備・制作・編集・仕上げに至るまで、必ず現地の人をチームに加えること。

いまの日本のメディアには、どれも無理なことばかりですな、トホホ。




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by suyap | 2006-01-25 23:58 | ヤップと日本のメディア

「朝だ!生です旅サラダ」の作り方・ヤップ編

ヤップのダイビング屋なのに、私はこのブログでまだ一回もマンタを登場させてなかったですね。
a0043520_6165126.jpg
マンタの標準和名はオニイトマキエイ。体幅2m以上にもなる大型のエイで、主にプランクトンを食べて生きています。人間に危害を加える心配のない大きくて優雅なサカナで、世界中の亜熱帯~熱帯域に生息しています。

私があまりマンタのことを取り上げないひとつの理由は、いま水中に携行している小さなデジカメでは、よほど透明度に恵まれてマンタが接近してくれないと上手く撮れないし、かといってガイドがお客様を差し置いてマンタの撮影にしゃしゃり出るわけには行かないという事情がありますが、もうひとつ大きな理由は、「特定の生物を人間の都合で広告塔にしてはいけない」と考えるからです。

ヤップは確かに「マンタを見やすい」地域のひとつです。だからヤップの海でマンタを見るのは、しごく普通の状況。でもマンタはかなり広範囲に大洋を移動する生物で、ヤップで見られるマンタの数も年や水温、海の状況によって増減します。だから「ヤップに行けば100%マンタに会える」なんて大きく宣伝すると、マンタを見ることを第一&唯一の目的にして来る人が多くなり、するとマンタは人疲れしてダイバーを避けるようになり、そうなると余計マンタを追いかけまわす人も出て、ますますマンタにストレスを与える、という悪循環になります。実のところ、いまのヤップはそういう状態になっています。

ひとつの目玉商品で「売る」のでなく、ヤップのも丸ごと見て、何かを感じて、そして元気になって帰っていただきたい、というのがガイドとしての私の願いですので、敢えてマンタを前面に押し出していないわけです。でもお客様にマンタと素敵な出会いをしていただくための努力と経験は誰にも引けをとらない自信があります。それにうちは小さな会社でして、いつも少人数で潜るので、マンタもけっこう気を許して近づいて来てくれることが多いかも、です。

手前味噌の前置きはこれくらいにして、それにしても、このブログのマンタデビューをこんな悲しい出来事で飾るとは、、、

テレビ朝日系で土曜朝9時代に全国放送されている旅のバラエティ番組で「朝だ!生ですサラダ」というのがありますね。この取材チームご一行様7人が、11月17日にヤップにご到着になりました。そして翌日から2日間バタバタと取材してお帰りになりました。幸い(笑)私はこの取材には全くかかわっていませんし、向こうからお声もかかりませんでしたが(爆)。この手の番組は取材を受け入れてくれる会社や組織または個人の「協力」によって作られます。「協力」というのは通常「宿泊料無料」とか「大幅なおまけ」とか「景品提供」とかです。番組ウエブサイトを見ていただけばわかりますが、サラダも、取材に協力して便宜を提供したホテルやサービスだけ番組で紹介されます。それによって日本国内であれば「お客さん殺到」というリターンをビジネスとしては期待できるわけです。でもヤップのような交通の便の悪い小さな島では、どれだけ宣伝効果あるのかなあ、ってとこです。それにしても、この手の番組(というより今の日本の大手メディアさん)には、地域全体の健全な活性化や、正直でフェアな紹介、そして取材によって生じる地域へのインパクト(悪影響)を最小にする努力、というような気配り(あるいは取材対象への愛)は、全く期待できません。取材に来る前から撮りたい画が決まっていて、取材対象をそれに「はめよう」とする。バタバタと現地を短時間でかき回して、ハイ、サヨーナラ。だから、私はテレビ屋さんを始めとする日本のメディアとかかわるのは極力ご遠慮しているのです。取材コーディネートを過去にやったことがないわけではありませんし、とってもいいお金になるのですが、あとで悔しくて悲しい思いをするのはつらいですから。それはさておき、、、

11月18日、私はマンタを見ることが期待できる水路でお客様とダイビングしていました。1ダイブ目はミルチャネルという島の北西に位置する水路に行き、透明度が非常に低いにもかかわらず、2匹のマンタと会えました。クリーニングステーションでは、1匹のマンタが私たちの目の前でしばらく優雅に舞ってくれました。

大きいな体をしたマンタには手が無いので、寄生虫や藻がついて痒くても体を掻くことができません。それにエラがつまったら一大事です。そこでマンタの体に住む寄生虫や藻を餌にしている小さなサカナが住むサンゴにやって来て、それらを体に乗せて「掻いて」もらうのです。それをクリーニングといい、そういうサカナの住んでいる場所をクリーニングステーションといいます。ダイバーはそういうクリーニングステーションの近くの、マンタを妨害しない場所でマンタの到来を待つというのが、マンタウォッチングのエチケットです。

私たちがボートに戻る直前に取材チームの水中撮影班がやってきました。潜り終えた後に隣りあっていたボートから聞こえてくる会話からは、彼らはここではマンタを見られなかったようです。既にマンタを見ていた私たちは、潮の流れや風の状況から、次は北東側のゴフヌーチャネルで潜ることにし、そちらにボートを移動させました。直後に水中撮影班のボートも同じ場所にやってきました。

ダイバーがたくさんいるとマンタは神経質になります。それに取材カメラマンは(どんなに気をつける人でも)やはり「良い画を」という思いが先に立ち無理をするものです。そこで私たちは1時間きっかりの水面休息後、水中撮影班より先に潜水を開始しました。そうすることによって、お互いが水中で気を使うこともなかろうと。だけどその願いもむなしく、私たちはマンタよりも彼らの動きを全面的に水中で観察することになってしまったのです。

次に紹介する写真はその数コマです。私とお客さんは(撮影班にマンタと最接近できる位置を譲って)マンタが旋回するクリーニングステーションを横から眺められる水深の浅い所にいました。被写体まで距離がありすぎ私のカメラ(もちろん腕も)の限界もあって、写真はかなりお恥ずかしい出来です。
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上の写真の赤い線より右側がクリーニングステーションでダイバー侵入禁止区域です。マンタはそこに住んでいる小さなサカナを体に乗せようとして進入してきています。小さなサカナがマンタの体のまわりにうごめいています。カメラマンは水深15mをダッシュで移動しています。モデル(タレントの顔や名前に疎い私には誰だかわかりません)とガイドの位置はここではOKです。
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水中をダッシュしたカメラマンは、マンタがクリーニングを受けながら旋回するサンゴの正面に張り付きました。マンタの行く手をさえぎっているので、これではマンタは自由に旋回できません。カメラマンはマンタと同じ水深8mの中層に浮いています。これもマンタにすれば脅威(あるいはウザッタイな~)です。
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モデルとマンタの絡みを撮ろうとしてカメラマンは頻繁に動き回ります。マンタは敏感に動きを察知してイヤになって飛び上がっています。
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そして遂にホントに嫌になって、行ってしまいました。それでもしつこく後姿を撮るカメラマン。カメラマンの後方の岩のように見えるサンゴと写真手前(下半分)のサンゴの群生がクリーニングステーションです。

動きが激しくて速く空気が少なくなったのか、あるいは満足な画(?)が撮れたからか、水中撮影班は先に潜り始めた私たちを残してさっさと浮上していきました。彼らがいなくなるとすぐ「あ~せいせいした」と言わんばかりに、マンタが帰ってきてクリーニングを受け始めたことは言うまでもありません。

多くのテレビ取材チームは3人+出演者で構成されて来ます。今回はそれが7人です(金があるんだなあ~)。メンバーは、番組プロデューサーと名乗る日本語べらべらのニュージーランド人男性(でもやってることはコーディネーターに見える)、ディレクターの日本人女性(友人の話では彼女も「出演」していた??)、もう一人の日本人女性(タレント?)と、4人のカメラマン&ADとおぼしき若い日本人男性で構成されていました。

たった1日でマンタとモデルの絡みを水中で撮ろうなんていう発想がまず非常識ですが、ちゃんとお金を払って潜りに来ている他のダイバーへの配慮がまったく見えない態度には、お客様ともども憤慨しました。2002年6月29日放送の「サラダ」モルディブ編では、やはり1日でマンタの画が撮れなくて、現地日本人ガイドのムーサ・フルゥ(ニックネーム)さんの撮りおきのビデオを借用したそうです。

水中取材のやり方に憤慨・落胆したので、その後、他の取材の動きを調べてみました。そして調べれば調べるほど気が滅入る事実がボロボロ出てきました。またかよ~日本のテレビ屋!って感じ。

1)ヤップ州の法律無視
ヤップ州にはリサーチャーズ・ロー(Researcher's Law)というのがあって、州内で行われるいかなる取材活動、調査活動、採集活動は、ヤップ州の関係諸機関に届けて出て許可を受けなければなりません。この取材チームはこの手続きをしていませんでした。代わりにヤップ観光局を全面的に「利用」しています。上記法律には、ヤップ州政府機関が「招待」した者に限り、許可に伴い支払いが必要な許可料(Researcher's Fee)が免除されます。しかしこの取材チームは許可料免除どころか、「ヤップの宣伝をするために観光局に招待された」という触れ込みで、届出さえ怠っていました。法律に疎い観光局職員を「観光振興」という美辞麗句とお小遣いで巻き込んだ節が濃厚です。純粋に「ヤップの宣伝」のために観光局に協力するのなら、限られた企業だけ番組で取り上げるのはフェアではありません。

(注)ミクロネシアは連邦制ですので、連邦と州の両方の法律に従う必要があります。連邦政府の許可を取っていても別にヤップ州政府の許可がいります。

2)不透明な金の使い方で現地感情をかきみだす
今回の取材チームは2つのホテルに泊まっていました。また水中取材にはヤップの大手のダイビングサービスを使っていました。これらのビジネスには「テレビに出て宣伝になるから」といって大幅なディスカウントあるいは無料という形で取材協力を求めています。それによってこれらのホテルやサービスの名前だけが番組やウエブサイトで紹介されるのです。企業にとっては良い宣伝になるでしょう。それ以外の陸上の取材は、全面的にヤップ観光局に依存しています。

どこの国や市町村でも「観光局」というのは半政府機関になっているところが多いです。ヤップの観光局もヤップ州政府から予算を受けて運営されています。今の日本でいうと独立行政法人のような感じです。こういう公共性の求められる機関では、当然いろいろな制約が設けられています。まず利潤をあげてはいけません。また民間から偏ったサービスの供与を受けてはいけませんし偏ったサービスの提供をしてはいけません。職員が職務を通して給料以外の収入(謝礼)を受けることも禁じられています。

しかし観光局というところは世界各国の有象無象から色々な依頼が舞い込んでくるところで、タチの悪い依頼をいくばくかの謝礼を握らせて「ヤップの観光のため」という大義名分でやらせるということを考える利用者もやってきます。そしてそれを防ぐ手立ては、ひとえに職員の資質と正義感によるしかない、という現状なのです。いまのヤップ観光局にも、正義感に燃えた良い職員もたくさんいるのですが、、、

今回ヤップ観光局が取材チームに提供したサービスで判明したものは:

●ヤップ州政府所有のボートを借り上げてヤップ観光局所有の伝統カヌーを撮影。
ヤップ州のボートは州で許可した公共の仕事に州政府職員が使います。ですから無料です。民間の会社が政府所有のボートをビジネス活動に使うことはできません。また撮影したカヌーはヤップ観光局の所有で、それを動かす要員の謝礼は必要ですが、カヌーのレンタル代は取れません。

この撮影の翌日、取材チームを全面的にサポートしていたある観光局職員は、民間人の友人を乗せて政府のボートで遠くの漁場まで釣りに繰り出しました。友人のひとりが「誰がガソリン代払うのか」と聞いたところ、「テレビ取材の連中が払ってくれた。彼らのために魚を釣ってきてあげるんだ」と言ったそうです。ちなみに、その漁場まで往復するだけで100ドル近いガソリン代が飛びます。観光局会計に計上されているガソリン代は$40でした(この取材のために観光局はガソリン代まで出しているのも驚き!)。これは私の想像ですが(でもよくあることなのです)、取材チームは(言われるままに)「ボートチャーター料」「カヌー操船料」をこの職員に支払っていると思うのです。ヤップ州政府も観光局もこのような収入は受け取れませんから、この金は完全にこの職員のお小遣いになったのですね(笑)。

またこのカヌーの製作者で世界中のマスコミに「ナビゲーター」として名が売れてしまったおじいちゃんが、熱烈取材を受けていたようです。マンタもそうですが、こうして特定の人だけをターゲットにして取材するのも、どうだかなあ、です。ヤップには伝統的なカヌー航海の流派は複数あって、伝統は秘伝の部分も多くあり、ひとりだけが脚光を浴びると、いろいろ困る事態も起こり、それがまた伝統を変えてしまうのです。

●ヤップ観光局のスタッフが観光局の車を運転して自分の村の小学校に案内し取材。
ヤップでも子供の肖像権や映像の公開に気を使う親が増えています(日本のことを考えても当然のことです)。州の法律では、プライバシーや伝統にかかわるものをテレビ、映画、出版物など公開される映像として撮るには伝統リーダーシップ会議>各村の首長>本人(未成年の場合は保護者)という順で許可を取る必要があります。今回、どこまでこの手順が踏まれたか疑問です。

●別のヤップ観光局のスタッフが観光局の車を運転して取材チームを各村に案内。この日は土曜日で週末出勤。これは本人の告白ですが、彼はこの労働で$40もらったそうです。とってもやる気のある正直な若者で、この「違法収入」に戸惑っていました。でも彼の上司の命令でやった仕事ですし上司はもっとガッポリ利益供与を受けている訳ですから拒否もできず「もらっちゃった」んだそうです。また、この日の取材で出演する羽目になった別の友人は、「集会場の前でしゃべるだけで$100ももらっちゃったんだよ」と目を丸くしていました。ちゃんとしたヤップの人は金だけで片をつけられるとプライドを傷つけられたように感じますので「やっぱ、スー(私のこと)の言うとおり、この人たち、変だね」とも言ってました。

基本的に自給自足が原則で、給与所得のある仕事についている人は成人の30%以下、賃金水準も低く、それでも誰も生活に困っていない(金がないと暮らせない日本より、ある意味よほど豊かです)という土地で、$100のキャッシュというのは、とんでもない大金です。もらった本人も、自分の村の集会場の前で村の説明をしただけで、自分だけこんな金をもらうのに釈然としないので「やはり変だよ」なのです。正常なプライドのあるヤップ人は、普通こういう人が多いです。

一方で「やっぱ世の中、金が一番だよ~」というような輩もヤップにはいます。そういう人たちから見ると、この取材チームに関係して「臨時収入」にありついている連中のことは「あいつらだけ旨い汁すって」となりますね、当然。小さな島ですので、どこの誰が誰とどうして何をどうした、という情報は隠せません。したがって取材チームの行状は簡単に島に知れ渡っています。今回不満だった人たちが次回にこういう機会を目にすると、我先に「同じ汁」を期待するようになるのです。そういう意味では、このような取材の仕方は、今後取材にくる同業者の首を絞めていることにもなるのです(特に良心的な取材をしようとする人ほど、予算は少ないですしね)。もちろんヤップの人たちの心をかき乱している罪はもっと大きいです。

さてさて、短い2日間の取材を終えた夜は、観光局主催・取材チーム感謝パーティがレストランを借り切って執り行われました。もちろん上記の釣りの成果も料理に並んでいたそうです。招待客は取材チームだけでなく、「どうしてこの人が?」というのも入れて50人以上もタダ飯、タダ酒にありついていました。お小遣いを「もらっちゃった組」としては、こういう形で「今回はもらえなかった組」の恨みを少し軽減したい、というのもあるのかもしれません(笑)。取材チームの顔がばっちり写っているパーティーの写真も入手しましたが、ここでの公表は控えます。観光局長代理の話では、料理代は観光局持ち、ビール代は取材チーム持ちだったそうです。「観光局は飲み物代まで払う予算がないから、取材チームに飲み物代は払ってくれと頼んだんだよ」とのこと。ということは、レセプション開催も取材陣が要求したのだろーか???ヤップ州知事も招待されていました。

最後にもうひとつの大きな問題を述べておきます。

日本国内であれば、テレビの取材を受け入れるか拒否するかは、ある程度個人の選択の問題に帰することができます。取材を受ける本人が情報を収集し判断する機会が(本人がその気になれば)ほぼ整っていると考えられるからです。しかし、ヤップのような外国のマイナーな地域では、日本のテレビが取材に来ても、取材される側にはどういう番組で、どのように自分たちの島や姿が放映されて、どのような影響が自分たちに帰ってくるか、判断の仕様がないのです。インターネットで情報を検索しても、日本語では読めません。「テレビで紹介するとヤップの宣伝になる」という殺し文句で、現地の観光局も州内のお偉方も催眠術にかかったようにイチコロです。それに付随してお小遣いまでもらえるとなると、もうみんなはしゃいで手伝います。そういう脅威から州民と文化を守るために、ヤップ州にはリサーチャーズ・ロー(Researcher's Law)という法律があるのですが、それを執行する立場の人間が、このような「餌」に浮かれているのでは、もうどうしようもありません。だから、調べれば調べるほど、私の気は重くなるのです>>>またかよ、日本のテレビ屋さん!

それに、この番組を見て画のとおりにマンタが見られることを期待して来られる方が増えるのも困ります。それでなくともマンタは既にイラついているのに。ヤップのダイビング業界はどんどん自分の首を絞めていっているようです。とほほ、、、

番組放映は12月中か遅くとも1月上旬でしょう。「朝だ!生ですサラダ」でヤップをご覧になることがありましたら、ぜひここで書いた記事を思い出してください。このサラダのレシピは単純ではないのです。


その後の顛末
「朝だ!生です旅サラダ」の正しい食べ方・ヤップ編&ポンペイ編


ヤップの旅の情報はこちらでどうぞ。
http://www.naturesway.fm/index2.html
by suyap | 2005-11-26 13:59 | ヤップと日本のメディア