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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

suyap.exblog.jp

「海の中」を「観る」ものとしてダイバーとして、今すぐできることを!

ブログのアップが遅れがちですみません。今回はきょう(1月15日)のなかなかハッピーなダイビングのエピソードとともに、いま沖縄市の泡瀬干潟で悲鳴をあげている生き物たちのことに、ダイバーとして思いを馳せたいと思います。青字はきょうのダイビング、黒字は泡瀬をめぐるメッセージです。

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ヤップのすぐ北に熱低になるかどうかって状態の低気圧が通過中で、北~北北西からの風とうねりあったので、大潮のあとにも関わらず、ミル・チャネルでは最満潮の3時間以上前から濁った水が流れ出し始めた。

到着したときはちょうど潮が変わりかけで、なんだかんだのエントリー準備15分ほどの間に、マンタ・リッジではドーンと「出し」の流れが強まっていた。したがって透明度はどんどん落ちるわ、ギンガメホホスジタルミらは右往左往するわ、そのなかをマダラトビエイが飛び交うわ、なかなかにエクサイティング!エントリー前の海面の状況から、水路北側の流れはマイルドだと踏んでいたので、とにかくはやく水路を横切って、北側に向かおうとしている最中、ひゃー、マンタが3匹飛んでった!


泡瀬干潟の埋め立て問題については、数日前の記事:
干潟-このモノたちをさしおいてヒトだけ生きながらえられるというのか?
http://suyap.exblog.jp/7805713/
でも触れたが、サンゴの研究者さめさんから、新たな(悲しい)動きのお知らせが入った:
いよいよ明日
http://shark.ti-da.net/e2502256.html
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ある部分では勢いよく流れ出したり、ある部分ではマイルドだったり、まだきれいな水がかすかに流入していたりと忙しい水の動きの水路のなかで、マンタだけでなく、いろんなサカナがパタパタという感じで落ち着きなく活発に泳ぎ回っていた。マンタも始終行ったりきたりしていたが、総勢は5~6匹というところか?お腹のマークでしっかり個体を確認できたのは、↑このメス・マンタF-085(うちの識別番号)と、

さめさんの記事にも一部転載されているとおり、南西諸島最大の干潟が埋め立ての危機に(前屋 毅=ジャーナリスト)は、この問題の核心をよくつかんで説明している。ぜひ読んでみてください:

南西諸島最大の干潟が埋め立ての危機に
http://event.media.yahoo.co.jp/nikkeibp/20090114-00000000-nkbp-bus_all.html
1)泡瀬干潟の埋め立てはバブルの残滓
2)泡瀬干潟には希少な生態系が/泡瀬干潟埋め立て工事には多くの沖縄県民の生活がかかっている
3)民意より政治が優先する事業構想
4)住民を無視する根底にあるもの

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↑こっちのオス・マンタM-090だけだったけれど、ボートに上がるとオペレーターのチョメが、両ヒレ差し渡しが2フィートくらいのマンタのベイビーが水面を泳いでいったぞと教えてくれた。この時期のベイビー観察記録は、貴重かもしれない。

泡瀬の埋め立て問題の歴史についてはこちらの記事でも触れているが、日本がバブリーな風潮に浮かれていた80年代中ごろ、泡瀬干潟を埋め立ててリゾート・アイランドにする計画が沖縄市関係者のあいだで持ち上がり、あまりにも壮大すぎてなかなか話が進まなかったところに、90年代後半になって、たまたま近くの中城湾港新港建設で出る浚渫砂泥の捨て場を捜していた「国」(内閣府沖縄総合事務局)がこれはラッキー!とばかりに工事に参画することになって、以後より大掛かりな予算規模でバックアップされることとなった。

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きのうのログにも書いたけど、いまミル・チャネルではキイロサンゴハゼがとっても増えている。こんなに集団でポロンとサンゴの上に出ているなんで、ヤップじゃ珍しいこと。

ところが時すでにバブルは泡沫の夢と消えたうえ、開発に湧く人々にはヘドロ泥の海としか思われていない泡瀬干潟に、希少生物がボンボン見つかり始めた。それらの保全について、内閣府沖縄総合事務局では、移植すれば大丈夫などという子供だましで切り抜けようとしているが、専門家からも批判が上がっている。

また初期の計画を改善縮小したとはいえ、広大な海域を埋め立てふさぐことによる残された干潟の自然環境の悪化は甚大である。そのうえ、出来上がった人口島に、いったいなにが期待できるのか?経済の悪化と人口減少により、20年前のバブリーなリゾート・ブームはもはや望めない。当時に開発された地域ですら閑古鳥が鳴きまくっているというのに...

これからの観光誘致は、スモール(小規模)、クウォリティ(質の勝負)、ラーニング(学習)、エクスペリエンス(体験)-ここら辺がセールス・ポイントになっていくだろう。これらの傾向は、すでにヤップのような極小ディスティネーションでだって感じられる。しかし、いま泡瀬の埋め立て開発計画で盛り上がっている人々には、こういう観光誘致の初歩リサーチすら、頭に無いのだろう。

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彼らの住処であるマンション・ミドリイシのおうちを出て、となりのマンション・キクメイシまでお散歩しているのもいた。体長2センチくらいのサカナだけど、じっとしているようでいて、身体を始終小刻みに震わせているので、わたしのポケデジ・カメラと腕では、やはりシャープな写真は無理みたい(笑)。

生存するための食料生産活動(農業や漁業)の隅々まで「新」自由主義経済が浸透したあげく、ほんらいは生産の恵みを与えてくれる場である里山が荒れ果てた。かつては真摯にそれらと向き合っていた生産者が、効率や採算というお化けに追われるようになり、より採算・効率を上げるために大型機械(船)が導入され、今度はローン返済というお化けがついてまわる。かつてはお天道様や田んぼや海の神様と日々語らっていたナイーブな生産者は、現代では金というお化けと格闘して日を終える。彼らの子供たちの多くは都会に流れた。

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マンタがビュンビュン行きかっているときには、とりあえずマンタを見たという安心感で、ガイドとしては小さいものにも集中できる(笑)。オドリハゼと、ロッテリアテッポウエビも、仲良くお家の作業にいそしんでいた。彼らも体長数センチの生き物です。

泡瀬の埋め立て問題を別の視点から見れば、これから変わり行く価値観を察知できるか、できないか、新しい価値観の創造を受け入れて生きられるか、モノ・カネ・ムダで利潤を産んでまわっていた旧価値観にしがみつくか、の違いとも思える。旧価値観にしがみついて環境を悪化させれば、泡瀬にも沖縄にも、ひいては日本にも世界にも明るい未来はない。

ところでダイバーにもいろんな人種がいるが、ただひとつの共通点は、海の中を直に観ることができる立場にある-ということだ。かつては海を見つめて海と共にあった漁師が、平気でプラ・ゴミを海に投げ捨てる時代に、われわれはそのプラ・ゴミの行く末がどうなるか知っている。かつての豊穣の海をただのヘドロと蔑み、金(カネ)がまわってくることだけが地域振興だと信じきっている地元の人らに、その泥地がいかに豊かな生物層をはぐくんでいるか、じぶんの目で見て説くことができる。ちょっとサンゴのことを知ったダイバーは、フィンで巻き上げた砂さえ度重なるとサンゴを殺すことを知っているから、あれだけの埋め立て計画が実行されれば、まわりのサンゴは全滅するだろうことを容易に想像できる。

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どんどん流れが強まって透明度の落ちるミル・チャネルをあとにして、2ダイブめはテレグラフ・リーフへ。いくら風が一時的に北から北西になったとはいっても、やはり貿易風、海面はかなりの波があり、今の時期ここは酔っぱらいやすい人向きではありません^^

それでも潜ると抜群の透明度で、なにかが出てきてくれるのが嬉しいポイント。まずはホワイトテール・ウィップレイのお出迎えを受けた。


どの地域でも最終的には地元の人が主役で物事の判断・決定をするのだが、そのとき、いかに広い視野と長いスパンで物事を見て、聴いて、経験して、進路を選択するかが、要になる。それらを支えるのが他所から来た人の視点だ。ヨソモノが勝手なことをやりやがって、と拒絶するばかりでは、その地域の活力は尻すぼみの一途をたどるだろう。ダイバーは、その究極のヨソモノとして(たとえ地元のダイバーであっても、海の代弁者としては立派にヨソモノ?)、地域(地元)に貢献することができる。

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お目当てのブラックフィン・バラクーダはどこかにお出かけで会えなかったけど、ホソカマスの群れはちゃんと相手をしてくれた。

これからは、
地球的視野でも物事を考え、地域的な行動を起こす!
(Think Globally and Act Locally!)
の時代となる。それが出来なければ人類は淘汰の道をたどるであろう。またそうなる前に、まず自分の住む地域が寂れ、滅ぶだろう。

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このほかにアオウミガメがちらりとか、遠くをイソマグロがさーっと(かなりクルシイ証拠写真だけど...汗)通りがかったりとか、浮上後の水面の大波を除けば(笑)、なかなか楽しいダイビングとなった。

泡瀬を含めて沖縄がそうなっては、ダイバーとしてもたいへん悲しい。われわれにはサンゴの叫びが聞こえ、海藻の嗚咽が見える。それらを住処とするハゼどんや、ネズッポくんや、カレイやヒラメの苦悩が心をふさぐ。

だから、泡瀬の生き物の叫びはダイバーのあいだでも大きな反響を呼んでいる。ニンゲンのダイバーが声を上げれば、ニンゲンの埋め立て賛成派の一部にも届くかもしれない。地元にカネさえ落ちれば、人工島さえ出来れば、なんとかなるかもしれない-と浅く考えている人たちに、もっと突っこんで考えてもらえるかもしれない。

署名なり、カンパなり、駆けつけるなり、ダイバーそれぞれが、まず自分にできることをすぐやろうではないか!

泡瀬干潟と浅海の埋め立て中止を求めるWEB署名(第3期)
http://www.shomei.tv/project-631.html

泡瀬干潟埋立の問題点(概略)
http://www.awase.net/maekawa/umetatemondai07830.htm

泡瀬干潟を守る連絡会のホームページ
http://www.awase.net/maekawa/sinindex.htm

※もちろん、ダイバーじゃない方も大歓迎です!!

※提案です。泡瀬干潟埋め立て工事費として組んだ489億円(!)の予算は、そのまま沖縄市自然環境復興整備基金とかなんとかの名目で、手をつける前にバッチリ環境アセスメントを行うことをしっかり義務づけて、ハード(土建部門などハコモノ)だけでなく、ソフト(環境教育/インタプリターなどの人材養成)にも拠出する。使いものにならない人工島で自然をぶっ壊すより、もともと捨てるも同然の金、どんどん良い方向に使っちゃいましょう!



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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by suyap | 2009-01-15 23:31 | ヤップの自然・海
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