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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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ヤップのジカ熱(ジカ・フィーバー/zika fever)について

a0043520_17331693.gif先月わたしが経験した、デングに似た正体不明の症状がジカ・フィーバーだったことはすでに書いたが(流行病の正体)、ヤップ州立病院には連邦政府保健省、米国の疾病予防管理センター(CDC)世界保健機構(WHO)の専門家が何人も来て、大々的な調査が続いている。それで、きょうはヤップのツアー・オペレーターやホテル業者を対象に説明会が行われたので出席してきた。

発症者の0.01%未満という非常に低い確率だけど適切な処置が遅れると死ぬこともあるデング熱が流行しても、国際機関どころか連邦も州もこんな大騒ぎはしないのに、デング熱よりずっと軽い症状で死亡例もなく、入院の必要すらないジカ熱で、なぜこんなに大騒ぎをしているのか、その理由が説明会に行ってみてわかった。

ジカ・ウィルスがウガンダ(アフリカ)のサルの一種から発見されて以来、ジカ熱は1978年にインドネシアで小規模の流行が記録されているだけだそうだ。東南アジアの他の国やフィリピンにもジカ・ウィルスの抗体を持った人がいることから、それらの地域でも過去にジカ熱が発生・流行していることは推察されるけれども、実際に記録された症例はいままで世界中で40くらいしかなかったという。それで、今回のヤップでのジカ熱流行の「発見」は、ジカ熱の研究にはまたとない機会を提供することになり、研究者の間でこのような大騒ぎとなっているようだ。説明会でも、予防や手当て(といったって、蚊に刺されないようにすることと、水分の補給をして安静にすることくらいしか無いのだけど)よりも、「発症したらすぐ病院に連絡して(研究対象になって)ください」ということに重点が置かれていた(笑)。

ジカ熱は上の写真のネッタイシマカか、日本にもいるヒトスジシマカが媒介すると考えられている。両方ともいわゆる「ヤブ蚊」というやつで、日中でも薄暗くて湿っぽいところや水辺などにいて、餌(人間や動物)がやってくるのを待っている。夜間よりもむしろ日中のほうが刺されやすい。これらに刺されないようにするためには、①そういう蚊がいそうなところに行かない、②虫除け対策(蚊取り線香、ローションなど)をする、③皮膚の露出を避ける、④家のまわりから水溜りをなくする、などの対策が推奨される。

ジカ・ウィルスは人>蚊>人という経路で感染する。感染してから発症までの潜伏期は4日から8日くらいではないかと考えられている。また感染しても発症しない、あるいは自覚症状がないほど軽い人も多くいる。発症後、症状が続いている間とその後の数日は、まだ体内でジカ・ウィルスが活発なので、他人への感染を防ぐため、蚊に刺されないように気をつけなければならない。ジカ熱の流行を広げないためには、これが唯一の対策だ。

ジカ熱の症状としては、皮膚の発疹や痒み、目の充血、微熱関節の痛み筋肉痛目の奥の痛み手足のむくみ下痢などがあげられる。上記の症状が全部出るというより、人によって種類や程度、あるいは自覚に差があるようだ。わたしが発症したとき自覚した症状を緑色にしてみたが、ちゃんと鏡を見なかったからわからないけれど、目も充血していたかもしれない。微熱や目の奥の痛みに関しては、こうしてジカ熱の症状が発表されたあとになって、「ああ、そういえば水中で寒気がしてたし、パソコンに向かってると目の奥が痛かったなあ」と思い出したもの。

この程度の症状で済んでしまうから、(わたしも含めて)ほとんどのヤップの人は病院に行かなかった。「あれっ、変だなあ、病気かなあ...?」とちょっと不安に思いながら日常生活をしているうちに、数日(3日から7日)で症状が消えてしまう。他所の地域でいままでジカ熱の流行が「発見」されなかったのは、こういう症状の軽さと、医療機関への依存度の低い地域、あるいは熱帯伝染病の研究機関へのアクセスが悪い地域に発生しやすいところに原因があると思う。今回ヤップでジカ熱の発生を「発見」できたのは、たまたま現在ヤップ州立病院で働いているアメリカ人医師が、上記の症状を訴えてきた患者を数例診て、「?」と思い、米国疾病予防管理センター(CDC)に連絡したのが始まりだった。

ジカ熱と思われる症状でヤップ州立病院を訪れたは患者は、4月中の数例に始まり、5月末にピークを迎えて、現在は収束に向かっている。いずれも外来だけで入院した者はいない。いままで病院が把握している患者のうち、発症中に採血してアクティブなジカ・ウィルス(PCR)が検出されたものと、症状が消えて7日以内に採血してジカ・ウィルス抗体(IgM)が検出されたものが42例、採血されなかった、あるいはIgMは検出されなかったが、上記の症状が2つ以上あってジカ熱と思われるものが76例だそうだ。しかし実際には感染して発症しても病院に来ないで治った患者や、感染しても発症すらしない例(不顕性感染)がその数倍(数十倍?)はいると見られる。

デング熱もそうだけど、ジカ熱も一度感染して抗体ができると、生涯この病気には罹らなくなる。小さな島でこのような伝染病が発生すると、まず島中に蔓延し、症状が出ても出なくても、ほとんどの人が感染して抗体ができ、すると流行は収束に向かう。3年前に流行したデング熱も島中に蔓延したが、70歳以上のお年寄りがみんなピンピンしていたので驚いた。調べてみると、彼らが子供のときにも大きなデング熱の流行があり、そのときと同じタイプのデング熱だったようで、すでに子供時代に抗体をもったお年よりは、2度と同じデング熱に罹らなかったわけだ。

というわけで、ヤップのジカ熱は徐々に収束に向かっていますが、ジカ熱に抗体のない他所から来た人は、運悪く感染する可能性もまだありますので、ヤップ滞在中は、できるだけ蚊に刺されないように注意してください。

病院では、最後の患者の来院から3週間経って新たな患者が出なければ、いちおう収束宣言をしても良いようなことを言っていた。今日(7月5日)の時点で、最後の患者から3日経っているという。CDCやWHOの専門家は、引き続きコミュニティを訪れて聞き取り調査や蚊の採集を行っている。

ヤップの空港では、病院関係者がジカ熱についてのパンフレットを配り始めた。それには、ジカ熱の一般情報と、感染防止の措置(蚊に刺されないように)、それに帰国後に万一症状が出た場合に最寄の医療関係者に見せる情報も載っている。日本の多くの医療機関は熱帯伝染病には疎いから、これは大切なことだ。わけのわからない伝染病というだけで、何日も入院させられたり、わけのわからない薬や注射をされたり、ときには隔離までされちゃったりするのは、嫌だもんね。万一そんなことになりそうになったら、
〇ヤップじゃ、誰も入院したりしてませ~ん。
〇ほとんどの人は病院さえ行きませ~ん。
〇病院も、関節や筋肉の痛みがよほどひどい患者にのみ、アセトアミノフェン(Acetaminophen)系の鎮痛解熱剤(商品名:タイラノール(Tylenol)など)を対症療法的に処方するだけで、そうでなければ水分の補給を十分にして安静に過ごすようにと注意するだけで~す。
と騒いで医師に伝えましょう。

それから、他の人への感染を防ぐために、症状が消えても1週間はヤブ蚊のいるところに行かないとか虫除け対策は万全にして、できるだけヤップの関係機関に発症を伝えて調査にご協力ください(連絡先はパンフレットに書いてあります)。症状が完全に治まって1週間ぐらいでジカ・ウィルスの伝染力は消えるので、もう蚊に刺されても大丈夫だ。

なんて、こんなこと書くと既にすごく広まってるように思われるけど、実際には、グアムとポンペイとパラオに数例、ヤップから伝染したジカ熱じゃないかと思われる症状をもつ患者が出ているだけだ。

ヤップに来る日本人の数を考えると、ジカ熱が日本に伝染する経路は、ヤップ経由じゃない可能性のほうが高いように思う。東南アジアやフィリピンには、大規模な伝染が確認されないだけで、ジカ熱はいつでもひっそり存在しているだろうと思われるのだから。また仮に日本で発症した人が出ても、その人の体内のジカ・ウィルスがアクティブな間にヒトスジシマカがその人の血を吸い、すぐに他の人を刺さなければ「伝染」は始まらない。だから、適切な処置さえとれば、ジカ熱は怖い病気でも何でもないので、みなさん、どんどんヤップに来てください-と締めくくってみることにした(笑)。

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by suyap | 2007-07-06 23:04 | ヤップな日々
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