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> アリンガノ・マイスとホクレアがヤップに到着
ここんとこ、ニホンの1部の人々やメディアの間で、ミクロネシア、サタワル、ヤップなどが話題になっている。それは十分に知っていたが、わたしはきょうまでこの話題を避けていた。そして今朝、ハワイイはオアフ島にあるPolynesian Voyaging Society(ポリネシアン・ボヤジング・ソサエティ)所属のカヌーで、ミクロネシアの島々を経由してニホンを目指しているホクレア(Hokule'a)と、ハワイイ島のNPONa Kalai Wa’a Moku o Hawai’i(ナ・カライ・ワア・モク・オ・ハワイイ)が建造してサタワル島のマウ・ピアイルグさんに贈られたカヌーアリンガノ・マイス(Alingano Maisu)が、ついにヤップに姿を現した。 明け方ヤップ島の沖に到着した2艇は、日の出と受け入れ側の準備を待って、午前10時ごろ、コロニアのYFTI桟橋に接岸した。ちなみにYFTIというのは、ニホンの援助(JICA/OFCF)でできた漁船サポート施設だったが、たいして稼動もしないうちに、とっくの昔に破綻して、いまはただの物置場(笑)。 このブログの読者にもホクレア航海に関心のある人がいるようなので、今回は特別サービスで大き目の写真を9枚も現地から直送(笑)。そのかわり書きたいことを書かせてもらいますので、そのつもりでお読みください^^ 以下、写真の解説は緑字で、本文に関係なく入れてあります。まず1枚目の写真は、 ボロボロのYFTI施設の前に接岸したアリンガノ・マイス(以下マイスと省略)。この艇はエンジン搭載なので、セイルを降ろしたあとも自力航行できる。ホクレアを残してお先に接岸。 接岸したマイスを見ていた離島のおじさん、「やけにマストが高いのう。いや、あれはやはり高すぎる」と、しきりにブツブツつぶやいていた。言われてみると、確かに。このあと、マストを倒してセイルを取り外す作業を見ていたのだけど、かなりの人手を要する作業だった。マイスは1本マストの双胴船。ハワイアンらしい人がいっぱいが乗っていて、ピアイルグさんの息子セサリオさんを含めミクロネシア人の影が薄い。 デッキの上もなんとなく雑然としていて、作業もなんとなくまとまりがない感じ。まっ、こんなときのヨット側は動物園のオリの中、わたしもヨットの「お客」として離島をまわったことがあるので、みんなに一部始終を見られている気持もわかる。あら捜しはやめておこう(笑)。 帆走ヨットのカマヘレ(Kama Hele)に引かれて、ホクレアの接岸作業が始まった。ホクレアにはエンジンが搭載されてない。ヤップ唯一の新聞、Yap Networkerの編集長件レポーター件カメラウーマンのミセスGがやってきた。 ミセスG 「どうして1艇だけサッサと接岸できたの?」 わたし 「マイスにはエンジン積んでるけど、ホクレアにはないからね」 ミセスG 「えっ、エンジンつき~?」 ウォッチャーA 「それにファイバー・グラス製らしいね、両方とも。ヤップのカヌーのようなので航海してくるのかと思ってたのに。」 ウォッチャーB 「これじゃ、普通のヨットと変わりないじゃないか」 ウォッチャーC 「伝統というんなら、コロニアに入るんじゃなくて、ゴフヌー水路経由でガギールに行くべきだろうが」 リアルのホクレアを初めて見たが、この2本マストの双胴船はなかなか美しい。ホクレアは、1976年のハワイイ-タヒチ往復を皮切りに、マルケサス、ラパ・ヌイ、アオテアロア、ラロトンガなど、ほぼポリネシア全域を「現代ハワイイ伝統航海術」(The technic & arts of modern Hawaiian way-finding)で踏破してきた。その初期の段階で伝統航海指導をしたのが、サタワル島のマウ・ピアイルク(Mau Piailug、通称マウ)さんだった。今回のマイス寄贈は、そういう彼の長年にわたる貢献へのハワイイ側からのお礼だそうだ。3年ほど前から計画されていたホクレアのニホン行きのついでに、マイスをマウさんに届ける目的も兼ねてミクロネシア航海が旅程に加えられた。 マストにはためくハワイイ州旗でもわかるように、かなりの北東の風。ホクレアからサーフ・ボードが降ろされ、綱をかついだクルーのおっちゃんが岸壁にパドルを始めた。ところで、Polynesian Voyaging Society会長で、ホクレアの最初のタヒチ航海から中心人物として活躍したナイノア・トンプソン(Nainoa Thompson)氏が、昨年9月にニホンを訪問して今回の航海をプロモートして以来、ニホンでも「熱烈」なファンがいろんな媒体で盛りあがっているのを知っていて、なぜわたしがこの話題を避けていたのか? あっはっは、それは、ニホンのファンの多くが、精神主義、もっと言えばナイノア・トンプソン氏や、彼を通して語られるマウ・ピアイルグさんの「お言葉」を、カルトチックに信奉しているだけのように見えるからで~す。そんなところに、現地からリアルな報告をしようものなら、ファンタジーから覚めたくない人々や、ファンタジーを創り上げて銭っこ稼いでいる売文屋、売映像屋から、即刻、キャンキャン噛みつかれます。たとえば、ここでのコメントのように。 岸壁にかけた綱をホクレア側で引いている。その掛け声にウォッチャーは爆笑。もともとナイノアを中心とするPolynesian Voyaging Societyじたいが、やや精神主義チックなのに加えて、それに そうして、こういう伝統航海術教の信者や予備軍となるタイプの特徴は、若い男、若い女、泳ぎとかアウトドアはあまり経験なし、今のライフ・スタイルのありように本能な危機感をもっている、けっこう本を読む、几帳面なタイプ、といったところじゃないだろうか? カマヘレはホクレアから離れて、マイスの側に接岸。わたしは、宗教の役割はエンターテーメントを通じた精神のリフレッシュメントにあると思っているから、「イワシの頭も信心から」で本人がそれで気持が良くなるなら他人様が何を信じようとどうでもいいんだけど、ソーカガッカイとか、トーイツキョーカイとか、それらに乗っ取られてテロの予行演習をやった鸚鵡のように、社会や他人に害を及ぼすようなカルト集団のメンバーには、早く目を覚ましてもらいたいと思うし、そのカルトを操る黒幕を出来るだけ早くあばいて、社会全体の目を覚まさせたいと思っている。 ちょっと話が大きく吹っ飛んだけど、ここでわたしが言いたいのは、イワシの頭でもナイノア・トンプソン氏でもマウ・ピアイルグさんの言葉として流布されたお経でも何でも、ニホン国内で信じて気持ち良くなってるぶんには良いのだけど、その「教義やお経」を、現地に持ち込んで押しつけるのは良くない、ということだ。 また、言葉や文化が違えば、思考パターンも大切に感じるものも感情の表現方法もセックスのやり方も、ぜ~んぶ違うんだよ、ということを、じぶんの生まれた環境と言語から出るときには、はっきり認識しておいて欲しい。 いまニホンで手にしたり目にしたりできる媒体でミクロネシアの伝統航海術を扱ったもので、ほんとうのミクロネシア人の文化をベースに、彼らの言葉でその本心を表現したものは、何ひとつない。マウ・ピアイルグさんの言葉としてよく引用される「ミクロネシアの青年は、伝統航海術を身につけようとするものがいないから、ハワイイやニホンの若者に、この技術を残したい」というフレーズが、ほんとうにピアイルグさんの口から出たことを証明できる人がいるだろうか?ここで100歩譲って、もしほんとうにピアイルグさんがそれに近いことを言ったとしても、ミクロネシアに長いこと暮し、ミクロネシア人と時に生きるか死ぬかの喧嘩をしたり人生最高の幸福を味わったりもした身としては、絶対にそんな言葉がピアイルグさんの本心から出たものではないと断言できる。とくにヤップ州離島の人々は、相手が喜ぶと思えば、過剰とも思える無償のリップ・サービスをする人たちなのだ。 接岸したホクレア。ふんだんな木製の儀装も美しく居住性も良さそうだ。クルーにとても大事に扱われている艇だと感じられる。ミクロネシアの伝統航海術は、数多くの研究者が長年にわたってさまざまなローカル・インフォーマントから聞き取り調査しているので、文献的にはかなりの部分が記録されていると思う。ただ~し、文献的な知識だけでは、何百キロも離れた小島を目指して、木の葉のようなカヌーで大海原に出られるものではない。 まず要求されるのが、水面や水中でも熟睡できるほど徹底した水慣れ。 15年ほど前までコロニアの近くに住んでいた、あるおじいさんの実話。彼はお酒が大好きで、酔っ払うと用を足しに水辺へ行くのですが、ときどき、そのまま寝込んでしまいました。潮が満ちてきても目覚めず、おじいさんの身体は潮に流されてガニール橋の下をくぐりチャモロ湾に入ります。そこには水上に突き出した家のトイレがまだあった時代で、ある夜、家人が懐中電灯を持ってトイレに入り下を照らすと、「ギャー」。トイレの穴の下には、まだ熟睡しているおじいさんの顔が-ということも(笑)。おじいさんの身体は、放っておくと潮に乗ってチャモロ湾の奥の岸に流れ着き、やがて目覚めるとスタスタ自分の家に歩いて帰ってましたとさ。 それから、波高10メートルを越すような大時化の中でも正気を失わずクルーを統率できる狂気-わたしはこれを、「あっちの世界と交信する能力」と思っている。そして、この能力の総仕上げを、Pwo(ポー)という儀式を通して伝授していくのではないかと想像している。 しかし、この「あっちの世界と交信する能力」は、別に神秘的なものでも精神的なものでもない。まず強靭な肉体と水の世界への耐性。それに加えてあっちの世界の信号を素直に受け入れられる感受性。ここら辺は万人に備わるものじゃないし、「餅は餅屋」の職人教育だ。竿竹屋に向いている子が餅屋の修行をするのはつらいだろうし、結局その子は良い職人にはなれないだろう。こういう職人的な向き不向きは、教育や本人の努力だけではどうにもならないものがある。そこら辺を早いうちから見抜くのが、師匠の務めのひとつのはずだ。ほんとうの「共生」がしっかり根付いている社会では、餅屋になろうと竿竹屋になろうと、本人への社会的評価が上下するものではない。 そして、こういう本人の得て不得手に応じた職人技を社会が必要としなくなったとき、職人を育てる社会的システムは衰退に向かう。現在の「伝統航海術」が、メディアやツーリズムという新しい局面でのニーズをみずから切り開き、なんとか生き残りをはかろうとしているのは、そういうことなのだ。しかし、メディアやツーリズムという新しい顧客のニーズは「それがないと生きていけない」という命をかけたニーズではない。そこら辺が、この「いい加減さ」を生む原因だろう。それに、もともと「命」がいた場所には、「収益率」とか「コスト」とかいうものがとって変わっているし。 船体はファイバー・グラス。船尾の大きな舵を、接岸時にはニホンの櫓船のように使っていた。ミクロネシアの伝統航海術におけるPwo儀式は長いこと途絶えていたが、サタワルの隣のラモトレック環礁(Lamotrek)で、ウルピー(Urupiy)さんが1990年に50年ぶりに復活した。ウルピーさんは1975年の沖縄海洋博にサタワルからカヌーで行ったレッパン(Rapanglug)さんの実のお兄さんだ。残念ながら、お2人とも2003年に相次いで亡くなった。 このPwo儀式の復活に協力したのが、エリック・メッツガー(Eric Metzgar)さんだ。ヤップのようなところにいると、文化人類学者の卵からメディア関係者にいたるまで、さまざまな研究取材活動をしている人たち(Researchers)に出会うが、伝統航海術の分野では、メッツガーさんほど、ローカルとの距離が近く、正直で貧乏な(失礼)研究者&映像作家を、わたしは知らない。ミクロネシア関係だけでなく、彼のエスニック・グループに対するスタンスと映像づくりの姿勢に、わたしは激しく共感を覚える。よかったら本やビデオを買ってあげてください。 Spirits of the Voyage Lamotrek: Heritage of an Island FILM/VIDEO PRODUCTIONS CURRENTLY IN DISTRIBUTION 話が飛んじゃったけど、実はホクレアとマイスがサタワル島に到着したとき、ピアイルグさんが息子のセサリオさんたちミクロネシア勢に加えて、5人のハワイアン(ナイノア・トンプソンを含む)にもPwo儀式を施すことがわかって、いろいろな憶測をよんでいる。1990年にラモトレックでPwo儀式が復活されてから現在まで、すでに数回のPwoが行われているが、メッツガーさんによると、そのどれもが、ほんとうのPwo儀式で要求される4日間に満たないものだそうだ。そして、今回のもたった2日間という短さ。 このことから、「ウルピーさんの仕切ったPwo儀式いらい、ほんとうのPwoは行われていない、あれは教育やトレーニングとしてではなく、ショーとして行われた『偽もの』のPwoだ」というのが、地元の正直な感想のようだ。『ホンモノ』のPwo儀式では、神聖なタブーが受講生への教えやイニシエーションならびにテストにいたるまでの4日の間じゅう厳粛に執り行われなければならないというのは、絶対要求項目なのだそうだ。 いってみれば、ダイビング指導団体が指定する講習基準をちゃんと守ろうと思えば、絶対に2日や3日でオープン・ウォーター(PADI)やスクーバ・ダイバー(NAUI)のダイビング講習が終えられるわけないのに(まじめなインストラクターはそれを熟知しています)、世に2日や3日のCheep & Easyで危ない講習がはびこるようなもんだね。カヌーの航海もスクーバ・ダイビングも、へたすると命にかかわるところも似ている。 ただ、短縮Pwo儀式の理由が、善意からであるだろうことは記しておく。こんなことをして得をするのはミクロネシア人の側ではなく、(あからさまに要請していないにしても)そういう雰囲気をまわりで作りあげてきた外部の力(それは集合的な無意識だったかもしれない)にある。 最後に、Honolulu Star-Bulletinに出ていたチューク州観光局長Mason Fritz氏の言葉を引用しておく。チュークまで出かけていって大騒ぎをしたニホンのメディア関係者は、彼の言葉をしっかり受けとめてください。人口の1割以上の「お客」が島に押し寄せることが、どれだけ現地に負担になるかを。 Mason Fritz, who sailed on the 1999 voyage and has been supporting the crews during their stay on Chuuk, said islanders here go beyond their means to make sure visitors are comfortable, and he knows that without proper planning on the part of the voyagers, the Satawalese will suffer after the visit. 関連記事: アリンガノ・マイスとホクレアがパラオにむけて出発 ヤップのホクレア号 アリンガノ・マイスが新しい就職先に向けて出航 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 よろしかったら人気ブログランキング地域情報 & にほんブログ村海外生活ブログにクリックを! ![]() ![]() ◆◇ヤップの情報はこちらでもどうぞ◇◆ http://www.naturesway.fm/index2.html ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ※このブログはトラックバック承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
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わーい、わかってくださってたんですね! >ホクレア号は、どこに向かって進んでいくのでしょうねぇ… ハワイもニホンも、ホクレアにかかわっている人たちは同じような感性をお持ちのようなので、これからもメディアを動員して、独自のストーリーを「創造」されていくでしょう。資金が集まる限り(笑) ヤップにいらっした暁には、ホンモノのカヌーや伝統の現実に、どっぷりと浸ってくださいませ。 |
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