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ミクロネシアの小さな島・ヤップより

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第39回ヤップデイ・2日目

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ヤップデイ2日目のレポートです。

ところで、去年のヤップデイプログラムは第30回になっていたのに、なんと今年のプログラムは第39回になっている!?

ヤップデイの回数の数え方はいろいろあるみたいで(オイオイ)、昔はUN(国連のこと)デイというのもあって同じようなことをやっていたし、いつの年から、どのイベントを「ヤップデイ」に含めるかで回数が変わってくるのだろうと思う。まっ、誰も回数なんて気にしていないからどっちでもいいわけで、かく言うわたしも、いま気がついた次第...(笑)。上の写真は、ガギル地区ワニヤン村の女たちによる座り踊りです。

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こちら(上)はガギル地区マキ村の女たちの座り踊りで、ちょっと前に書いたヤシガニに助けられた青年の話の踊りだ。ヤップの踊りは、このように伝説や教訓話、または実際にその村に起きた出来事などを題材にして語り踊り継がれていく。だから、民話のコレクション=踊りのコレクションともなる。

ここで、やっとG嬢の姿を端のほうでゲットできた。踊りが始まってから動き回るのは良いことではないので、あらかじめ彼女のいそうな側に座ってカメラを構えて待っているのだけど、毎回、わたしの予想は見事にはずれた。着付けなど準備しているところに聞きに行っても良かったのだけど、出演前はみんなナーバスになるものだし、彼女の性格も考えて行くのを遠慮した。まっ、近距離からバッチリ写った映像をもらうより、この程度のほうが控えめな彼女は好きかもしれない。




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↑↑こっちもG嬢出演のマキ村の踊り。彼女の顔もかろうじて端の方に見えるが、またもや反対側(笑)。よく見ると、上の写真の踊りとは腰蓑が違うようだ。踊りに合わせて衣装まで変えるなんて、作る手間暇(ぜんぶ手作りです)にしたって大変だっただろう。ほんとうに「ご苦労さん」だったね。

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↑↑これは今回のヤップデイで唯一の棒踊りを提供した、ファニフ地区ルム村の女性たちだ。ヤップ島より東の方にある島々から伝わった棒踊りは、ほんらいは男だけの棒術踊りだっただった。ヤップ島に伝わったのち棒術訓練の要素は薄れ、今では重い木の棒のかわりに竹を使うようにもなり、このように女も踊るようになった。それにしても、女だけの棒踊りは珍しいという。

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上は同じくファニフ地区ルム村の、総勢60人以上の女たちによる座り踊り。カヌー航海の指標のひとつであったグンカンチョウ(モロブ)のストーリーを題材にした、たいへん古い踊りだそうだ。

ヤップデイの踊りに公式な評価がつけられるわけではないが、「今年のヤップデイは〇〇の踊りが一番よかった」とか、「△△の踊りの誰それは上がって声が出なかった」とかとう話は、必ずあとで人々の口に上る。G嬢には申し訳ないけれど、わたしは、ルム村のこの踊りが、今年のナンバーワンだったと思っている。これだけ大人数の動きが一糸乱れずそろっていること、謡い手や真ん中の踊り手の呼吸と声の通り、踊りチーム全体から漂う気迫、すべて素晴らしかった。さあ、島雀の評価はどう出るか、聞くのが楽しみだ。

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そして、きょうもトリはガギル地区レベナウ・ラン・ガチャパル・ワニヤン・リケン村の男たちによる立ち踊り。こっちも、両端が会場からはみ出すほどの、すごい人数だった。踊りのテーマは、昔からこの地方に伝わる、美人で有名だったミスピルの話。

ミスピルというのは、20世紀初頭まで、違う村から連れてこられてヤップの各村の男の家に置かれていた若い女性のことで、その村の長老の庇護のもと(ということは、若い男が気軽に手を出せる存在ではない)、青年たちのアイドルとして大事にされていた。今でもミスピルのストーリーを扱った男の踊りが、あちこちの村に残っている。彼女たちは一定の任期を勤めると盛大なお土産を持たされて里に帰され、その後の女としての人生も保証されていた。

ミスピルの習慣は、ドイツが入ってきたときから(おそらくキリスト教的理由で)禁じられた。ミスピルのことを「高級娼婦」というような表現で解釈する欧米人もいまだに多く、それをそのまま翻訳した大馬鹿もんなガイドブックもニホンで出ている。その時代やその場に生きた者でないかぎり、その時代やその場の文化をとやかく「批判や評価」する資格はないと、わたしは思っている。どんな歴史や文化を扱うときにも、絶対に忘れてはならないのは、白も黒もつけずファクト(事実)だけを受けとめるという態度だ。習慣や体制の改革や変革は、その中にいるものによって引き起こされたものでなければ、それは数や力を頼んだ「侵略」だ。

話が横にそれてしまったが、きのうもトリを勤め、きょうもまたこの「古の麗しのミスピル」へ捧げる踊りを踊った男たちが、今回のヤップデイに踊りを出した唯一の男チームだった。ヤップデイ開催地は、去年から、トミル地区、ガギル地区、ルル地区によって、年ごとに回り持ちすることになった。当然、開催地では気合を入れて準備する。それでこの盛大な踊りになったものだろう。

第39回ヤップデイ・2日目_a0043520_0461976.jpgこちらは踊りの合間に行われた刺青のディスプレー。といっても、これはホンモノではなく、刺青デザイナーが昔のパターンをマジックで描いたものだ。写真に向かって右端のは、「戦士」(青年層)の足に掘られた刺青。左のふたりの全身に「彫られ」たものは、ハイ・ランクの男だけに許された刺青だそうだ。

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2006年ヤップデイ・2日目
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by suyap | 2007-03-02 23:32 | ヤップの伝統文化
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