ナマコは海底の掃除屋さんだ。ヤップにもいろんなナマコが生息しているが、そのなかでも
ジャノメナマコ(下写真)はもっともポピュラーな種類のひとつだ。
ナマコにはちゃんと口と肛門がある。下写真の左が口で、右がその肛門。下向きについている口でセッセセッセと海底の泥砂を食べて、お腹の中で有機物(泥の素)を漉しとったあと、きれいになった砂をポッポポッポとお尻からひりだしていく。きわめて地味~な存在だけど、彼らがいなくては(海の中の)環境はまともに成り立っていかない。
少し前、与論島出身の方を話をしているとき、店の壁に貼ってあるナマコやエビや貝の大きなポスターに載っていたジャノメナマコを指差して、「ぼくらの島では、これが一番、美味しいんですよ~」と目を細くしながら言われた。「え~、ジャノメナマコも食べられるんですか!」
以前日本の海辺に住んでいたときは、冬になると年に1回は
海からナマコを1匹だけいただいてきて、ナマコ酢にして賞味していたものだが、ヤップには
マナマコ(
Apostichopus japonicus)はいないし、すっかりナマコを食べることをあきらめていた。ところがヤップとほぼ同じような南方系のナマコが生息すると思われる与論島で、「ほとんどのナマコは食べられますよ!」というのであれば、これはぜひ試してみなければ!それにしてもジャノメナマコは...。
「ジャノメナマコを脅したり捕まえたりすると、あの白くてネバネバの
キュービエ器官を大量に出すけれど、いったいどうやって処理するの?」「どんどん出させて、岩かなにかになすりつけて、もう出ない状態にして捕まえるのです...」「な~るほど!」
与論島のナマコのうちでもジャノメナマコが一番美味しいと聞いて、もうわたしの頭の中はジャノメの捕獲でいっぱいになってしまった。そしてついに昨日、スタッフのJ君とふたりで潜っていたときに、1匹だけつかまえてみた。水中でいきなりジャノメナマコをグニョグニョもてあそび、まわりの岩に白い糸をなすりつけ始めたわたしを見たJ君、逃げるように遠ざかり、二度と近くに寄り付かなかったけれど(笑)。
ボートに上ったあとも、「これ、ほんとに食べる気?」と、チョメとJ君のあきれたような白い目は続き...「あんたたちにも食わしてやるからねっ」「ノーッ、ノーウエイッ!」(苦笑)。ヤップ人は、ナマコなどのゲテモノを、ぜったいに口にしようとはしない。
さて、あわれにも捕獲されてしまったジャノメナマコ、しばらくバケツに入れておいたら、きれいに内臓を吐き出してしまった。
ナマコ類は危機的状況になると、こうしてキュービエ器官とともに内臓まで吐き出して「死んだふり」をする。そうしてサポニンなどを多く含む内蔵を食べたり触ったりした外敵をやっつけるわけだが、本人(本ナマコ)はまだ死んではおらず、やがて新しい内臓が再生されて生き返るという。
消化器官の全取っかえなんて、断食どころじゃない最高のデトックスじゃない?うらやましいわあ...(笑)。そんなことを考えながら、残酷にも「まだ死んでいない」ジャノメナマコを切り刻んでみた。
上写真左は、本体と口、肛門を切り分けたところ。右は口と肛門の部分をさらに小さく切り分けて、これはわが
猫の額菜園の液肥となる。
そう、ナマコは最高の天然肥料のひとつなのですね。切り刻んだナマコの内臓と、今回は本体は「食べてみる」つもりなので、口と肛門部分を容器に入れ、水を加えて1ヶ月ほど待てば、あの懐かしい
肥溜めのようなクサヤのような匂いが漂ってきて...出来上がり。あとは適宜の量を取り分けて、水で薄めて作物にまくだけ。容器の減った水を足しながら、たまにナマコも加えていけば、半永久的な液肥となる。以前にナマコ液肥だけで鉢植えのナスを収穫したことがあるので、その効果は実証済みだ。
しかし仕事柄、海に入ってモノを獲ってくるという発想に慣れないせいか、
猫の額菜園を始めてからも、ナマコ液肥を作んなきゃと思いつつ延び延びになっていた。それが今回は「食い気」に押されて、ようやくナマコの捕獲にこぎつけたわけで、わが食い意地にあきれつつ...(笑)。
液肥の準備が終わると、いよいよジャノメナマコ本体の料理開始だ。腹を割ってきれいに洗ったナマコを鍋に入れ、たっぷりの水を加えてひたすら煮る(上写真左)。ナマコには大豆と同じくサポニンという成分が多く、煮ると大量の泡が出るから、きっちり蓋をしたり、火が強すぎると吹きこぼれるので要注意。そうやって用心しながらコトコト煮ていくと、やがて貝を煮ているときのような匂いが漂い始めた。与論島出身のSさんのレシピに従って、きっかりと1時間煮たあと、煮汁の中で自然に冷ました(上写真左)。
煮汁から引き上げるとき、ちょっと固いなと思ったけれど、まな板に乗せて表返すと...まだ、まんまのジャノメ模様にギョッ。「こっこれを...食べる...ですか?」
それでも匂いは美味しそうな貝系なので、目をつむってスライスしてみたら、「あれっ、まだ固いけど...」
それでも教えどおりに1時間煮たんだし、目をつむって口に放り込んでみたら、「あれっ、ゴムを噛んでるみたい...」
ちょっとこれは...いくらなんでも与論の人も食べないだろうというくらいの食感だったので、湯で上がったナマコを和えるために用意しておいた三杯酢に放り込んだまま、もう一度火にかけてみることにした。
すると、またふたたび泡が出るわ出るわ...。ときどき味見に一切れつまんでみても、なかなか柔らかくならなくて。煮汁が減るとまた水を差し...を繰り返すことさらに2時間!
ようやく食べ物らしい食感になったときには、すっかりシイタケの煮つけのような色形になっていた。味も...シイタケの煮つけと思えば、それなりに...(苦笑)。しかし、ナマコ料理としては、こりゃ完敗ですネ。
あまりにも悔しいので、与論、ナマコ、料理で検索してみると(料理する前にやれって!?)、
〇
なまこの甘酢漬け
http://www.yoronfood.jp/?p=111
圧力鍋で小1時間!
うちには圧力鍋はないから、普通の鍋でナマコを柔らかくするには、やっぱり2~3倍くらいの時間がかかるってことかしら?それにしても、この甘酢漬け、美味しそう...今度はイシナマコでやってみよう(←こと食べることに関しては、なかなか懲りないヒトなのです)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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